鳥取県の「県民の声」で面白いやりとりがされているのでご紹介します。2008年5月27日の「学校内での人権意識」についてです。
問1:ホームページの意見欄になぜ「同和地区リスト」と記載されないのですか。
(答) 過去の回答において、「同和地区リスト」の表記を使用しなかった理由についてですが、「同和地区リスト」という表記は、結婚差別や就職差別に利用された「部落地名総鑑」を連想させることから、あえてその表記を行わなかったものです。
問2:県立高等学校における「同和地区リスト」の作成状況について回答してください。
(答) 「部落地名総鑑」の類のものは当然のことながら所有していません。
「同和地区出身生徒の名簿」(以下「リスト」と表記します。)の作成状況についてですが、平成14年3月31日に「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(特別措置法)が失効するまでは、国庫事業を主とする同和対策事業 (地域改善対策事業)が実施されていたので、事業実施の必要からリストが作成されていたと認識しています。
なお、現時点における各県立高校におけるリストの作成状況については把握していません。
収集した個人情報は教育活動にどのように活かしていくかという点が重要であり、管理方法が、リストなのか、個票なのか、特定の教職員の記憶の中にとどめるのかといったことは、その学校の規模やその個人情報の活用方法等によって異なり、それぞれの学校の判断に委ねています。
問3:引き続き各学校への指導を継続したいということですが、どのような指導をされるのですか。具体的に指導内容についてお答えください。
(答) 前回の回答でも触れましたが、「人権に配慮された安心して学べる環境づくり」についても人権教育の一環として位置づけており、各学校では、障害や病気、国籍や同和地区出身であることなど、理由の如何を問わず、いじめや仲間はずし、あるいは差別的な発言や落書き等が起きないよう十分留意するとともに、収集した個人情報も活用しながら、人権課題の当事者となる可能性がある生徒に対して日頃から配慮するよう各学校を指導しています。
また、学校で人権学習に取り組む際においても、当事者の心情を考慮し、当該生徒の心に大きな負担を与えたり、不安を残すことのないよう、学習の進め方を工夫するなどの配慮を行う必要があり、こういった取組や手法等についても、各学校へ指導を行っています。(「日頃の配慮」)
このことについては、平成20年4月に文部科学省から公表された「人権教育の指導方法等の在り方について[第3次とりまとめ]」にも次のとおり明記されています。
「個別の人権課題に関する学習を進めるに当たり、児童生徒やその保護者、親族等の中に、当該人権課題の当事者等となっている者がいることも想定される。教職員の無責任な言動が、児童生徒の間に新たな差別や偏見を生み出すことがあることを認識するとともに、個人情報の取扱いには、十分な配慮を行う必要がある。」
傷ついた心を癒すことや、一度崩れた人間関係を修復することは困難で時間がかかります。不登校や退学に発展する可能性もあり、将来に大きな影響を残すこととならないよう、日頃からの配慮が重要である旨学校への指導を行っています。
問4:「指導を行う上で必要な生徒のみの当該情報」とありますが、なぜ、同和地区に住所があるだけで指導を行う上で必要な生徒」に該当するのですか。同和地区に住んでいるだけで、なぜ指導が必要なのですか。
(答) 前回の回答に誤解が生じているようです。説明不足をお詫びします。
同和地区に住所があるだけでは指導が必要な生徒には該当しません。
保護者の方との面談や家庭訪問の際に、「子どもが差別を受けて傷つくのではないか」と部落差別に対する不安や「差別に負けない人間になってほしい。」など保護者としての希望をお聞きすることがあります。その場合には、当該生徒に対し、生徒面談の機会などを利用し、学校生活全般を通じて不安を抱いていないか確認するとともに、必要に応じて不安を取り除くよう指導を行うこととしています。また、学校で人権学習に取り組む際にも、事後に感想を聞くなど確認した上で、必要に応じて指導を行うこととしています。(「必要な指導」)
一方、保護者の方との面談等の際に、「同和地区出身だけど、子どもを同和地区出身者として扱ってほしくない。」、「同和地区出身だけど子どもに特別な配慮は必要ない。」といったお話を伺うこともあり、そのように不安を抱えておられない場合には、原則としてこのような指導を行うことはありません。なお、生徒の様子から指導が必要と判断した場合には、保護者の方と相談の上で指導を行うこともあります。
問5:この問題は、私だけの問題ではなく、同和地区保護者全体の問題だと考えますので明確な回答を願います。
(答) 質問に対する回答は概ね説明のとおりですが、これらの取組が必要とされるのは、現在においても残念ながら部落差別が存在しているからです。
平成17年に県が行った「同和問題についての県民意識調査」において、半数を超える方が「部落差別は存在する」と回答されています。また、子どもの結婚の際に相手の身元調査を行うことに約35%の方が肯定的な回答をされています。
このような現状の中、県教育委員会としては、同和問題を含むあらゆる人権問題の解決に向けて、学校教育のみならず社会教育の場面でも人権教育を推進していくこととしています。
同和地区出身の方々の中にも色々なご意見があることは承知していますが、現実に部落差別に不安を感じている保護者の方や生徒がいる以上、学校としては前述の「日頃の配慮」と「必要な指導」に取り組む必要があります。そのためには、個人情報保護条例に基づき適切に管理することを前提に、生徒の同和地区出身である旨の個人情報を保有しておく必要がありますのでご理解いただきますようお願いします。
なお、当初の県民の声で、「県立の高等学校内で、同和地区生徒のみを対象とした文書をクラス全員の前で配布された事があり」と記載されていましたが、さぞかし不快な感想を持たれたと思います。その行為は、明らかに前述の人権教育の一環である「人権に配慮された安心して学べる環境づくり」に反する行為です。
よろしければ、「いつ」「どこの高校」で「どのような文書」が「どのような状況」で配布されたのかご連絡いただければ、当該県立高校の個別指導を行いたいと考えています。
【6月16日掲載】
「同和地区出身生徒の名簿」の作成事務については以前、個人情報保護審査会に諮問されているようで、平成18年5月30日の議事録にそれらしい記述がありました。
【人権教育課(以下「人権」と略す。)説明】
同和地区生徒等指導事務について説明。
【質疑】
委員 要するに生徒をきめ細かく指導するために必要であるということか。
人権 そのとおり。
委員 人権問題の解決のためにという制限があるので特に問題はないのではないか。
学校で同和地区の児童生徒が把握されていることは秘密でもなんでもないことでしたが、そもそも「どうして同和地区の児童生徒を判別できるのか」という問題については、また詳報することになるかも知れません。
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