隣保館と社会資源等の連携状況アンケート調査

一昨年、「隣保館と社会資源等の連携状況アンケート調査」が行われまして、最近その結果報告書が厚生労働省地域福祉課から国立国会図書館に納本されました。以下はその結果の抜粋です。

2010(平成22)年度隣保館と社会資源等の連携状況アンケート調査.pdf

この資料で興味深いのは、全国隣保館連絡協議会(全隣協)の加盟館一覧が掲載されていることです。本サイトからリンクしている隣保館.comが何なのか気になっている方がいらっしゃるかも知れませんが、実はこれは2010年度の全隣協加盟館をもとにしています。

全隣協は隣保館について「同和地区およびその周辺地域の住民を含めた地域社会全体の中で、福祉の向上や人権啓発のための住民交流の拠点となる地域に密着した福祉センター」と位置づけています。そのため、隣保館.comの隣保館の分布は、ほぼ同和地区の分布に対応します。岐阜以西に多く、中山道善光寺街道東海道に添って存在するのは、被差別部落が西日本発祥であり、死牛馬の処理などのために街道沿いに置かれたという歴史を反映したものと考えることができます。

もちろん、全ての被差別部落に隣保館があるわけではなく、また全隣協に加盟していない隣保館も数多くあります。例えば中山道において、長野県中南部から岐阜県東部にかけて全隣協加盟館の分布が途切れているのは、被差別部落がなかったからではなく、この地域の同和行政に対する取り組み方を反映したものと考えられます。

さて、隣保館の実態調査は昨年も行われました。そのために各隣保館に配布された文書がこちらです。

2011実態調査協力願い.pdf

この文書によれば、隣保館周辺の地域住民についての調査を行うとし、地域住民とは「同和対策事業対象地区の指定を受けていた地域の住民をさす」としています。つまり、事実上の同和地区実態調査なわけです。

このことからも「隣保館は同和地区のランドマーク」ということが、概ね事実であることが分かります。

大阪高裁第1回口頭弁論そして結審

滋賀県が保有する同和対策地域総合センター要覧を公開させるための裁判、今回は大阪高等裁判所で第1回目そして最後の口頭弁論がありました。被告・滋賀県から出された答弁書はこちらです。

答弁書-H24-7-13.pdf

例によって原告は控訴状および控訴理由書のとおり陳述、被告は答弁書のとおり陳述。証拠書類などが大津地裁から引き継がれた旨が確認されました。

そして、あっけなく今回で結審することが言い渡され、判決日は9月28日となりました。

いわゆる1回結審と言われるもので、特に今回のように口頭弁論以外何も行われなかった場合は、控訴が棄却(つまり原告敗訴)されてしまう可能性が非常に高いです。

すると、次は最高裁ということになるのですが、最高裁の壁はさらに鉄壁です。

鳥取地裁第3回口頭弁論

鳥取市下味野地区の固定資産税の減免要件の公開を求め鳥取市を提訴した件、7月20日に第3回口頭弁論が行われました。今日は傍聴席が静かで、市の職員が3人来られてました。

いつも通り、提出した書面についての確認がありまして、今後のやりとりついて裁判官から説明がありました。

今回は原告から市に対して、下味野に小集落改良事業の書面を出すように文書提出命令申立書を出しているので、これについて7月27日までに市が意見書を出すことになります。そして、市から釈明を求められるなど、原告から反論する必要がある場合は、次回期日までに原告からさらに書面を提出します。その後、裁判所が実際に市に対して文書の提出を命ずるか判断することになります。

さらに、今回原告が提出している準備書面に対する反論を、市が9月14日までに出します。これに対して原告が再反論するのは、次回期日以降になります。

次回口頭弁論期日は、9月26日(水) 11時 です。

ところで、同日に以下の住民監査請求書を鳥取市監査委員事務局に提出してきました。

鳥取市職員措置請求書-H24-7-20.pdf

これは明治4年太政官布告、いわゆる「解放令」を根拠に、同和減免は無効だと主張して徴収を求めるものです。明治初期の太政官布告も法律として有効だという最高裁判例もありますし、地方自治法により税の徴収を求めるように住民監査請求を出すことは可能なので、この住民監査請求は適法なはずです。

現在、日本国憲法の下で裁判などで有効とされた最古の法律は明治6年太政官布告「絞罪器械図式」だそうで、解放令が法律として有効と判断されたら、2年ほど記録を更新することになります。

しかし、住民監査請求というのは99%棄却されるようです。

大阪市都島区長就任予定の田畑龍生氏の問題論文

毎日新聞が、7月7日に「大阪市:同和地区明記、HP公表 区長公募論文、指摘で削除」と報じています

大阪市の区長公募で都島区長に就任予定の元コンサルタント、田畑龍生(りゅうせい)氏(37)が応募時に提出した論文に、都島区とは別の区の地域が同和地区だとの記述があり、区長内定者の論文を市のホームページ(HP)上に掲載していた同市が外部の指摘を受けて5日に削除していたことが分かった。

で、その削除された論文というのがこちらです。

東淀川区長 公募論文 田畑龍生

現在、大阪市のサイトに掲載されているのはこれを修正した後のものです。

修正前の論文を読んでみたのですが、確かに問題ですね。

  • 東淀川区は日の出、飛鳥、西中島という同和地区と呼ばれる地域が3つ隣接するエリアを有しているが(2ページ目)
  • 実際、未利用地や築年数が30年を超える市営住宅などは、中島(飛鳥)・淡路(日の出)といった同和地区と呼ばれるエリアに集中している(4ページ目)
  • 尚、日の出、飛鳥という同和地区と呼ばれる地域に付随している“暗いイメージ”に関しては前節で述べたエリア開発案により大幅に改善が見込めると考える(5ページ目)

予想以上に同和地区、同和地区と連呼しているあたりに何とも味わいがあります。しかし、問題なのは同和地区でないところを同和地区としている事実の誤りや、地名表記の間違いがあるところです。

なお、作家の塩見鮮一郎氏も神奈川県小田原市で同じような間違いを犯しまして、詳しくは今月号の同和と在日で記事にしております。(追記:塩見氏の場合は地元の解放同盟から「部落ではない」と指摘されたのですが、実は塩見氏の方が正しい余地が残されております)

それにしても、中田宏・前横浜市長、千代松大耕・泉佐野市長だけでなく、飛鳥地区に住んでいた橋下市長も論文に目を通したというのに、気付かなかったというのが驚きです。本当に読んだのでしょうか? あるいはわざとなのかも知れません。

大阪市の同和地区に関しては、部落解放同盟の事業サイドである大阪市人権協会から、以下の詳細な解説が出版されているので、これを読んでしっかりと勉強していただきたいものです。拙著「大阪同和大帝国」もお勧めです。

大阪市内同和地区の概況

50年のあゆみ.pdf

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かつて言葉狩りに加勢した塩見鮮一郎。著書で部落探訪をやったら、解放同盟に「そこは部落ではない」と突っ込まれた。

目次
●リベラルな電波グラビア館
・プロ市民の聖地、宮下公園にアノニマスが集結
●警戒せよ!解同が来りて『ホラ』を吹く金沢市立額中学校“やらせ”糾弾疑惑
・プロローグ「免疫なき自治体を襲う同和の触手」
・狙われた金沢市立額中学校
・関西地方には同和地区がないとでも?
・木曽三川を東に越えれば同和は「童話」になる論理
・責任者不在の糾弾会、誰に聞いたらいいのか?
・逆ギレする北陸事務所担当者と謎の密告ルート
・「生徒の記憶を優先する!」差別ありきの糾弾会
・“生徒がつなげている”作られた差別発言
・指定地区なき同和対策という不思議
・「はい喜んで!」見事なカモられっぷり金沢市
・「94年のワナ」にまんまとハマったモデル市!?
・沈黙する関係者たち
・金沢市の稀に見ぬ爆笑珍回答
●嗚呼、“北陸解同”道険し―富山県同和事情レポート
・富山の解放運動は融和団体が強かった!?
・富山県の賢明な判断
・拍子抜け? まともすぎる県と市の対応
・絶版騒動『近現代日本の買売春』の著者も参加する富山解放連
・脱力感満々、謎の人権コミュニティセンター
●メディアが隠す放送業界の大チョンボタダ見し放題B-CASカードの欠陥で正直者は損をする
・膨大なデータを家庭に届けるデジタル放送
・B-CASカードが必要なワケ
・B-CASカードは何をやっているのか
・B-CASカードはどこまで解析されたのか
・B-CASカードの真の欠陥とは何だったのか
・B-CASカードは受信機と一体?
・“見せしめ逮捕”以外に対策はあるのか
●著書に部落名を書いたら「そこは部落ではない」と解放同盟に指摘された塩見鮮一郎
●同和行政3方面バトル日記①
・舞台は大津地裁から大阪高裁へ
・泥沼へと突き進むか? 容赦無き鳥取バトル
・二兎追うものは一兎をも得ず 大阪市同和地区マップと人権擁護局

鳥取地裁に提出した、同和地区の場所が積極的に公開されていた証拠資料

鳥取市下味野地区の固定資産税の減免要件の公開を求め鳥取市を提訴した件、7月20日10時30分の口頭弁論に向けて書面を提出しました。

原告第1準備書面・証拠説明書.pdf
文書提出命令申立書.pdf

提出した証拠書類はこちらにあります。

原告の主張は、一言で言ってしまえば、「下味野同和地区があるということは誰も隠している様子がない」ということです。鳥取県公文書館で地元の部落史を誰でも見られるようになっています。

文書提出命令申立書を提出したのは、地元に石碑があり、公知となっている下味野の小集落改良事業関係の文書を提出してもらうためです。これは同和対策事業として行われたものなので、事業の内容が分かれば、1つの同和対策事業の区域が判明するということになります。もし、文書が提出されなければ、いずれ提出しない理由を答えなければならなくなるので、少なくとも小集落改良事業は同和対策事業だったということを認めなくてはいけなくなるという仕組みです。

そして、一番の見所は1977年12月の「部落解放」です。この号は鳥取特集のため、鳥取の部落マニアなら必見の号です。もちろん国立国会図書館で公開されています。

当時、美和小学校で行われていた教育の内容が、学校名地名の実名入りで生々しく書かれております。こんな具合でした。

児童 同和地区の人はあまりいい職業についていない。
児童 地区外の人たちはいい銀行とか大きな銀行についている。
児童 同和地区の人は日雇労働の人がいちばん多い
教師 日雇労働が50%に近いな、一番少ないのは?
児童 公務員です。
教師 公務員というのは市役所や県庁、学校の先生たちです。
児童 これでは憲法に違反しています。
教師 こんな差別を受けている所が美和の校区にもあるだろうかな。S君どうだ?
児童 あると思います(少しの間立ったまま)
児童 (次々に「あると思う」「ほとんどあると思う」と挙手)
教師 堂々と言える人(まず四人+一人+二人)
児童 美和では下味野倭文東で昔から差別されてきた村です。
教師 このことをはっきり知っとったひと?
児童 挙手十数名。(内、地区外の児童三名のみ)
教師 Mさん、今言った時の気持どうだった?
児童 ちょっと言いにくいなと。
教師 その言いにくいことをはっきりと言えるように。
児童 何んで部落差別が…

このように、当時は同和地区の場所が隠されるどころか「その言いにくいことをはっきりと言えるように」と同和地区の場所を言うことが推奨されています。正確に言えば、言うことが強制されていました。それが、同和事業が終わった今は正反対に「言わないこと」が強制されているわけです。

学校で何が行われているかは外部からは見えないので、当時を知っているのは当時児童だった世代(現在の30~40代)と、教育関係者くらいでしょう。それでも、こうして記録は残っているわけです。

そもそも「自由に任せよう」という発想がなく、いつの時代も「強制」なのは、自分の考えに合わないことを他人が考えていることが気に入らないから、他人の考えも自分のコントロール下に置きたいという度量の狭さが人権教育者を標榜する人たちにはあるのではないかと思います。