東京高裁に提出した控訴理由書と大阪市の同和地区

人権侵犯事件の証拠開示を求めて法務省と争っていた裁判で、2月7日に同和地区マップについては不開示とする判決が出されましたが、控訴しました。控訴理由書はこちらです。

控訴理由書-H25-3-25.pdf

私の控訴理由の論点は数多くありまして、主要なものを列挙すると次のとおりです。

  • 同和地区一覧は「真実であるか否かにかかわらず同和地区の住民や出身者に対するいわれなき差別を助長するおそれのある情報ということができる」と東京地裁は言うが、真実でなければ同和地区の住民や出身者は無関係なので、文章としておかしい。
  • 開示を求めている同和地区一覧は大阪市行政が公表している同和地区一覧と一致するので、間違いなく真実。
  • 同和地区一覧は「当該地区の住民又はその出身者の人格権その他の権利利益を著しく害するおそれのある情報」と東京地裁はいうが、法務省や裁判所が「権利利益を著しく害する」と認定するような場所なら、関わりたくないと思って当然ということになる。
  • 図書館で公表するのとインターネットで公表するのは違うというが、インターネット云々は裁判所の外の話で、話が脱線している。
  • 個人情報開示請求権は法律によるものである一方、法務局の人権擁護活動は訓令による役所の内規に過ぎないので、前者の方が優位にある。
  • 行政機関個人情報保護法14条2号イの「法令の規定により又は慣行として」知ることができるというのは、開示請求者が当然に知り得ていれば足りるので、個人に関する情報だからというのは開示しない理由にならない。
  • 同和地区一覧を開示したら「大阪法務局長が結果的に差別行為に加担したとの誤解を国民に与え」ると東京地裁は言うが、誤解まで考慮しないといけないなら事実や法律の判断ではない。誤解されないように説明すれば済む話。
  • 同和地区一覧を開示したら「部落地名総鑑事件と同様の問題が発生しても,任意の提出や自主廃棄等の協力を受けることができな」くなると東京地裁は言うが、既にFC2もGoogleも応じていないし、私も応じるつもりはないし、どんな判決が出ようと関係ない。
  • 法務局が同じ事を出版社にやったら間違いなく検閲で、ネットのブログだからと舐めている。

特に重要なのは、やはり大阪市と部落解放同盟大阪府連合会が1度ならず、何度も、しかも部落地名総鑑事件の後も大阪市内の同和地区名を公表していることでしょう。

私が証拠として提出したのは以下の資料です。

この資料は国立国会図書館にありました。大阪市の行政文書で、地区ごとのデータが分かりやすくまとめられています。当然ですが、同和地区名は「50年のあゆみ」の記述と一致しています。

甲24 大阪市の同和事業昭和44年度.pdf

こちらは大阪市立図書館で借りることができる資料です。もとは昭和43年に1000円で売られていたものですが、部落地名総鑑事件の直後の昭和54年にわざわざ復刻出版されました。発行所は「大阪市同和対策部」となっており、どう考えても大阪市が行政ぐるみで多くの人に読んでもらうために発行したものです。

甲25-1 大阪市同和事業史復刻.pdf

いきなり中表紙に同和地区マップが印刷されており、文中にはしつこいほど同和地区一覧が繰り返し出てきます。

WS000000

大阪市民にとっては、もはや常識のレベルかと思いますが、いわゆる同和校の一覧もありました。他の地域ではあまり見られないのですが、同和地区についてはとにかく何でも一覧にするのが大阪市の方式のようです。

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なぜか、厚生省が指定した全国のモデル同和地区一覧も掲載されていました。実は私は昭和36年に厚生省が発行した「同和行政の手引き」を持っているのですが、それにも同じ一覧があります。

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細かくて見づらいですが、大阪府の同和地区マップもありました。何でも地図に落としこむのも大阪市の方式のようです。

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以下が続編ですが、同じように同和地区のデータを表にまとめたものが何度も出てきます。

甲25-2 大阪市同和事業史続編.pdf

次回に続きます。

同和減免関連の資料の公開についての鳥取地裁判決

鳥取地裁では同和減免の資料の公開と、同和減免した分の固定資産税・都市計画税を徴収しなかったことについて違法確認を求めているのですが、ひとまず、同和減免の資料の公開についての判決が出ました。

結論から言ってしまうと、原告の全面敗訴です。判決文はこちらです。

判決-H24-3-15.pdf

お約束ですが、裁判所の判断によれば、鳥取市下味野の旧赤池集落が同和地区だということが分かると、その住民は権利利益を侵害されるということです。国立国会図書館がネットで公開している古文書から、「部落解放」「鳥取市誌」まで出して説明したのですが、それでもまだ下味野に同和地区が存在されていることは公開されている状態にないというのが裁判所の判断でした。

また、この判決のおそらく最も重要な点は、固定資産税の減免の条件について、その条件が首長が定めた地域であっても、明らかにする必要はないということです。ということは、過疎地減免のようなものも、対象地域を公示しなくてもよいということになるので、ぜひこれは最高裁判例にしてみたいところです。

また、判決は小集落改良事業が行われても、それをもって同和地区が公にされたとは言えないとしています。しかし、少なくとも鳥取市においては、ある地域で小集落改良事業が行われたことを明らかにすることは、同和地区があることを明らかにすると変わらないと鳥取市は事実上認めているので、その辺りとの整合性が気になります。とすると、小集落改良事業についても深く追求してみる必要がありそうです。

鳥取県議会で鳥取県の部落マップのことが話題になる

3月12日、鳥取県議会の本会議で、私が掲載している鳥取県内の同和地区(被差別部落)のことが話題になりました。

こちらのページの下の方で公開されている、長谷川稔議員の質問です。40分ころから、この話題が出てきます。

http://www.pref.tottori.lg.jp/207483.htm

議論されたのは、いかにしてグーグル等に対して働きかけて、この地図を消させるかという事柄だけでした。これは全く意味のない議論です。

まず、技術的に言えば、グーグルに働きかけても消えません。今はたまたまグーグルのサーバー上に全てのデータを置いていますが、グーグル以外のサーバー上にデータを置くことも可能だからです。実際、隣保館.comはその方式で運営しています。そして、あちこちのサーバーにコピーしまくってしまえば、グーグルに削除要請をして仕事しているふりをすることも、“ガス抜き”も出来なくなります。

また、社会的な視点で見てもこれは消せないでしょう。「国民は同和対策で作られた施設のあった場所を公言してはいけない」という法律を作ることは現実的には無理です。大阪府のいわゆる興信所条例でさえ、業者以外の一般国民は対象としていません。同和施設について公言することを例外なく禁止するならば、同和行政も部落解放運動も巻き添えにして、完全に再起不能にするしかありません。

平井知事は部落マップについて「社会病理」と言っていますが、本質的な議論を避けて、全く現実的でなく、何の解決にもならない、削除のための議論を延々と続けざるを得ないことこそが社会病理ではないのかと思います。

たぶん、こんなことを続けても無駄だということは、多くの人が気付いていると思うのですが、言えないんでしょうね。多くの人のメンツに関わりますし、「場の空気」を乱すことにもなりますし。何より、同和が絡むことなので、下手なことを言うのは恐いという意識があると思います。

鳥取地裁第7回口頭弁論

便宜的に第7回としていますが、正式には鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判の3回めの口頭弁論が今日ありました。

こちらが、鳥取市がら提出された書面です。

鳥取市-被告第1準備書面.pdf

重要なのは以下の点でしょう。

・平成23年度の7月20日以降に減免された件数は1623件、総額は2558万7400円。
・対象地域は、要は同和地区
・対象資産は、同和地区住民が所有する土地、家屋、農地等

しかし、まだ分からないことがあります。上記の総額は件数からして鳥取市全体の総額に見えるのですが、原告が求めているのは下味野の同和地区で行われた減免措置の違法確認です。その件数と額が分からないと、住民訴訟の対象の処分が分かりません。

それから、鳥取市の説明だと、いわゆる「属地主義」のように見えますが、市議会では総務調整監が「属地・属人」主義だと明言しています。場所で分かるなら、なぜ同和減免の申請用紙に人権福祉センター(旧隣保館)長の印が必要だったのかこれでは分かりません。これは言ってしまえば、少なくとも最近まで鳥取市の隣保館の職員の採用は同和枠(解放同盟の推薦)であって、館長も同盟員なので、本庁が属人認定を隣保館に委託していたということなのだと思いますが。

今回は質問の機会がなかったため、次回の口頭弁論で質問することになります。

また、裁判官から鳥取市に対して、この減免措置が鳥取市税条例58条第1項に当たる具体的な事情を明らかにするように求めがありました。以下の条文の太字の部分です。

第58条 市長は、次の各号のいずれかに該当する固定資産のうち、市長において必要があると認めるものについては、その所有者に対して課する固定資産税を減免することができる。
(1) 貧困により生活のため公費の扶助を受ける者の所有する固定資産
(2) 公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く。)
(3) 市の全部又は一部にわたる災害又は天候の不順により、著しく価値を減じた固定資産
(4) 前3号に定めるものを除くほか、特別な事情がある者の所有する固定資産

どう回答するべきでしょう。

次回口頭弁論は5月15日13時15分に行われます。その前に4月26日までに鳥取市から書面が提出されます。