同和地区Wikiを開設しました

同和地区を全て網羅して調査すべく、「同和地区Wiki」を開設しました。言わば21世紀の全同和地区実態調査サイトです。同和地区の実態調査は過去何回か政府により行われてきましたが、これを民間の力でやってしまおうという考えです。

アドレスはこちらです。

http://同和地区.みんな/

Wikiなので誰でも編集できるわけですが、その性質上、匿名で参加したいという人が多いと思うので、編集は匿名ネットワークであるTorからのみ行えるようにしました。編集したい方は以下のアドレスにアクセスしていただくことになりますが、これはTor専用アドレスなので、アクセスするためにはTorが必須となります。こちらを参考にTorを導入してください・

http://inyh65b5u2mpt6d5.onion/wiki/

【解説】同和地区公開裁判の経過と意義

なぜ裁判で同和地区の公開を求めるのかということについて、今までの経過と、その意義について開設して欲しいというリクエストがありました。そこで、今さらですが詳しく解説いたします。

進行中の裁判に関する資料の生データは以下のアドレスからご覧ください。
http://files.tottoriloop.miya.be/data/H22-9-15%E8%A3%81%E5%88%A4/
http://files.tottoriloop.miya.be/data/2012/%E9%B3%A5%E5%8F%96%E5%9C%B0%E8%A3%81-H24-3-8/
http://files.tottoriloop.miya.be/data/2012/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%9C%B0%E8%A3%81-H24-4-6/

裁判の経過

本ブログで最初に裁判をやったのは2007年のことです。これは端的に言えば、解放同盟員が経営する土建屋で組織される部落解放鳥取県企業連合会(企業連)の会員名を鳥取県に公開させようとするものでした。当時、企業連は公共事業の入札で優遇を受けており、会員企業は指名競争入札で優先的に指名されていたため、その実態を解明しようとしたものです。結局、実質的には原告敗訴で目的の情報は公開されませんでした(ただし裁判の過程で、加入企業はおおよそ見当がつくし、企業に直接聞けば加入しているかどうか教えてもらえるようなものだと分かりました。これは「寝た子を起こす」を徹底した鳥取の解放運動と、それに由来する「隠そうとすること自体が差別だ」という考え方が関係しているものと思います)。

そして2009年には、同和地区施設(隣保館・教育集会所)の位置の公開を求めて東近江市を提訴しました(大津地裁)。これは、滋賀県で同和地区の場所を町役場に問い合わせた東近江の市民が解放同盟に糾弾されるという事件があったので、それなら「情報公開請求で同和地区の場所の公開を求めても糾弾できるのか」という問題を検証するために行ったものです。この裁判に関しては私の全面勝訴であり、施設の場所が同和地区かどうかはともかくとして、「隣保館などは公の施設であって、条例によりその位置と名称が公開されている」と判断されたことが勝因でした。

それ以来、「同和地区の場所を正式に公開させる」というのが1つのミッションとなりました。2010年には滋賀県内の同和地区の公開を求めて滋賀県を提訴(大津地裁)、2012年には鳥取市下味野の同和地区の区域の公開と、さらに同和地区で行われていた同和対策固定資産税減免の違法確認求めて鳥取市を提訴(鳥取地裁)、同年に大阪市の同和地区の位置の開示を求めて国を提訴(東京地裁)し、現在に至っています。

同和対策固定資産税減免の違法確認に関してはまだ鳥取地裁に継続中ですが、他の件は高裁に控訴し、さらに最高裁に上告しています。最高裁は通常は審理しないまま半年程度でいわゆる「三行決定」により上告を棄却してしまうのですが、滋賀県を提訴した件については1年以上何の判断もされていないという、やや異例な状態にあります。最高裁もどう判断するべきか迷っているのかも知れません。

同和地区を公開させる意義

現在、問題となっている滋賀県の同和地区、大阪市の同和地区、鳥取市下味野の同和地区については、事実として既にその場所が明らかになっており、裁判に勝ったからといって直接新たな情報が得られるわけではありません。ただし、これらの情報が建前上は秘密であったものが、正式に公開されることに意義があります。

同和地区に関することは、同和タブーのベールに包まれて自治体による公開がされ難いという実態があり、もし今回の件で公開させることに成功すれば、お役所特有の「前例踏襲」「横並び」により、他の地域の情報も次々と公開される可能性があります。すると、過去の同和対策事業の実態が広く公開されることとなり、同和事業の歴史や福祉行政の研究の発展に大いに貢献することになります。どこで、どのような施策が行われ、どのような結果があったのかということは、非常に重要なデータとなります。なかなか一般の方には分かりづらいかと思いますが、「同和」というのは日本の歴史や行政に大きく関わって、その実態が公になることは、歴史や行政の研究者にとっては実に大きなインパクトがあります(分かりやすい例としては、新選組隊士の戸籍が同和問題を理由に非公開とされた事例があり、もし同和問題を突破できるのであれば、新選組隊士の血縁関係が明らかとなり、研究が大いに飛躍することになるでしょう)。

また、同和地区の場所を問い合わせたら糾弾されるということは滋賀県に限ったことではなく、同和地区の場所を知ろうとするとそれが差別だと非難され、企業や行政への言いがかりの「ネタ」として悪用されている実態があります。正式に同和地区が公開されるということは、そのような言いがかりができなくなるということであって、いわゆる「えせ同和行為」の防止のために大きな成果を挙げることができます。

一方で、同和地区の場所が明らかになることで、結婚などの際の身元調査に悪用されるということが度々指摘されますが、少なくとも裁判の対象となっている地区は事実として明らかになっているものばかりです。探偵等が同和地区であるかどうか調べようとすればすぐに分かるものなので、調査出来るかどうかという問題に関していて言えば今さら影響はありません。

むしろ、裁判で白黒付けることは部落問題の解決に意義があります。なぜそうなのか説明するためには、この裁判の法的な意味を説明しなければいけません。

同和地区を公開しない理由説明に伴う問題

私が裁判により同和地区の場所の公開を行政に求められるのは、各自治体の情報公開条例という法律上の根拠があるためです。各自治体の情報公開条例は、行政が保有する情報は原則として公開であって、あえてそれを非公開とするのであれば、その理由を行政が説明しなければならないという枠組みになっています。つまり情報を公開する理由は不要だが、非公開とするには理由が必要…書面に書いて説明しないといけないと条例で決められているということです。もし理由がないのに情報を非公開にする自治体があれば、その自治体は違法行為を行っていることになり、裁判で争うことができるわけです。もちろん、理由というのはいい加減なものではだめで、それが合理的なものだと裁判所を納得させられるものでなければなりません。

同和地区を公開しない理由は、「これを公開しても直接特定の個人を識別することはできないが、同和地区に対する差別意識の解消が十分に進んでいない状況からすれば、公開すると特定個人の権利利益を害するおそれのある情報に該当する」という説明がされることが多いようです。例えば島根県はそのような説明をしています

しかし、この説明は別のところで問題を起こします。

この「権利利益を害するおそれ」というのは判例上は「単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が必要」ということになっています。ご存知のとおり、裁判所は最終的には憲法の番人ということもあって、「左翼的」なところがあります。そこで、国民の権利を最大限に尊重するとそうなるわけです。

これを同和地区の場所の問題に当てはめると、同和地区の場所が分かるということは、そこに住む住人に対して法的保護に値するほどの「権利利益を害するおそれ」を生じさせるということです。

ということは、例えば大阪のように同和地区の場所を自ら行政が明らかにしてきたような地域では、その「同和地区に住むことは法的保護に値するほどに権利利益が侵害されるおそれがある」ということになってしまいます。すると、不動産を購入しようとする人が同和地区を避ける事には合理的な理由があると言えてしまうわけです。

だからと言って、「そのような不利益が生ずるのに、説明なしに同和地区の土地を売りつけられた」と不動産屋を訴える人が出たとしても、裁判所はその人を勝たせるわけにはいかないでしょう。とすると、不動産屋を勝訴させるためには「同和地区に住むことには不利益があるけど、客は不利益を受容しなければならない」という判決を出さざるを得ないわけです。しかし、これでは形式的には不動産屋の勝訴であっても、「不動産屋が客に不利益が生ずる土地を説明なし売った」という事実は変わらないので、法廷の外では不動産屋は信用を失うことになります。また、「同和地区の土地を買って住むと不利益を受ける」と言いふらしても、それは「司法も認めた事実」ということになります。

本来であれば「同和地区に住んでいると分かっても不利益を受けるわけではない」と説明すれば(私は実際それが事実だと思いますが)、不動産屋が同和に絡む顧客とのトラブルで裁判になっても「同和地区に住んでも不利益はないとの最高裁判例がある」と堂々と主張できるわけですが、そうすると、情報公開訴訟の判断と整合性が取れなくなってしまいます。

ひとまず、現在進行中の訴訟では、どの裁判所も「同和地区に対する差別意識の解消が十分に進んでいない状況からすれば、公開すると特定個人の権利利益を害するおそれのある情報に該当する」という見解で一致しているようです。これが確定すると、やはり同和地区に関わることは「権利利益を害する」ということになります。

同和地区の場所情報が実質秘であるのかという問題

そこで、裁判所は別の逃げ道を考えないといけないのですが、それが同和地区の場所は秘密であるということです。同和地区の場所が誰にも知られていないのなら、誰も不利益を受けないということになります。

しかし、本ブログで説明してきたとおり、とてもそうであるとは思えない実態があります。滋賀県においては滋賀県内の同和地区名を列挙した本が出版されていましたし、大阪市に至っては「何丁目」というところまで詳しく説明された本が出版されていました。滋賀県草津市に関しては地図上で同和地区の区域を示した、まさにそのまんまの資料が公開されました。

そもそも、かつては「同和地区の場所を隠す」という概念自体がなく、部落問題や同和事業に関する古い書籍には同和地区名が躊躇なく書かれていることが多く、時代や地域によってはむしろ「寝た子を起こす」という解放運動の理念や「同和事業の対象として予算を得るために認定してもらう」という目的で、同和地区の場所情報を積極的に広めようとしたことがありました。現在でも、当時の資料を図書館や古書店でいくらでも発掘できる実態があります。あまりに多くあることと、別の意味でも歴史的価値のある資料と混ざってしまっているので、それを「焚書」することは不可能と考えられます(顕著な例として江戸時代に書かれた「因幡誌」があり、この本にはどこが穢多村だったということが書かれていますが、これを焚書すると旧因幡国の近代の地誌の多くが失われることになります)。

裁判で問題としている滋賀県、大阪市、鳥取市下味野は、全て文献により同和地区地名が特定可能な地域です。鳥取市下味野に関しては、民間の出版物ではなくて行政が出版した市史や公報に掲載されていますし、滋賀県や大阪市もほとんどそれに近い状況にあります。

また、「公務員の守秘義務」ということが関わってきます。国家公務員法や地方公務員法の守秘義務について、判例上は「秘密とは実質秘である」とされてきました。これは、役人が「これは秘密だ」と言えば秘密になるわけではなく、事実として民間人が知ることはできず、秘密にするほどの価値がある情報でなければならないということです。これも裁判所が「左翼的」であって、国民の権利を最大限に尊重し、国が恣意的な情報隠しをできないように判断しているためです。

情報公開制度もそのことを前提に作られており、実質秘でないものは常に公開され得るということになっています。なので、情報公開法や情報公開条例によって情報を公開した公務員が守秘義務違反に問われることはありません(外国の情報公開法ではそのことを明示している場合もありますが、日本の場合は法律には明示せずに過去の裁判例に頼っているようです)。

どう考えても公になっているとしか思えない同和地区の場所について、裁判所が秘密だと言うのであれば、過去の判例を変えたか、そうでなければ同和については特別扱いをしたと見られるでしょう。

この点に関して、各裁判所は次のように判断しています。

大阪高裁:滋賀県の同和地区施設の場所は実質秘にはあたらない。(しかし同和地区名は秘密であるとしている)
東京高裁:大阪市の同和地区名は秘密、確かに出版物に同和地区名が書かれているがこれは別問題。
広島高裁松江支部:おそらく東京高裁と同じような判断。
鳥取地裁:鳥取市下味野の同和地区の場所は実質秘である。

大阪高裁は唯一私の全面敗訴となっておらず、1%だけ私に理があるといった判断をしているので、それを反映した曖昧な判断になっています。

鳥取地裁だけは明確な判断をしてる理由は、鳥取地裁の場合は情報公開訴訟ではなくて、税の徴収を求めるという別の意味合いでの裁判をしていることが関係していると思います。たまたま、鳥取地裁は明確な判断をしなければならない状況に追い込まれただけであって、東京高裁も広島高裁松江支部も同じ状況になれば鳥取地裁と同じ判断をしたかったのだと思います。しかし、現実には同和地区の場所を公言した公務員が、守秘義務違反に問われて立件されることはないと私は考えています。どう考えても同和地区の場所が公になっているという事実は変わらないので、事件にすればさらに情報拡散に手を貸すことになりますし、刑事事件は私がやっているような民事事件よりももっと厳格な判断が求められるので、有罪にするのは難しいでしょう。

私は、裁判所による同和に対する特別扱いがあると考えています。特定秘密保護法について、国が恣意的な情報隠しをするとの批判がありましたが、同和に関してはそれが堂々と行われているにも関わらず、同和タブーがあるために、あれほど騒いだメディアも話題にすらしません。

これを最高裁がどう扱うかは、同和問題のみならず「秘密とはなにか」という根源的な問題にも関わってくるでしょう。

そして、鳥取地裁では憲法が定める国民の3大義務(教育、納税、勤労)のうちの1つである、納税の義務に関する問題が問われています。

同和対策固定資産税減免の対象地域は公開しなければならないかという問題

国民に納税の義務があることは中学校くらいで習うと思います。これは国民の大変重要な義務なので、通常はとても厳格に扱われます。納税については「租税法律主義」という大原則が憲法で定められています。これは税をどのように納めるか(課税要件)は法律で定めなければいけない、国で言うなら国会で審議して法律として通さなければならず、総理大臣でも勝手に国民に税を課したり税率を変えたりは出来ないということです。

鳥取地裁で問題になっている固定資産税は市町村が住民に課す地方税なので、本来はその要件を地方議会による条例で定めなければならず、市町村長が勝手に手を出せないものです。税を課すだけでなく、逆に税を減らしたり税を課さないということも勝手にやってはいけません。例えば条例で誰にでも課すことになっている税を、市町村長が勝手に減免できるなら、市町村長が課税対象や税額を勝手に決めているのと同じことになってしまうためです。

それでも市町村長が条例に反して勝手に税を減免したのなら、「住民監査請求」さらに「住民訴訟」により税の徴収を求めることができるというルールになっています。鳥取地裁で行ったのはこれです。

しかし、実際に裁判所で争うためには何が違法な税の減免であったのかということと、徴収すべき税の対象と金額を確定する必要があります。鳥取地裁で原告が問題としたのは鳥取市下味野で行われた税の減免なので、鳥取市下味野で行われた同和減免の実態を明らかにしなければなりません。しかし、そうすると必然的に鳥取市下味野の同和地区がどこにあるのか分かってしまうわけです。その情報は鳥取市が持っているのですが、前述のとおり鳥取地裁はそれが秘密であると判断してしまったので、同和減免の違法性が問われない可能性が出てしまっているわけです。

知る人は知っていると思いますが、固定資産税については毎年年度初めになると「土地・家屋価格等縦覧帳簿」というのが公開されまして、例えばどこそこの誰の家の土地にどれだけの固定資産税が課されているかということが誰にでも分かるようになっています。必然的に、その家の資産価値がどれくらいかということも分かります。そこまでして税の公平性が確保されているのに、同和地区に関しては税の減免対象自体が秘密とされました。すると、同和を隠れ蓑にして、市町村長はいくらでも恣意的に固定資産税を減免でき、違法行為をしている証拠を秘密として隠蔽することができるので、やりたい放題ということになってしまいます。

鳥取地裁の判断に関しては、現在高裁に抗告しているところですが、認められなければさらに最高裁に抗告します。最終的に鳥取地裁の判断が否定されれば、同和と言えど違法行為の隠れ蓑にはできないと言えるわけですが、そうでなければ同和を違法行為の隠れ蓑にできると司法が証明することになります。もちろん、前者の判断をすれば、下味野の同和対策固定資産税減免の対象地域(≒同和地区)を公開する必要があります。裁判所は重要な判断を求められているわけです。

租税法律主義が「課税要件の公開」を求めているかということは、過去の判例がないようなので、これは同和問題のみならず、国民の納税の義務全般に関わる重要な判断になるでしょう。私の考えでは、租税法律主義に従えば課税要件は公開しなければいけないと思います。もし、課税要件を秘密にしてよいと裁判所が判断するなら、誰にも分からないように税を課すことができるということになるわけで、誰も知らない→法律違反を発見できない、ということになるので租税法律主義は完全に無意味化してしまいます。特に鳥取地裁の例では、下味野で同和減免が行われたことは誰でも分かることなのに裁判所が知らん振りをすることになるのでさらに悪質です。

日本最古の法律を更新するか?

鳥取地裁では、同和減免が違法である根拠として「明治4年8月28日太政官布告」いわゆる「解放令」を持ちだしています。これは穢多非人等の賤民の廃止を定めた太政官布告なのですが、同時に当時行われていた穢多非人等の土地に対する地租の減免の廃止も定められています。穢多非人等の廃止に伴って地租の減免も廃止されたのだから、同和減免はかつての地租の減免の蒸し返しであって解放令に反すると原告は主張しているわけです。

まだ日本に議会がなかった時代に定められた太政官布告が「法律」として有効であるかどうか問題となった事例として最古のものは「明治5年11月9日太政官布告」いわゆる「改暦ノ布告」のようです。もし、今回の裁判が最高裁まで持ち込まれて、解放令について何らかの判断がされることになれば、改暦ノ布告よりもさらに1年以上前の太政官布告が法律として効力があると認められる可能性があります。これは判例集のみならず、教科書に載せてもよいくらいの重要な判例になるでしょう。


以上の通り、法律が絡むのでやや難しい問題ではありますが、特に弁護士などの司法関係者にはいかに重要な意義のある裁判か分かって頂けると思います。どのような判決が出ても、非常に重要な判例として活用できるので、ぜひ注目して頂ければと思います。

鳥取地裁が下味野地区の同和減免の対象地域の文書提出命令申し立てを却下した件について即時抗告しました

鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判で、鳥取地裁が下味野地区の同和減免の対象地域の文書提出命令申し立てを却下した件につき、即時抗告しました。

提出した即時抗告状はこちらです。

この即時抗告では、租税法律主義は課税額・課税根拠等を明らかにすることを求めていないと鳥取地裁が判断したことについて、もしそうなら納税者が課税額を計算できない状況が生ずるわけで、納税の義務を果たせないではないかと反論しています。

また、下味野の同和地区の範囲が明らかにされているわけではないという点について、下味野の場合は小集落改良事業があったので、登記簿謄本から個別に分かるではないかということも述べています。具体的には、ある土地が「同和」なのかどうか調べたいと思ったら、鳥取地方法務局でその土地の登記簿謄本を取って(これは手数料さえ払えば第三者でも簡単に取得できます)、改良事業が行われた昭和50~52年に何らかの異動がなかったか調べればよいということです。それでも同和地区の範囲が秘密であると言い張るのはさすがに苦しくないかということです。

鳥取地裁が下味野に同和地区があることは知られているけど、下味野の同和減免の対象地域は秘密であると決定

鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判で、通算12回めの口頭弁論が本日行われました。

原告、被告の双方が提出した文書はこちらです。

訂正申立書.pdf
鳥取市-被告第5準備書面-H260326.pdf

上の2つは微妙な書面の訂正と、定石通りの主張なのであまり気にしなくてもよいのですが、今日は裁判所から重要な決定がされました。「決定」というのは「判決」ではありませんが、裁判所が訴訟手続に必要な事柄について判断をすることです。以下が、その決定書です。

鳥取地裁-決定-H260326.pdf

この決定が出されるまでの経緯を説明します。

今回の訴訟は、そもそも下味野地区で同和減免された固定資産税の徴収を求める住民監査請求を出したことから始まりました。住民訴訟はその前に出した住民監査請求に関連する事柄が対象になるので、今回の訴訟は「下味野で行われた同和減免は違法か否か」ということが問題となりました。

当然、原告は違法であると主張し、その根拠として明治初期に公布された、いわゆる「解放令」という法律により、穢多地(被差別部落)に対する地租(今で言う固定資産税)の除蠲(税の免除)があれば引き直す(税をかける)定めがあるということを主張しました。

途中の審理では下味野に限らず同和減免の違法性ということに話が移っていたのですが、原告が下味野に限定して住民監査請求を出していたので、法律上下味野以外の地域の同和減免の違法性は裁判で問うことができませんでした。また、下味野のかつての穢多地である旧赤池集落と、現在の同和減免の対象地域が事実上一致することが分かれば、解放令違反は明らかとなります。

もっとも下味野に限らず同和減免全般が適法なものであれば、そこまで調べる必要はないのですが、鳥取市は同和地区外の物件や田畑まで減免の対象としていたので、さすがにこれを全部適法というのは苦しいのではということになってきました。同和地区外の物件に関して言えば、理由もないのに鳥取市長が勝手に税を減免したということになってしまい、本来は税の減免要件は法律で定めなければいけないと憲法で定められていることからすれば、完全に真っ黒ということになるためです。

ともかく、実際に下味野で減免が行われたことが確認できないと話にならないので、原告は、減免対象地域が分かる文書を裁判の証拠として鳥取市に提出させるように、裁判所に申し立てました。

そして、出された決定がこれなわけです。

裁判所は、原告が減免対象地域が分かる文書が、取り調べる必要のある書証であることは認めました。しかし、裁判所は文書が「公務員の職務上の秘密」であることを理由に原告の申し立てを却下しました。

なぜ「公務員の職務上の秘密」なのかというと、主な理由は「差別」です。アンサイクロペディアの「同和問題」のページには、同和地区が指定された背景についてこう書かれています。

このような被差別身分が作られた背景は、地方自治体が合法的に中央政府から公金を吸い上げるためである。なおかつ、公金を使用する過程に「アンタッチャブル」である被差別集落や被差別身分を存在させることで、後ろ暗い公金の使途を追求しようとするうるさい国民を遠ざける目的があった。具体的には、公金の使途を知ろうとすると必然的に同和地区や同和地区出身者が判ってしまうため「そのようなことを知ろうとするのは差別だ!」と言って説明を回避することができた。

少なくともこの後半の記述については事実であることを、奇しくも鳥取地裁が証明したわけです。同和地区に関連して違法行為があっても、差別をネタに隠蔽することができると。

また、公務員の職務上の秘密というと、過去の判例によれば「形式秘」ではなく「実質秘」でないといけないということになっています。これは、名目上秘密にしたということではなくて、事実としてそれが世間に知られておらず、秘密にすることで守られる利益が存在しなければならないということです。

原告は鳥取市が発行した「とっとり市報」等に下味野が同和地区であるということがもろに書かれているではないかということで、実質秘ではないことを主張したのですが、決定書はそれを認めつつ「特定の地域に同和地区が存在するとの情報が流布しているとしても、地方公共団体である相手方が特定の地域を同和地区として把握していることや、具体的に特定の地域のどの範囲、どの部落を同和地区として把握しているかなどといった情報は明らかにされているとは認められない」としています。市の広報誌に同和対策事業が行われた地域として「下味野」と書いておいて、それはないと思うのですが、ともかく裁判所はそのような判断をしました。鳥取市の職員が「下味野は同和地区だ!」と公言すると、地方公務員法違反で逮捕されるかも知れません。

裁判所の決定については高裁への即時抗告、さらに最高裁に特別抗告ということができるので、これが本当に最高裁まで上げても認められるのか、試してみようと思います。

また、理不尽なことではあるのですが、このままでは「下味野で同和減免が行われた証拠は存在しない」ということになるので、原告敗訴となります。

次回口頭弁論は5月21日13時30分からとなります。

鳥取地裁 次回口頭弁論期日が変更されました

鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判で、通算12回めの口頭弁論が2014年2月5日10時15分に行われる予定でしたが、裁判所の都合により延期されました。また、いつもの法廷ではなくて、丸テーブルのある小さな法廷に移されました。

次回期日は次の通りです。

2014年3月26日10時15分

場所:鳥取地裁22号 ラウンド法廷

同企連の会費を会員企業の株主総会で聞くとどうなるか

「大手企業も名を連ねる同和問題企業連絡会(同企連)の謎」に引き続き、同企連の話題です。

同企連と言えば気になるのはその会費で、私が今のところ知っているのは鳥取市同企連と大阪同企連で、以下の通りとなっています。

鳥取市同企連の年会費
社員数29人まで 5000円
社員数99人まで 10000円
社員数199人まで 20000円
社員数299人まで 30000円
社員数300人以上 50000円

大阪同企連の年会費
社員数100人まで 160000円
社員数500人まで 190000円
社員数1000人まで 210000円
社員数3000人まで 220000円
社員数3001人以上 230000円

これが高いのか安いのか。参考までに東日本大震災の時のポポポ~ンのCM等で有名になったACジャパンの正会員の年会費が一口120000円です。ACジャパンの会費収入が1億8000万円、会員数が1200社と言われていますので、1社あたりの会費の平均は150000円ということで、ほとんどの会社は一口だけの加入と考えられます。

そう考えると、大阪同企連の年会費は若干高いと言えるのかも知れません。

謎が多いのが東京人権企業連で、ここは会費を完全に非公開にしています。どのくらい非公開なのか、それを調べるために「株主総会に出て質問してみればよいのでは」というアイデアが出されたので、去る2013年6月に会員企業のうちの1社である「大林組」の株主総会に行ってみました。

株主総会の前に、以下の質問内容をすることを事前に通告しました。

1. 2011年に子会社となった新星和不動産株式会社が、それと同時期に大阪同和・人権問題企業連絡会に加入していますが、その理由と加入にあたっての社内決裁の経過、昨年度の会の年会費および研修費用などの関連する支出の内訳、人員の延べ動員数、活動内容をご説明ください。

2. 大林組本体は東京人権啓発企業連絡会に加入していますが、そもそもの加入した経緯、昨年度の会の年会費および研修費用などの関連する支出の内訳、人員の延べ動員数、活動内容をご説明ください。

3. 2005年4月22日に御社の戸塚武彦氏が東京人権啓発企業連絡会第26回定期総会で、「現在、各党において議論の行われている人権擁護法案としての人権侵害救済制度の法制化に向けた動きには、特に注目し、企業の立場から制定に向けた取り組みを継続して参ります」と発言したと東京人権啓発企業連絡会のホームページに掲載されておりますが、大林組は今現在でも会社として人権擁護法案あるいは人権救済法案を推進しているのでしょうか。

4. 御社が東京人権啓発企業連絡会に加入していることは、経営上どのようなメリットがあるのか、その費用対効果について貸借対照表あるいは損益計算書のどの部分に反映されるのか説明ください。

そして、大林組からの回答は次のとおりでした(回答に立ったのは同社原田昇三副社長)。

1について:

当社は、かねてより人権を尊重し差別の根絶に取り組むことは企業の社会的責任であると認識し、グループをあげて取り組んでいる。また、大阪同和・人権問題企業連絡会(以下、「大阪同企連」)は、人権尊重の企業づくりに取り組むとともに、企業の立場から人権が確立した社会の実現を目指して活動している団体であると認識している。

したがって、新星和不動産は平成23年6月に当社の子会社となったが、同社においても当社グループの一員として人権問題に真摯に取り組むため、平成24年4月に大阪同企連に入会したものである。

また、大阪同企連の啓発講座や研修会に対し、昨年、新星和不動産から5名参加している。

会費については、具体的な金額は回答を差し控えるが、大阪同企連への入会が人権問題に取り組んでいくために有益であることから、適正な額であると認識している。

2について:

東京人権啓発企業連絡会(以下、「東京人企連」)は会員各社が社内の研修・啓発に取り組み、人権意識を高め、差別のない企業づくりを通じて、人権尊重を企業文化として定着させることを目指し、研鑽することを目的として活動していると認識している。当社はそうした活動が当社における人権啓発活動にも有効であると判断して、昭和57年12月に東京人企連に入会した。

会費については、大阪同企連と同様に適正であると認識しているが、具体的な支出額は回答を差し控える。

3について:

当社は、人権を尊重して差別の根絶に取り組む企業として、人権が養護される住み良い社会が構築されることについては大いに歓迎する。しかし、そのための方法論や法制化される場合の法案の内容については、当社はコメントする立場にないため、回答を差し控える。

4について:

当社は企業の社会的責任、CSRを果たしていくことを経営の根幹に据え、その重要な基盤の一つとして、人権の尊重を位置づけている。活動に伴う費用については、一般管理費として会社の損益の中に含まれているが、その効果は損益計算書や貸借対照表に直接的に数値として表れるものではなく、当社の社会的信用につながり、ひいては業績に貢献していると認識している。

と、このようにほとんど「ゼロ回答」でした。核心部分である会費についてはやはり秘密ということです。そこで、さらに以下の質問をしました。

大阪同企連及び東京人企連の会費の額について、原田副社長が回答を差し控えるとのことであったが、本件は事前に質問状を送付しており、会社法第314条に基づき説明義務があると考える。説明を拒否するということであれば、同法施行規則第1号から第4号のいずれに該当するのか説明して欲しい。

しかし、それに対して白石達社長から次の回答があっただけでした。

本質問は会議の目的事項と直接の関係がないため、説明を差し控えるものである。

この時は、会場が少しどよめきました。

確かにこの種の質問にどこまで会社側に回答義務があるのかというと微妙ですが、大林組では過去の株主総会で政治献金の額(例えば平成18年に自民党の関連団体に1575万円を支出している)を回答しており、その一方で「企業の社会的責任」に関わる支出について答えないというのは、それだけ同和と企業の関係がタブーであると言えるでしょう。

鳥取地裁 原告第5準備書面

鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判、原告第5準備書面、そのた諸々の書面を提出しました。

こちらです。

原告第5準備書面.pdf
甲15-19.pdf
甲20-28.pdf
証拠意見書(3).pdf

原告は当初は同和減免の違法確認を求めたのですが、ここにきて同和減免を取り消すことを求めています。取り消すということは、つまり一度は減免された固定資産税について、納付する義務を負わせるということです。

そこまでする理由は、全方位で「鳥取ループは無視」という方針になり始めている現在の状況では、仮に違法確認がされたとしても、そのことを鳥取市が無視した上、さらに日本海新聞をはじめとするメディアが報じず、違法確認判決の意味がなくなってしまう可能性が高いので、この際、減免対象となった家を回って税を徴収してもらおうということです。そうすれば、嫌でも判決の存在が知れ渡ることになります。

追加で提出した証拠は、広島高裁松江支部に出したのと同じ資料で、「とっとり市報」に下味野地区が同和地区であるということが掲載され、盛大に市内に宣伝されていたことを示すものです。

そして、証拠意見書(3)では鳥取市が「解放令は法律としての効力を有しない」と言ったことに対して反論しています。

明治初期の「太政官布告」が現在でも法律として有効なのかどうかは曖昧なのですが、実は明治6年太政官布告65号「絞罪器械図式」が現在でも法律としての効力を持つと最高裁判所が判断した例があり、判例では太政官布告は法律としての効力を持つこともあるということを説明しています。

特に租税の要件は法律によらなければならないという「租税法律主義」は明治憲法の時代から既にあった概念なので、租税についての事項を含む太政官布告が明治憲法下で有効であったとすれば、それは「法律」であるということです。そして、門地による差別を撤廃するとした解放令は現在の憲法とも矛盾していないですし、解放令を否定したり矛盾するような法律はどこにも存在しないわけです。

また、しばしば誤解されることですが、同和対策事業特別措置法をはじめとする同和対策特別法には租税に関する規定は全くありませんでした。従って、特措法時代から行われてきた同和対策の税の減免には全く法律上の根拠はありません。言ってみれば国税であれば各地の国税局が、地方税であれば地方自治体が勝手にやってきたことです。その違法性を問う人が今までいなかったので続いてきたという、ただそれだけのことです。

鳥取市下味野地区の同和減免関連文書の開示を求めた件の上告理由書

広島高裁松江支部が鳥取市下味野の同和減免関連文書について不開示とした件について上告および上告受理申し立てをした件、上告理由書と上告受理申立理由書を提出しました。

上告理由書.pdf

上告受理申立理由書.pdf

上告は憲法違反など特殊な事例の場合しかできないのですが、今回は憲法の「納税の義務」がもろに絡んでくる話なので、理由書を書くのが楽でした。

これであとは最高裁がどう処理するかを待つだけです。

鳥取地裁第11回口頭弁論

情報公開請求の件を入れると第11回め、鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判の7回めとなる口頭弁論が行われました。

双方の書面はこちらです。

原告第4準備書面.pdf
訴え変更申立書.pdf
鳥取市-乙17~18-H24(行ウ)6.pdf
鳥取市-証拠説明書・証拠意見書(4)-H251111.pdf
鳥取市-被告第4準備書面-H251111.pdf

今回は書面のやりとりに手違いがありまして、上記のうち最後の2つの書類についてファックスで届いていたのを原告が見落として、受領書を提出していなかったために、裁判所の証拠調べが保留になりましたとりあえず証拠については証拠説明書を裁判官が読み上げて証拠調べはすすめることになりました。

まず、原告は同和減免について違法確認だけではなく徴収を求めています。とすると地方自治法242条の2、4号「当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求」を適用することになるのですが、今回の場合は税金なのでこれを適用するのは問題があると裁判官から指摘がありました。なので、おそらく地方自治法242条の2、2号「行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求」を適用して、減免措置を取り消しまたは無効にするということになると思います。いずれにしても、鳥取市が減免した分の税を徴収しなければいけなくなることは変わりありません。

そして、請求の対象を下味野地区に限定し、対象地域を特定する文書の提出命令を申し立てている件、このこと自体については裁判官からこれ以上の追求はなく「高裁に控訴することもありうるので、それなりに考えなければいけない」ということで来年早々に文書提出命令を出すかどうか裁判所が判断することになりました。

被告側は情報公開訴訟に関する広島高裁松江支部の判決を提出しているのですが、これについては高裁も「同和減免の対象地域を特定する文書は当該地区の居住者や出身者が差別にさらされる」ような文書と認めているという趣旨のようです。

もっと重要な点は、被告証拠意見書で「解放令は「法律」としての効力を持たず」と主張されていることです。

来年までにこれに対する意見を原告側から提出することになります。

鳥取市が「解放令は無効」と主張するのは、部落解放運動家にとっては衝撃的かもしれません。これが通ってしまえば、今でも穢多・非人は存在する、部落差別は不法行為ではないということになりかねませんから。おそらく現在でも有効な法律では最古のものと思われる解放令について、裁判所がどのように扱うのか、注目されるところです。

次回口頭弁論は2014年2月5日10時15分です。

大手企業も名を連ねる同和問題企業連絡会(同企連)の謎

「同和問題企業連絡会」(同企連)という組織があります。よく混同されるのが「部落解放企業連合会」(企業連あるいは企連)ですが、前者は「一般企業」により構成されているのに対し、後者は経営者が部落解放同盟に属している、いわゆる「同和系」の企業です。

企業連会員企業は同和対策事業による利益に預かることができたのですが、同企連会員企業はむしろ逆に「同和枠」などの利益を提供する立場にありました。

いずれも現在では「同和」や「部落」という名前を団体名から外しつつあり、必ずしも「同和問題企業連絡会」「部落解放企業連合会」という名前ではありません。

同企連は各地にあるのですが、「東京人権啓発企業連絡会」「大阪同和・人権問題企業連絡会」という大きな団体が東西にあります。驚くべきはその会員企業です。以下に会員企業一覧があります。

東京人権企業連会員企業一覧

大阪同和・人権問題企業連絡会会員企業一覧

大阪ではいきなり宇宙産業や防衛産業で有名な「IHI」の名前が出てきますし、三井や三菱の旧財閥系の大手企業も名を連ねています。

東京も同様でIMAGICA、電通、吉本興業などマスメディアと関わりの深い企業名も出てきます。

さらに、「愛知人権啓発企業連絡会」ではトヨタおよび系列企業が名を連ねています。

愛知人権啓発企業連絡会会員企業一覧

その活動内容は、要は部落解放同盟の政治運動の支援です。かつては「部落解放基本法」制定運動のために各企業が人員を動員していましたし、現在でも「人権擁護法案」あるいは「人権救済機関設置法案」を推進しています。

そのような活動に動員されるのは、会員企業の中でも一部の「担当者」なわけですが、大手企業に務めている方で同和研修・人権研修を経験しているのであれば、あなたの所属企業はかなりの確率で前述の会員リストに入っていると思います。

なぜ同企連が結成されたかというと、それは昭和50年の「部落地名総鑑事件」に遡ります。部落地名総鑑を買った企業は部落解放同盟により糾弾されました。企業の採用担当者だけでなく、当時の労働省の職員も呼び出されて、徹夜で何日も糾弾会が行われることもあったと当時の記録にはあります。そして、落とし所としてこのような会が結成されて、同和事業の推進に企業も協力させられることになったわけです。

同企連会員企業と部落地名総鑑を買った企業を見比べてみると、その多くは重なります。特に多いのが日本生命などの保険会社。かつて保険会社は共同で部落出身かどうかなどの社員の身元調査をしていたためです。

一方で中にはそれとは関係なく、最近になって入った企業もあります。例えば、社員が大阪の八尾市で「同和地区の自動販売機は壊されやすい」と解放同盟西郡支部員の前で発言して糾弾された「コカ・コーラウエスト(株)」、放火事件の処理に伴ってコンプライアンス責任者が会社の金を着服していた「ドン・キホーテ」、ヤクザがらみでいろいろとあった「吉本興業」が代表的なところでしょう。この3社が、いずれも不祥事があった直後に同企連に入っているのは偶然ではないと思います。

なぜ名だたる企業が同企連に入っているのか、長年人権運動に携わってきたとある事情通はこのように語ります。

「解放新聞を見ると、なかなか同企連の会員企業の名前って出てこないでしょ。人権啓発をやっていたからって、大きな企業でそうそう差別事件がなくなるわけがない。解放同盟は同企連の会員企業には手加減するんですよ。だって、同企連の会員企業を糾弾したら、会費を払うメリットがなくなってしまうでしょ」

要は不祥事のもみ消しがあるということなのです。それを裏付けるような話として、とあるトヨタ系企業の関係者の談。

「うちの会社では要注意地域を書いた地図が配られたことがありました。出勤の時など、同和地区は避けるようにということです」

そして、さらなる謎は同企連の会費についてです。そのお話は、また次の機会にすることにしましょう、

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