バス会社に送られた差別手紙

2004年3月1日付とっとり市報より。

私たちが生きている現代社会には、部落差別をはじめとするさまざまな差別を生み出す仕組みが存在しています。
 
例えば、企業の採用時における身元調査、結婚時における釣書・聞き合わせ、学歴・能力至上主義による人を評価するシステム、さらに古くからのしきたり、迷信を基にした行為が差別をつくり出す要因となっています。
最近では、インターネットによる書き込みなど電子空間を悪用した悪質な差別事件も相次いでいます。
バス会社に届いた 
一通の差出人不明の手紙

数年前、鳥取市内のあるバス会社に差出人不明の一通の手紙が届きました。手紙に書かれていた内容は、バス停を知らせるアナウンスを流す時に、このバス会社が市民啓発の取り組みとして行っている「差別をなくしましょう」などの人権問題に関わるアナウンスを今すぐやめて欲しいというものでした。
その手紙に差別的な内容があるとして、バス会社から鳥取市と運動団体に報告がありました。
誰が書いたものかわかりませんが、「○○の住民より」と鳥取市内のある地名が書かれていたため、自治会長にも相談し、手紙についての同和問題学習会を開くことになりました。この時点では、手紙の差出人が特定されるとは誰も考えなかったのです。
孫娘の相手からの聞き合わせ
学習会が終わって数日後、「あの手紙を書いたのは私の母です」と母親と一緒に謝罪に来られた男性がありました。母親の話では、孫娘の結婚に際し、相手から聞き合わせが行われ、「部落」出身と間違われたことが手紙を書いた原因であることが明らかになりました。母親がそのような差別手紙を書くようになったいきさつは、次のようなものでした
私の孫娘に結婚話があったが、結局うまくいかなかった。原因を考えていると、近所の人から孫娘の「聞き合わせ」があったとのこと。そればかりか、その人は「何の問題はないが、ただ気にかかることがある。それは、アレ(部落)ではないか」といっていたとのこと。自分の家は「部落」ではないのに、なぜ間違われるのか不思議だった。よく考えてみると、私がバスで鳥取駅から家に帰る時、いつも私の家の近くになると「次は○○です」とバス停のアナウンスが流れ、私が降りようと立ち上がった時に「人の平等は…」というアナウンスが流れる。乗客の目には、「私が部落の人間」と間違われているのではないか。といつも憤慨しながらバスを降りていた。聞き合わせで部落と間違われたのはこのバスのアナウンスが原因ではないか。「何の恨うら
みがあって、若者の背に刻印を押すのですか。今すぐあのアナウンスを止めて欲しい」という思いで手紙を書きました。(要約)
差別のない社会へ
この男性が部落差別をした自分の母親を勇気を持って告白した理由には、一つには、一番身近にいて信頼していた母親が部落差別を行ったことに大きな衝撃を受けたことがあります。二つには、自分の子どもに「聞き合わせ」という身元調査が行われた今の社会システムが許せなかったことが考えられます。差別は決して他人事ではなく、自分自身の問題でもあったことに気付いたのです。
このように私たちの身の周りには、結婚時の釣書の交換や聞き合わせなど差別につながりかねない現実があります。まずは私たち自身が日常で行われている差別を見抜き、誤りを正すようになること。その積み重ねによって差別のない社会へと一歩でも近づけるよう一人一人が努力を続けることが大切なのです。

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椋田昇一氏にインタビュー(2)

さらに、1990年代半ばに行われた、農協に絡む結婚差別問題についての糾弾に話が及びました。農協の建物に一角にある理髪店の職員の弟が被差別部落の人と結婚したとき、親戚が誰も結婚式に参加せず、弟の兄が差別発言をしたのがきっかけです。

私) それで農協が糾弾されたのか?
椋田氏) 農協が差別をしたという糾弾ではない。ただ、農協側が農協の直営ではないので関係ないと言ったのに対し、直営はないにしても農協関係の人が相談に来ているのだから誠意を持って取り組んで欲しいということを提起したのだと思う。
私) そのことがきっかけで農協は教育・啓発に取り組むようになったようだが?
椋田氏) それだけではないと思う。日ノ丸自動車ほど頻繁ではないが農協に対しては何度も糾弾があった。
私) 当の本人(理髪店の職員の兄弟)はどうなったのか?まさか「農協を糾弾してくれ」と解放センターに相談に来るとは思えないが。
椋田氏) 本人がある面加害者でもあるので議論はされているはずだが、よく覚えていない。

農協の件については、「親戚の仲を取り持って欲しい」といった相談はなかったのではないか、ということでしたが、その後どのように解決されたのか、明確な答えを得ることが出来ませんでした。
さらに、人権救済条例について核心の部分を質問しました。

私) 加害者に対する啓発・指導といったことを入れるように求めたのは椋田さんと考えてよいのか?
椋田氏) 単に謝ってで終わりではなく、あるいは逆に謝らなかったから氏名を公表して終わりではなく、差別意識を変革するというのが私の考え方だ。心情面で終わらせたり、権力で規制するのでなく教育や啓発が必要だと思っている。
私) 単刀直入に言えば、これは糾弾を念頭に入れたものか?
椋田氏) それはむしろ違う。人権委員会に上がるという事は、当事者同士の話し合いを模索することが前提となる。それを妨げるような人権委員会になってはならないと思っている。教育や啓発が糾弾に結びつくというのは不可解だ。
しかし、誠意を持って対応しない場合は、被害者が泣き寝入りをしないために人権委員会が出てくる。ただ、人権委員会が行うことと、当事者を糾弾することは別の話だと思う。

さらに、この取材の2日前に人権救済条例の見直し委員会で、教育・啓発について「下品とは言わないが上品なやり方ではない」「殺人犯であっても内心の自由は保障されている」といった発言があった話をしました。さすがに椋田氏も少し不機嫌そうな様子で、「差別をする自由はない」という返答でした。

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椋田昇一氏にインタビュー(1)

椋田氏については、前回の記事の疑問に加え、氏が関わっている「人権尊重の社会作り条例」が制定される過程についても疑問がありました。そこで、今年の8月1日に、鳥取県人権尊重の社会づくり協議会委員の椋田昇一氏にインタビューしてきました。氏は現在は鳥取市人権情報センターの副所長という肩書きです。
以下は、取材メモから要約したものです。

私) 人権尊重の社会作り条例が制定される過程で、椋田さんは部落差別撤廃の条例を作るのか、人権啓発の条例をつくるのか二者択一を県に迫っているが?
椋田氏) 当初は部落差別撤廃条例を作ろうという要求があった。それに対して県は部落問題だけではなく様々な人権を対象にしようとした。そして、その中に部落問題の解決ということが位置づけられていればよいのではということになった。
私) 人権救済条例の際にも同様の交渉はあったのか?
椋田氏) 私はもう解放同盟としては関わっていないので承知していない。
私) 2002年当時(椋田氏が解放同盟の書記次長であったころ)にはすでに動きがあったようだが。
椋田氏) (個人的な印象として)当時は今の人権救済条例のイメージまではできていなかった気がする。ただ、部落解放基本法の制定運動が流れとしてはある。部落解放基本法案には差別撤廃の理念を定めた宣言法的部分、被差別部落の差別実態解消のための事業法的部分、差別意識を変革する教育・啓発法的部分、特に悪質な差別行為を規制し被害者を救済する4つの要素があった。全てをパッケージ化した部落解放基本法の制定は現実的に難しかったので、各要素を実現してゆくという柔軟路線をとった。それが2002年に制定された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」や国の人権擁護法案である。そういう意味では考え方はつながっていると思う。
私) 2000年から2002年にかけて日ノ丸自動車、JR、山陰合同銀行、農協、鳥取工業高校、鳥取西工業高校などが相次いで糾弾されている。その当時、例えば普段椋田さんと仲良くしている方でも「お前はそっちだ!」と言われて壇上(糾弾を受ける側)に上がらされたといった話を聞いたが?それから「鳥取スタイル」というような話も聞いている。
椋田氏) 全然聞いたことがない。私のような立場の人間には、残念ながらそういった声が届かないことがある。私もそういったことを聞いたことがないから、むしろ事実かどうか知りたい。
直接覚えがあるのは日ノ丸自動車。壇上に上がれ、といったような話であれば、今回はあなたは糾弾される側でしょということであれば状況によって言っている可能性はある。鳥取工業高校、鳥取西工業高校については直接は関わっていない。

(次回に続きます…)

下味野上バス停にまつわる出来事 (2)

バス停の名前の決定権は基本的にバス会社にあるはずなので、バス会社に電話してみました。

私: どういった理由で変更されたのでしょうか?
バス会社: 地元の方からの希望で変更しました。
私: 西下味野という名前が差別的だという指摘があったと聞いています。ただ、地元の方も隣保館の館長も名称が変更されたこと自体知らないとおっしゃっていますが。
バス会社: 隣保館というよりは、西下味野という名前がよくないということで、地元のみなさんで話し合って決めたわけです。
私: みなさんといっても、地元の方に聞いてみたところ、知らないというんですよ。1人知っている人はいましたが、そもそも誰が言い出したかわからないし、バス会社の方からそんな話が出てきたそうですよ。
バス会社:え?おかしいなぁ…。被差別の集落のからみでですね、西下味野はそうではないけれども、そこに近い方からおかしいんじゃないかというご意見を頂いたといういきさつです。ただ、隣保館の館長さんもご存知ないというのはちょっと変ですね。
私: 最初のクレーム自体がイタズラの可能性はないですか?
バス会社: バス停の名前はイタズラで変えられるようなものではなくて、地元の方に諮って変えたはずですけどね。

いきさつをさらに詳しく聞いたところ、最終的には公民館の地区の総会でバス会社に一任されたということです。そもそもの発端は「隣保館の方」から話が出てきたということなのですが、それでは隣保館側の言うことと食い違ってきます。再度隣保館に確認したところ「前任の館長にも聞いたけど分からない」という答えが返ってきて、さらには「本当に隣保館は関係ない」と念を押される始末でした。さらにバス会社に確認したところ、どうも隣保館関係者が直接関わっているというよりは、当時の地区の役員から話あったのがそもそもの発端のようです。ちなみに、バス会社に「もしかしてその人は解放同盟?」と単刀直入に聞いてみましたが「組織としては関わってないです」という答えでした。
問題の公民館での総会の参加者によれば、「なんだそりゃ」といった状態で「面倒だからバス会社に一任」といった雰囲気だったということです。総会は「被差別でない側」の地区で持たれたそうですが、部落解放運動に関する雑誌などにも度々記事を書いている「被差別の集落」関係者にもコンタクトを取ってみました。

私: 西下味野バス停の名前が変えられたことはご存知ですか?
地元関係者: いやぁ、あまりバス停なんか見て通らんけぇね。普段バス使ってる人間ならあれなんでしょうけど。
私: なんか西下味野という名前に変わったみたいで。
地元関係者: ええ?だったらうちのバス停はどうなったですか(笑)。
私: それが変わってないみたいでね(笑)。

…と、終始こんな感じで拍子抜けしてしまいました。
他の地元関係者によれば最近は通称名が使われなくなってきており、自治会などの名称も「被差別の集落」と「被差別でない側」で同じ名前になってきているのだとか。しかし、そもそも通称名は比較的最近、地元小学校の影響で使われていたものなので、結局はまた昔に戻るということになります。
鳥取は車社会であり、特に近年ではバスの利用者の中心であった高齢者も免許保有者が多くなっているので、ますますバス離れが進行しています。それゆえ、地元住民が無関心になるのも無理はありません。
この一件、あまり地元で対立を生むようなことはしたくないので、バス会社に「クレームをつけた人が誰なのか、あまり詮索したくはない。ただ、もし本人に会う機会があれば、私に連絡するよう伝えて欲しい」とだけ言い、深追いはやめることにしました。それから、私の元には何も連絡は来ていません…

下味野上停にまつわる出来事 (1)

今年の4月、鳥取に帰郷した際に妙な話を耳にしました。それは、「近くのバス停に行ってみろ、面白いことになっているぞ」ということです。そのいきさつを聞いたところ、そのバス停の名前について、同和地区住民の中に、部落差別に絡んで差別的だとクレームをつけた人がいて、それを受けてバス会社が名前を変えてしまったということです。
すでにご承知の通り、鳥取県には同和地区あるいは被差別部落と呼ばれる地域がありますが、多くの同和地区は単に1つの地名をもって現されるわけではありません。地名が同一でも、その中に同和地区であるところと、そうでないところがあります。そして、地元での通称名として下国安と上国安だとか、倭文東と倭文西のように呼び分けられることがしばしばあります。件のバス停も、そういった通称名がつけられていたものでした。ちなみに、その通称名は近くの学校で登校班の名前として使われていた呼称が定着したことに由来しています。
もちろん、そういう話を聞いてしまった以上、調べないわけにはいきません。やはり、部落問題と言えば、同和行政や啓発を担う隣保館だろうということで、地元の隣保館長に事前に質問内容をメールした上で、電話取材を敢行しました。

館長: 西下味野のバス停の名称変更については、隣保館は一切関与していないというか、全然聞かされてもいなくて、関係もしていなくて、そういう会にも出ていなくて、全く状態は分からないですね。
私: 隣保館の知らないところで行われていたということですか?
館長: そうですそうです。どこでどうというのは世間では聞いていますけれども、隣保館としては全然入ってないんです。
私: 公式には関わっていないということですか?
館長: いえいえ、公式にも私的にも隣保館の職員は関わってないです。全然。想像ですけどね、地域でやられていることだと思います。

館長さんのお話によれば、隣保館はその地域にあると言っても、基本的に市の管轄であり、職員もあちこちの隣保館から異動してくるので、地域の問題と言うのを何から何まで把握できるものではないのだそうです。また、「バス停の名前が変更されたことについては、そもそもバスを使わないものだからそのこと自体知らなかった。それにしても下味野上に変わったというのはおかしいですね。」とおっしゃってました。
続いて、地元住民に知り合いがいたので聞いてみました。

私: 西下味野のバス停が下味野上に変わったようだけど知っているか?
住民: 知らんかった。だいたいバスっちゃあな使わんしなぁ…
私: なんか差別的だとかいちゃもんつけた人がいるらしいけど、心当たりあるか?
住民: ああ、そういうおかしなことを言うのは○○の親父だ。あのもんは夫婦ともども村中から嫌われとってなぁ…

…と、思いかけず近所の人の悪口を聞かされる展開になってしまいました。
(次回に続く)

鳥取市の隣保館職員の同和枠

鳥取市の職員採用には同和枠が存在するということは、半ば公然と囁かれています。もちろん、募集要項のような同和枠が存在することをはっきりと示すような証拠があるわけではありません。にもかかわらず、とある市内在住者は同和枠が存在していることは間違いない事実だと語ります。市の職員には通常の採用試験とは明らかに別枠で、しかも無試験で採用されている者がおり、それが同和枠であるということでした。
「なぜ同和枠が存在すると分かるのか?」という私の質問に対し、次のことが証拠が挙げられました。

  1. 役所では民間企業の入社式に相当する入庁式が行われるが、その際、1次試験でも2次試験でも見かけなかった人物がなぜかいる。
  2. そのような人物に限って、初年度から同和対策課や隣保館に配属され、本庁舎の他の部署で勤務することはない。
  3. 隣保館勤務者に限って、なぜかそういった採用と勤務状況である。

ご存知の通り、隣保館は市町村の同和対策課の管轄課にある同和行政の拠点施設です。鳥取市の場合、隣保館の職員はれっきとした市職員の身分を持つこととなります。市内では「隣保館の職員は被差別部落の人しかなれない」といった噂がまことしやかに囁かれています(もちろん、実際はそういうわけではないのですが)。しかし、正確には単に同和地区住民のための採用枠というよりは前回の民間企業の例でも触れたように、部落解放同盟の要請や推薦による「解放同盟枠」といった性格が強いと言われます。
同和枠の存在について、鳥取市に問い合わせてみました。

私) 隣保館職員について同和地区出身者を優先して採用するであるとか、運動団体からの要請で採用するといったことは現在も行われているのでしょうか?
鳥取市) 全市的にやっているということではないのですけども、合併前の旧鳥取市に関してはそういった経緯で採用したことはあります。
私) 鹿野や河原(支所)のような旧郡部については?
鳥取市) それぞれの地域についてまでは完全には把握してはいない部分もあるのですが、普通に一般職として採用した職員が人事異動で隣保館に行っている地域もあります。また、同じ方が何年もかなりの間お勤めの場合は、ある程度勤務先を指定した上で採用することもあるみたいです。
私) 現在でも制度としてそういったものは残っているのでしょうか?
鳥取市) 制度ということではないのですが、欠員が出た場合に、同じ隣保館に正職員を配置するか検討することになるのですが、その上で職員を1名採用するとした時に一般公募の正職員を当てるのか、あるいは隣保館限定で募集するという事を検討することになります。
私) 普通なら採用試験があり、面接があって採用ということになると思うのですが、それとは別の形態での採用があるということでしょうか。
鳥取市) 我々としても今のこういう時代なので一般採用した職員を普通に配属してやっていければと思っておりますけども、過去に、同和対策の制度があった時代に地区の推薦等を受けて採用したといったことがあるので、一般採用した職員を我々が配置すると言ったときに、要望なりが出てくる可能性はあります。その時、どのような判断をするかといったことだと思います。今、決めていない部分もあります。
私) それは、制度として明文化されているわけではない、ということでしょうか。
鳥取市) ない、ということです。
私) 可能性として、現在でも(同和枠は)あり得るということでしょうか。
鳥取市) 全く0とは言えないですね。定年退職者が出た場合、私どもの方は一般職から採用すると言う考え方で説明しなければならないのですが、相手方の各地区の要望をまとめた上で、最終的にやめるという決定をするのか、以前のようなことを次の採用時にもやるかどうかといったことは判断ができかねるところがあります。
私) これは隣保館職員に限ったことで、他の職種ではないのでしょうか。
鳥取市) 今はもう、ないですね。隣保館で過去そういうことがあって、たまたま退職者が出てない関係でグレーゾーンになっているということです。

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鳥取三洋電機に存在した同和枠

県内でその存在がまことしやかに囁かれる民間企業への同和枠なのですが、なかなか噂の出所についてははっきりしません。しかし、同和枠の存在について、その噂の出所を具体的にご存知の方がいらっしゃいました。
証言によれば、同和枠の存在ははっきりと明文化されているわけではないが、関係者の間でそのことがあまりにも知られすぎているために、企業や役所向けの同和研修などで解放同盟の講師が話すことがある、ということでした。具体的には、講師が鳥取三洋電機の同和枠に触れ「子弟の採用まで要求してしまうのはやり過ぎじゃないか?という声が内部から一部出たこともあったがこれを勝ち取った。」という内容を講師が話していたということです。
私は、この企業に取材を試みました。

私: 同和地区住民のための採用枠であるとか、解放同盟の推薦によって職員を採用するということは実態としてあるのでしょうか?
企業担当者: 基本的にはありません。成績能力を優先にかんがえておりますので、そういったことはございません。
私: 以前そのようなことがあったと市内の方から聞いたのですが。
企業担当者: 以前は…若干あったように私も聞いております。例えば10人採用するとして20人応募があったとして、その10番目に同じ成績の方がおられた場合、優先的に(同和地区の方を)雇用したということは過去にあったように聞いております。
私: いつごろのことでしょうか?
企業担当者: 部落地名総鑑事件の直後といいますか…10年近く前のことになりますね。
私: 現在は、そういったことは、はっきりと止めていらっしゃる?
企業担当者: もう今は分かりませんし、そういうお話もありません。以前は運動団体(部落解放同盟)の方からそういったお話があったようですけども、今は公正採用ということで身元調べとか一切できませんからね。(誰が同和地区出身か)分かりませんから、できないんですね。

ところで、部落地名総鑑事件は1970年代半ばで、この企業が地名総鑑を購入したことが発覚したのもその頃です。ということは、30年ほど前ということになり、10年近く前という話はつじつまが合いません。今から10年前の1996年と言えば、鳥取県人権尊重の社会づくり条例が制定された年です。その少し前の1994~1995年頃に、採用選考で差別があったなどとして中国電力をはじめとする県内企業が相次いで部落解放同盟から糾弾されています。おそらく、この頃のことを指しているものと思われます。
少なくとも、そう遠くない過去、県内の民間企業に「同和枠」が存在したことは間違いありません。とは言え、社員の能力が利益に直結する民間企業においては、さすがに実質無試験でフリーパスというものではなかったようです。
(次回に続く…)

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雇用の「同和枠」は存在するのか

同和枠と言えば、公共事業の入札制度に関してはそれに近い実態(正確には同和団体関連企業を特別に優遇する制度)があることが分かっていますが、今回は県内で囁かれている、「雇用の」同和枠をテーマとして採り上げます。
私は当初、「鳥取市同和対策総合計画」(平成14年3月 鳥取市)の以下の記述に目を付けました。

…鳥取市同和対策雇用促進協議会を中心に引き続き、新規学校卒業者及び中高年齢者の雇用促進、就職差別の解消に向けて事業主および従業員に対する同和教育の推進等の諸施策に取り組んでいきます。
具体的には、新規学校卒業者の雇用が図られるよう、事業主に対して、採用協力を要請するとともに、鳥取市としても就職支度金制度を継続して新規学校卒業者の就労がスムーズに行われるよう努めます。また、中高年者の終了が促進されるよう、職業安定行政機関等との連携により、就労情報や職業訓練情報の入手が容易に行われるための支援機能の構築を検討していかなければなりません。
地区住民の就労にあたっては、当然のように企業の理解や協力が必要であることからも、企業訪問の際に事業主をはじめ人事担当者等に対して、啓発・要請を行っていくとともに、適正な応募書類の仕様や公正な選考体制の確保を要請していかなければなりません。

この「採用協力」というのは同和枠を意味するのでしょうか?鳥取市に電話で問い合わせたところ、この文書に出てくる同雇促(鳥取市同和対策雇用促進協議会)については、同和地区住民について採用協力を要請することはない、ということでした。では「他の団体ではそういったことはあるのか?」と突っ込んだところ、「文書で質問してほしい」ということでした。
早速文書で問い合わせてみたところ、現在も過去においてもそのような実態はなく、同雇促以外の民間団体等でもそういった実態は把握していないという答えが返ってきました。しかし、同和地区住民の雇用の促進は「同和対策審議会答申」でも触れられており、地区住民を積極的に雇用するよう各種通達が国からも出ていたはずなので、現在はともかく過去にもないというのは眉唾物でした。
やはり、過去には鳥取市自体が行っていました。以前の記事で採り上げた、保育園の同和加配保母を地区出身者から採用するという制度です。この制度は1973年から始まったもので、解放同盟の推薦を受ければ、事実上無試験で採用されるというものでした。しかし、この制度は市議会で問題になり、2000年頃には廃止されています。
民間企業においてはどうでしょうか。倉吉市のとある企業を電話取材した際に、同和枠なるものはあるのかついでに聞いてみたところ、地区出身者を特定しないような選考を行っているので、そんなことはできない、ということでした。当然と言えば当然のことで、同和枠を設けるなら地区出身者を特定しなければならず、採用選考にあたって身元調査をしないという大原則と矛盾してしまいます。
やはり、同和枠は単なる噂に過ぎないのではないか…と思いかけていたところ、新たな情報を得ることができました。結論として、県内の民間企業でもそう遠くない過去にありました。また、公務員については現在も続いているものがあるということです。
(次回に続く…)

山田幸夫書記長から電話がありました

同和関連補助金に対して鳥取市がずさん処理していた件で、21日部落解放同盟鳥取県連の山田幸夫書記長(鳥取県議会議員)に連絡を求めたところ、23日の朝、電話がありました。以下はその要旨です。

山田書記長:
○○さん(開示請求者)と私とのやりとりは簡単なやりとりで、解放同盟の補助金の書類を見せていただきたいと来られたわけですが、これは市の内部監査を受けて議会で承認を受けた補助金であるということです。
ただし、内部の領収書や証憑書類について開示という考え方はありません。そのことについては非開示とさせていただきます。ひとつご理解をいただきたいと、それだけのことです。
私:
謝ったという事実はないということですか?
山田書記長:
これを聞かれて、謝ったことになりますか?
私:
勘弁して欲しいとは言っていない?
山田書記長:
言っていない。全然。農協でもなんでも、そういった書類を開示することはないです。
私:
開示請求者からは手を突いて謝ったと聞いていますが?
山田書記長:
それは年上の人に対する仕草で、失礼なったらいけないと思って経緯を評して立てたわけです。

また、今回の件は解放同盟や山田書記長に対する名誉毀損であるので謝罪して欲しいとのことでした。
私としては、開示請求者が県庁のOBで監査を行っていたことを山田書記長が知った上で、手を突いて頭を下げたことから陳謝したものと判断しており、謝罪は拒否しましたが、今後県連に対して連絡を取り合うことを提案しました。

鳥取市同和問題企業連絡会規約

鳥取市同和問題企業連絡会規約・設立趣意書・補助金交付要領をアップロードしました。Adobe Readerでご覧下さい。
鳥取市同和問題企業連絡会規約・設立趣意書・補助金交付要領
規約の第2条によれば、鳥取市同企連の目的は以下の通りです。

本会は、同和問題の早急な解決が国民的課題であり、同時に企業に要請される社会的責任であるとの認識に立って、関係行政機関、運動団体等と強調しつつ、会員相互が連携し、同和問題に対する正しい理解と認識を深め、雇用の安定と促進を図ると共に、企業の立場から同和問題の解決に資する事を目的とする。

そして、第4条では「本会の会員は、前2条の目的に賛同する企業であって、鳥取市内に事業所を有するものとする。」とあります。
問題は、現在鳥取市人権推進課内にある事務局に関しては、9条で規定されています。

第9条 事務局には事務局長及び事務局次長若干名を置き、事務局長と事務局次長は、幹事会の決定に基づき代表幹事が委嘱する。
2 事務局は、事務局長の所属する企業内に置く。

もちろん、このままでは現状は規約違反になってしまうので、以下の附則が付けられています。

2 第9条第2項の規定は、当分の間鳥取市役所内に置くと読み替える。

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