大阪府では昭和60年に「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」が制定され、現在も施行中ですが、これが全く意味のない条例だという話です。
この条例で一番重要と思われる部分は、つぎに示す第五条第一項で、これを規制するのが条例の目的です。
第五条 興信所・探偵社業者の組織する団体は、その構成員である興信所・探偵社業者に次に掲げる事項を遵守させるため必要な規約を設定するよう努めなければならない。
一 特定の個人又はその親族の現在又は過去の居住地が、同和地区にあるかないかについて調査し、又は報告しないこと。
二 同和地区の所在地の一覧表等の提供及び特定の場所又は地域が同和地区にあることの教示をしないこと。
なぜ、この条例が「ざる法」であるかというと、まず、この条例は興信所・探偵社業者以外には適用されないからです。例えば、親戚の結婚相手の実家の住所が同和地区内にあるかどうかを無料で調べてあげても違反にはなりません。一方で、探偵が「橋下知事は東淀川区東中島の同和地区に住んでいた」と客に言ったら営業停止になるかも知れません。
同和地区の所在地の一覧表等の提供及び特定の場所又は地域が同和地区にあることの教示をする行為は、社団法人大阪市人権協会(旧大阪市同和事業促進協議会)が行っています。もちろん、この団体は興信所・探偵社業者ではないので、条例は適用されません。次の図を見てください。
これは、大阪市人権協会が平成15年に出版した「50年のあゆみ」という本の一部です。大阪府立図書館の資料番号は1117104867、国立国会図書館の請求記号はE4-H35です。国立国会図書館の複写カウンターで堂々とコピーできました。地区の写真も掲載されていたので、カラーコピーしてもらいました。以下がPDFです。
50年のあゆみ.pdf
数十ページにわたるので、全てコピーしてはいませんが、各地区の紹介と共に、同和地区の区域を示す地番が細かく書いてあったので、1つ1つメモしてきて、グーグルマップに登録してみました。前の地図と一致しますね。
より大きな地図で 大阪市内の同和地区(被差別部落) を表示
要は、誰かの住所が同和地区かどうか知りたければ、興信所に頼まなくても、住所がこの領域内にあるかどうか調べればよいということになります。あるいは、単純に住所だけを探偵に調べてもらった場合は条例には抵触せず、その住所を「50年のあゆみ」と照合して同和地区と解釈するかどうかは依頼主次第ということになります。
大阪の同和問題について何も知らない人に対しては「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」の存在自体が、同和地区を避けるべきという根拠になるかも知れません。条例の目的に「同和地区に居住していること又は居住していたことを理由になされる結婚差別、就職差別等の差別事象」と書いてあるということは、公式には大阪では同和地区(前の地図に示された場所)に住むと結婚差別や就職差別の対象になるということです。もちろん、現実は当の府知事が同和地区に住んでいたと公言しているような状態なので、いまさら重要なこととは思えないのですが。
この資料からは、実は同和地区の存在が必ずしも恒久のものではないということが分析出来ます。次回はこの「50年のあゆみ」について、もう少し検証します。