鳥取地裁が下味野に同和地区があることは知られているけど、下味野の同和減免の対象地域は秘密であると決定

鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判で、通算12回めの口頭弁論が本日行われました。

原告、被告の双方が提出した文書はこちらです。

訂正申立書.pdf
鳥取市-被告第5準備書面-H260326.pdf

上の2つは微妙な書面の訂正と、定石通りの主張なのであまり気にしなくてもよいのですが、今日は裁判所から重要な決定がされました。「決定」というのは「判決」ではありませんが、裁判所が訴訟手続に必要な事柄について判断をすることです。以下が、その決定書です。

鳥取地裁-決定-H260326.pdf

この決定が出されるまでの経緯を説明します。

今回の訴訟は、そもそも下味野地区で同和減免された固定資産税の徴収を求める住民監査請求を出したことから始まりました。住民訴訟はその前に出した住民監査請求に関連する事柄が対象になるので、今回の訴訟は「下味野で行われた同和減免は違法か否か」ということが問題となりました。

当然、原告は違法であると主張し、その根拠として明治初期に公布された、いわゆる「解放令」という法律により、穢多地(被差別部落)に対する地租(今で言う固定資産税)の除蠲(税の免除)があれば引き直す(税をかける)定めがあるということを主張しました。

途中の審理では下味野に限らず同和減免の違法性ということに話が移っていたのですが、原告が下味野に限定して住民監査請求を出していたので、法律上下味野以外の地域の同和減免の違法性は裁判で問うことができませんでした。また、下味野のかつての穢多地である旧赤池集落と、現在の同和減免の対象地域が事実上一致することが分かれば、解放令違反は明らかとなります。

もっとも下味野に限らず同和減免全般が適法なものであれば、そこまで調べる必要はないのですが、鳥取市は同和地区外の物件や田畑まで減免の対象としていたので、さすがにこれを全部適法というのは苦しいのではということになってきました。同和地区外の物件に関して言えば、理由もないのに鳥取市長が勝手に税を減免したということになってしまい、本来は税の減免要件は法律で定めなければいけないと憲法で定められていることからすれば、完全に真っ黒ということになるためです。

ともかく、実際に下味野で減免が行われたことが確認できないと話にならないので、原告は、減免対象地域が分かる文書を裁判の証拠として鳥取市に提出させるように、裁判所に申し立てました。

そして、出された決定がこれなわけです。

裁判所は、原告が減免対象地域が分かる文書が、取り調べる必要のある書証であることは認めました。しかし、裁判所は文書が「公務員の職務上の秘密」であることを理由に原告の申し立てを却下しました。

なぜ「公務員の職務上の秘密」なのかというと、主な理由は「差別」です。アンサイクロペディアの「同和問題」のページには、同和地区が指定された背景についてこう書かれています。

このような被差別身分が作られた背景は、地方自治体が合法的に中央政府から公金を吸い上げるためである。なおかつ、公金を使用する過程に「アンタッチャブル」である被差別集落や被差別身分を存在させることで、後ろ暗い公金の使途を追求しようとするうるさい国民を遠ざける目的があった。具体的には、公金の使途を知ろうとすると必然的に同和地区や同和地区出身者が判ってしまうため「そのようなことを知ろうとするのは差別だ!」と言って説明を回避することができた。

少なくともこの後半の記述については事実であることを、奇しくも鳥取地裁が証明したわけです。同和地区に関連して違法行為があっても、差別をネタに隠蔽することができると。

また、公務員の職務上の秘密というと、過去の判例によれば「形式秘」ではなく「実質秘」でないといけないということになっています。これは、名目上秘密にしたということではなくて、事実としてそれが世間に知られておらず、秘密にすることで守られる利益が存在しなければならないということです。

原告は鳥取市が発行した「とっとり市報」等に下味野が同和地区であるということがもろに書かれているではないかということで、実質秘ではないことを主張したのですが、決定書はそれを認めつつ「特定の地域に同和地区が存在するとの情報が流布しているとしても、地方公共団体である相手方が特定の地域を同和地区として把握していることや、具体的に特定の地域のどの範囲、どの部落を同和地区として把握しているかなどといった情報は明らかにされているとは認められない」としています。市の広報誌に同和対策事業が行われた地域として「下味野」と書いておいて、それはないと思うのですが、ともかく裁判所はそのような判断をしました。鳥取市の職員が「下味野は同和地区だ!」と公言すると、地方公務員法違反で逮捕されるかも知れません。

裁判所の決定については高裁への即時抗告、さらに最高裁に特別抗告ということができるので、これが本当に最高裁まで上げても認められるのか、試してみようと思います。

また、理不尽なことではあるのですが、このままでは「下味野で同和減免が行われた証拠は存在しない」ということになるので、原告敗訴となります。

次回口頭弁論は5月21日13時30分からとなります。