東京高裁第1回口頭弁論

人権侵犯事件の証拠開示を求めて法務省と争っていた裁判で、東京高裁に私と法務省の両方が控訴していましたが、その第1回口頭弁論が5月27日に行われました。

最初は型どおりに双方ともに書面の通りに陳述で、証拠の確認をしました。

双方が提出した書面はこちらこちらにあります。

今回、担当となった加藤新太郎裁判官が興味を持っていたのは、法務省が一審での開示対象文書にも同和地区名が含まれているとした点です。具体的にはこの記事を大阪法務局がコピーした文書です。

一審では非開示対象を地図と地図へのハイパーリンクに限定したのですが、タイトルからして「中津」「舟場」と書いてありますね。この点について、法務省は一審では全て不開示を求めたので、文書の中身の詳細について主張しなかったためと説明しました。

今回の裁判官は多弁な方で、「裁判所は現物を見ることができないので、中身について詳しく説明して下さい。まあ、インカメラ(裁判官が現物を見ること)での審議について法律の定めがないので、こんな法律を作った人がおかしいんですけどね」というようなことをぶっちゃけてました。

また、法務省に対しては「不可分一体論というのは古いのではないのか」と苦言を呈していました。つまり、情報公開法や行政機関個人情報保護法で文書の公開や開示にあたっては、できるかぎり部分開示をするのが実務上の常識になっているので、一部不開示情報があるからと言って全て不開示にするということは今では通らないということです。

私に対しては「宮部さんはジャーナリストなんですか?」と聞かれました。そういう事は裁判資料には書かなかったので、たぶん裁判官が独自に調べたのではないかと思います。それに対しては、「ジャーナリストは中立ではあるけれども、物事を皆さんに知ってもらって考えてもらうということだけはジャーナリストとしての唯一の正義であるし、裸の王様や王様の耳はロバの耳の話のような、公然の秘密を認めることは、実質的な秘密を保護するという法律の仕組みからしておかしい」と答えておきました。

判決は7月31日13時ちょうどに、東京高裁第717法廷で言い渡されます。

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鳥取地裁第8回口頭弁論

情報公開請求の件を入れると8回めなのですが、鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判の4回めとなる口頭弁論が行われました。

今回は、裁判官から鳥取市に対して疑問が呈されています。

というのは、同和減免の要綱には「同和地区内に存在する固定資産税が一般市民との間に容易に取引が行われ難い財産であるという実体に鑑み」とあるのですが、もしそうであるなら、固定資産税の評価額にそのことを反映させればよいのであって、特別に減免する合理的な理由があるのかということです。

また、鳥取市に対しては原告の文書提出命令の申立とその意見書に対するさらなる意見が求められました。

鳥取市側の書面提出期限は6月19日、次回口頭弁論は7月3日13時15分に設定されました。

これは私の所見ですが、「一般市民との間に容易に取引が行われ難い財産」というのは建前です。なぜなら、同和地区に限らず、郊外にある物件というのはもともと取引がされ難いです。一方で西品治や田島のような都市部落は同和地区であっても頻繁に取引がされています。

それでも同和減免が行われたのは、1つは改良事業により従来は固定資産税がかからなかった物件に急にかかるようになったため、緩和措置として行われたものがズルズルと続いてきたというのがあるかと思います。他の理由としては、「右へならえ」ですね。他の地区や県下の他の自治体がやっているから、ウチもということです。

「固定資産税の評価額にそのことを反映させればよい」という点については、本当にそれをやると、毎年4月ごろに公開される土地価格等縦覧帳簿を見れば、どの区域が同和地区なのか分かるようになります。つまり、周辺の同じような条件の物件よりも評価額が割安となる物件が固まっている地域が同和地区というわけです。

ということで、まだまだ続きます。

法務省側も控訴してきました

人権侵犯事件の証拠開示を求めて法務省と争っていた裁判で、現在は東京高裁に控訴していますが、法務省側も控訴しています。控訴状と控訴理由書はこちらです。

法務省控訴状-H25-2-20.pdf
法務省控訴理由書-H45-4-10.pdf

それに対する、私の答弁書はこちらです。

答弁書.pdf

一審東京地裁では大阪市同和地区マップ以外の情報について開示命令が出ており、その部分については法務省側の敗訴となっています。そのため、法務省側は開示請求対象の文書は不可分のものなので、部分開示はできないと、過去の判例を2つ出して主張しているわけです。

それに対して私は、次の主張をしています。

1つ目の判例については、大阪府情報公開条例に関するものである一方、今回の裁判で問題となっている行政機関個人情報保護法とは部分公開の条件が異なっていることがあります。情報公開条例(あるいは情報公開法)の部分公開では、非公開部分を除いたときに「有意の情報が記録されていない」場合は部分公開をしなくてもよいのに対し、行政機関個人情報保護法では非公開部分を除いた情報が有意かどうかを問題にしていません。また、大阪の判例では、府知事の交際費に関する情報が問題となって、表形式で書かれた交際費の支出先の個人名、日付、金額などを合わせた1行の情報が不可分とされたもので、文書1枚がまるごと不可分とされたわけではありません。

2つ目の判例については、学校でのいじめに関する報告書に関するもので、その性質上個人名だけを除外しても誰が誰なのか推測できるし、報告書全体がプライバシーに関わることなので不可分のものとされた事例です。これは逆に一部を除外しても他の部分が他人のプライバシーに関する情報として意味があるものになってしまうからということで、これも今回の件とは違います。そもそも、私が開示請求した文書は私自身が作ったものなので、他人のプライバシーに関する情報など最初から入っていません。

また、ここでも同和地区云々の話があったので、以下のとおり主張しました。

大阪市の同和地区の位置は公然のものであることが誰の目から見ても明らかであるにもかかわらず,大阪市の同和地区の位置情報の開示を拒み「裸でのパレード」を続けることがむしろ法務省の人権擁護機関の信頼を失墜させることである。法務省の人権擁護機関は,行政の継続性の名のもとに,同和問題の本当の実態を直視することなく漫然と前例踏襲を続け,真理よりも場の空気や心情に流され,耳障りの良い言葉だけを並べながら困難な問題から逃げ続けて,同和問題の解決を遅らせてきたことを猛省するべきである。

次回口頭弁論は5月27日14時30分、東京高裁424法廷で行われる予定です。

鳥取地裁に提出した文書提出命令申立書

鳥取市が同和減免された固定資産税を徴収しなかったことの違法確認を求めた裁判で、文書提出命令申立書を提出しました。

これは、裁判所から鳥取市に対して下味野の同和減免の対象区域の地図を提出するように命令して欲しいと、原告から申し立てたものです。この申し立てが必要な理由は、この裁判は12日で4回目の口頭弁論が行われるにも拘らず今だに「下味野で同和減免が行われていた」という重要な事実がぼやかされており、また情報公開請求・個人情報開示請求に対しても鳥取地裁が非公開とする判決を出してしまったからです。

それなら、情報公開請求・個人情報開示請求でもなく、裁判所の文書提出命令ならどうなるかということです。

そもそも住民監査請求でも、住民訴訟でも、原告(鳥取ループ)側は下味野の同和減免の違法確認を求めています。もし、下味野で同和減免があるという事実をぼやかしたまま違法確認をするのであれば、鳥取市内の全ての同和地区に行われた同和減免を違法としなければならず、これはおかしなことになります。裁判所が原告の請求を越えるような判決を出して、しかもその影響による不利益が他の人(ここでは下味野以外の同和地区の属人)にも及ぶ例というのは、たぶん他にないと思います。

そうでなければ、裁判所は原告の請求を棄却せざるを得ないので、結果が分かっている裁判を続ける意味がありません。

以下が、文書提出命令の関係書類です。
文書提出命令申立書.pdf
鳥取市-証拠意見書(1)-H250501.pdf
原告証拠意見書.pdf

また、鳥取市からは以下の書面が提出されています。要は、同和であれば固定資産税を減免する特別な事情になるということです。
鳥取市-被告第2準備書面-H250426.pdf
鳥取市-証拠説明書-H250430.pdf
鳥取市-乙4~5-H24(行ウ)6.pdf
鳥取市-乙6~10-H24(行ウ)6.pdf

他の自治体で固定資産税の減免が認められる場合というのを調べてみていますが、類型としては生活保護受給者の居住する固定資産、火事などの災害にあった固定資産、公園や公民館のような公益のために供出されている固定資産があります。特定の地域だけ減免がされるというのは、過疎地減免くらいで、しかもこれは自治体の条例ではできないと解されているようで、国による特別立法がされています。