自治労鳥取による条例推進署名は3倍増し

※2006年3月31日 連合からの署名要請について追記しました。

市役所労組署名

解放同盟と連合による、人権条例の早期施行を求める署名集めの一端をうかがわせるものを入手しました。
画像は、鳥取市役所内で配布されたと思われる、鳥取市役所職員労働組合が組合員に対して署名を要請した文書です。
以下に文面を記します。

2006年3月22日
代議員・支部役員
分会役員・組合員
各位
鳥取市役所職員労働組合
執行委員長 有 本 公 博

署名の実施について

別紙署名について、自治労県本部より要請がありました。
つきましては、各職場組合員のご協力をお願いします。

○集約期限   3月29日(水)まで

☆署名数    組合員1人:3名(本人、家族等)

《記入にあたって》

◎ 住所等が同じ場合でも「同上」「〃」などは、署名として無効となりますので、略すことなく記入してください。

☆ 空欄がある場合は、家族等で必ず全て埋めてください。


※ 期限厳守で組合書記局まで提出して下さい。

この件について、要請を出したとされる自治労鳥取県本部に問い合わせたところ、確かに組合員1人あたり3名を目標に署名を要請しているということです。

自治労は連合の傘下であるため、これも連合による署名集めの1つかと思われます。労組の署名集めで、このような3倍増しは珍しくないようです。

鳥取市役所職員労働組合の組合員数は約1300人、自治労鳥取全体では約9千人であるため、署名収集能力は2万7千人程度であることが分かります。

市役所労組署名1
市役所労組署名2

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倉吉で行われた同和教育と立場宣言

同和教育年間指導計画

倉吉市にお住まいの方から、倉吉市教育委員会の「小学校・中学校 同和教育年間指導計画」(1999年3月)を入手しました。この冊子には、教材名を挙げながら指導の内容が事細かに書かれています。その内容は、おおよそ鳥取県の作成した「人権・同和教育の指導のあり方」を具体化したものです(時期的には倉吉市の指導書が古いので、以前の記事で採り上げた県の指導書を受けて作られたわけではありません)。

その中の「学年目標」の部分を抜き出してみます。

小学校
1学年 身のまわりの差別にきづき、みんなでなかよくしようとする。
2学年 身のまわりの差別を解消していきながら、くらしの中の差別に気づくようにする。
3学年 くらしの中の偏見や差別に気づきそれをみんなでなくそうとする。
4学年 暮らしの中の偏見や差別をなくそうとし、さらに部落差別に気づくようにする。
5学年 部落差別に気づき、被差別部落に対する偏見や差別を許さない心情を高め、社会にある不合理や矛盾、差別をみんなで解決していこうとする。
6学年 部落差別の不当さを理解し、基本的人権を尊重するとともに、あらゆる差別をなくするための行動力を身につける。
1学年 人権の大切さを正しくとらえ、部落差別や不合理・偏見などを自らの問題として解消しようとするとともに、差別を許さない仲間づくりをする。
2学年 部落問題やその他の人権にかかわる問題の歴史的背景や解放への歩みを正しく理解し、連帯して社会の矛盾を解消しようとする。
3学年 部落問題やその他の差別問題の本質を正しく理解し、その解放運動から人間としての行き方を学ぶとともに、自らが差別解消に向けて行動する。

やはり、身のまわりの差別に気づかせる指導をしています。言い換えれば、差別が存在することを前提とした指導です。そして、その差別の具体例として部落差別が重要視されているのが分かります。

そして、倉吉市でも「立場宣言」が行われています。その核心となる記述が「部落問題に関する学習」の「6学年 ねらいと学習内容」の部分です。

教材領域 道徳 学活
題材 今こそ自分が 地区進出学習会で学ぶ仲間たち
ねらい 自らの社会的立場の自覚を深めるとともに、部落差別解消に向けて、自分がどのようにかかわっていけばよいのか考える。 地区進出学習会のねらいや学習内容を正しく理解するとともに、部落差別解消のため行動しようとする態度を育てる。
学習内容 ○主人公の小学校時代の差別性をとらえる。
○村にあった部落差別の実態を考えさせるとともに、部落差別解消に向かって立ち上がっていた主人公の心情をとらえる。
○課題解決に向かって行動する主人公のすばらしさに学ぶ。
○地区進出学習会について知っていること、疑問に思っていることを話し合う。
○ビデオ視聴をし、感想を出し合う。
○地区進出学習会がなぜ今もあるのかを考え、差別をなくしていく仲間として自分は何ができるのか考える。
資料 倉吉市同和教育教材1 倉吉市同和教育ビデオ教材

これは、道徳の時間に同和地区の子供たちが「立場宣言」を行い、その後のホームルームで「地区進出学習会」についてビデオを見せて感想を書かせる、といような段取りになると思われます。

なぜこの指導が立場宣言を意味するのかと言えば、地区進出学習会(学習会)は同和地区の子供だけが受けているものであるからです(学習会と言ってもピンと来ない方は、学習塾のようなものを想像してください。元々は、同和地区の子供たちにたいする学力保障として始められたものです)。いわゆる有地区校(校区内に同和地区がある学校のことをこう呼びます)で、立場宣言を行わずに学習会についての指導をすることは考えられません。なぜなら、一部の子供たちが学習会に通っていることは誰でも知っているためです。同和教育の時間に学習会を採り上げれば、その子供たちに共通することは「部落出身である」ということが必ず明らかになります。

この指導書は1999年のものですが、倉吉の一部有地区校における立場宣言は現在でも行われていることが確認されています。最後に、倉吉市教委の現在の(非公式)見解を載せておきます。

各小・中学校で取り組まれている『自らの社会的立場の自覚を深める学習』について

自分のくらしやそれを取り巻く社会の中にある部落差別をはじめ、さまざまな差別の問題やそれを取り巻く社会の仕組みを見据え、「自分の生き方」や「差別を解消するための社会的役割」を自覚していく学習です。

このことを通して、自分と向き合い、社会的に自立し、主体的な生き方を求め、仲間を広げていく力を子ども達に育んでいくことをねらいとしています。

特に同和地区児童生徒におきましては、保護者や各人権文化センター等の関係機関等の理解と協力を得ながら、地区進出学習会や家庭での親子の話し合い等を通して、自分の街や村の調査活動を行ったり、親の被差別体験や先人の生き方に学び、自分と部落差別との関わりを考える取組みを行います。そのなかで、決して差別に屈することなく、勇敢に差別に立ち向かっていった先人や自分の家族に自身や誇りを持つと共に、自らも主体的に部落差別を解消しようとする社会的立場の自覚を深めてまいりました。

一方、地区外児童生徒におきましても、自らと部落差別との関わりを考える中で、一人ひとりが部落差別をなくすることを自分の問題として捉えるようになってきました。また、このような取組みを行う中で、それぞれが持つ心の悩み、葛藤やわだかまりにも目を向けるようになり、再度自分自身を見つめ直すことでそれらを乗り越えることができるようになってきました。このように、真に一人一人の意識に迫る手法を当して、子供達に人間性、社会性を身につけさせる取り組みを行っているところであります。

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結婚に反対するのは年寄りではない?

智頭町の広報誌、「広報ちづ」の2005年9月号に興味深い記述を見つけました。以下は、智頭町の「同和問題に関する町民意識調査」からの引用です。

「家族や親戚が被差別部落の人との結婚を望んだらどうしますか」との設問に対し、20歳~30歳では31%の人が「祝福して応援する」、42%超の人が「本人が決めること」との回答をしており、同和教育30余年の成果として受け止めることができます。
しかし内容をみますと「世間体があり賛成しかねる・反対する」が60歳以上で8%余に対し、20歳~39歳が19%近い数字に驚きました。

実は、智頭町の調査では、同和地区住民との結婚に関して若年層ほど肯定的な回答が多い反面、否定的な回答をするのも若年層が多いということが分かっています。
人権啓発映画や同和教育の教材でありがちなパターンと言えば、若い二人の結婚を年寄りが妨害するということですが、現実は必ずしもそうではないようです。
これは2005年の智頭町の調査でしたが、1999年の溝口町(現伯耆町)のデータを入手できました。こちらでも、智頭町と同様の傾向が見られます。
「あなたのお子さん、又は家族が結婚されるとき、相手の人が同和地区出身であるとわかった場合、どうされますか」という設問に対して、「本人の意見を尊重し、結婚を祝福する」という肯定的な回答が最も多いのは15~19歳で86.5%です。逆に最も少ないのは70歳以上で28.2%です。しかし、「その結婚に反対する」という否定的な回答が最も多いのは30~39歳で19%です。それに対して、70歳以上では14.1%、60~69歳では9.5%となっており、必ずしも「年寄りが差別する」とは言えません。ただし、「特に反対派しないが、困ったことだと思う」という微妙な回答は70歳以上に最も多く、38%です。この回答は30~39歳では15.5%となっています。
県全体ではどうでしょうか?手元に2000年の「同和問題についての県民意識調査」がありますが、これには同様の質問がありません。代わりに「あなたは、現在、同和地区が県全体からみて、どのよおうな状況にあると思いますか(結婚)」という部分のデータを見ると、「同和地区出身であることが不利な条件になっていると思う。」が最も多いのが35~39歳で61.5%です。「もはや不利な条件になっていないと思う」が最も多いのは70~74歳で35.5%です。自分で「結婚に反対する」と言っておきながら「同和地区出身は結婚に不利な条件ではない」と答えることは考えられないので、智頭町や溝口町と同様の傾向があることが示唆されています。

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鳥取県教委と部落解放同盟との「緊密な連携」

1970年代後半は、同和教育が学校だけでなく家庭や地域にも入り込むようになった時期でもありました。
その背景をうかがわせる記述が「同和教育実践事例集」(昭和55年3月)にあります。

(昭和)51年、52年頃は、ロングホームルームにおける同和問題についての討議にはたびたび同和奨学金制度に関する問題の質問(「あなた達部落の生徒より貧しい地区外の生徒もたくさんいるのに、なぜあなた達に限って同和奨学金がもらえるのか」等)が出され、さらに発展して特別措置法による各種補助金、優遇措置から土地改良の負担金に至るまで親からの聞きかじりが飛び出す有様で、同和奨学生は勿論、指導者の担任教師自身が即答に困るという状況もあり、同和研の会員を中心として同和奨学生の融資がこれらの疑問に正面から取組み、校内討論会を開いて問題解決に当たり、同和奨学生全体が本気になって取り組んできた。このころから俗に言う逆差別論が台頭し、家庭からの影響が生徒に強く現れ、学校としても保護者の同和教育に対する協力を得ることを真剣に考えなければならなかった。
52年後半になると地区外生徒の理解も進み、奨学金制度についての疑問はルーム討議の中から姿を消していったが、今度は同和奨学生自身の無気力、無責任が目立ち始め、地区生徒が現状に甘える姿勢が問題となるようになった。

当時、「逆差別論」が出るのはそれなりの理由がありました。
同資料によるデータでは、昭和50年には経済的理由で学校を長期欠席する児童・生徒は地区内外ともほとんどいなくなっていました。また、中学校卒業者の高校への進学率は、昭和50年で地区内91.1%、94.0%と格差はほとんどなくなっています。これは、奨学金の効果がそれなりに出ているものと思われます。しかし、高校卒業者の大学への進学率は昭和49年で地区内15.7%、地区外35.9%、昭和54年で地区内16.4%、地区外38.8%と、格差が横ばい状態であり、奨学金が意味をなしているのか疑問を持たざるをえない状況でした。(註:大学進学率の格差が変わらない理由は諸説ありますが、私は地区内の産業構造が建設・製造業に偏っていることと、就職上の優遇措置のために大学進学の必要性が低いことが原因ではないかと思います。)
また、同和地区に対する優遇措置としては、当時以下の貸付制度がありました。
住宅新築資金貸付

  1. 年利2%
  2. 償還期間25年以内
  3. 貸付金額30万円以上500万円以下

宅地取得資金貸付

  1. 年利2%
  2. 償還期間25年以内
  3. 貸付金額30万円以上300万円以下

住宅改修資金貸付

  1. 年利2%
  2. 償還期間15年以内
  3. 貸付金額4万円以上250万円以下

また、2万円の就職支度金といった個人給付もありました(これは一部自治体では現在も継続されています)。こういった制度に対する批判も「家庭に対する同和教育」によって鳴りを潜めて行きました。
この時期、運動団体とは距離を置いていた県教委に対して、部落解放同盟の主張が公然と入り込むようになります。この「同和教育実践事例集」の編集委員には部落解放同盟鳥取県連書記長、前田俊政氏の名前があります。同じく1982年の指導書には当時の県連書記長の森下冷蔵氏の名前があります。
こういった解放同盟との関係は現在も続いているのでしょうか?5年前に鳥取県教委が作成した「同和教育事業概要」(平成12年度)に決定的な記述がありました。

同和教育事業概要
同和問題の根本的解決を図るため、同和地区住民の自発的意思に基づいて運動を進めている部落解放同盟と緊密な連携を保ちながら、同和教育の推進に努める。

この点について鳥取県教育委員会に問い合わせたところ、今現在の方針として、「鳥取県人権教育基本方針」(平成16年11月)の一文を紹介されました。

関係諸機関・諸団体等との緊密な連携に努めます。また、教育の主体性を維持し、教育活動と政治運動・社会運動との関係を明確に区別し、教育の中立性を確保しながら人権教育の取組を充実していきます。

一応「教育の中立性」を掲げているわけですが、この「鳥取県人権教育基本方針」自体が編集委員に部落解放同盟鳥取県連合会副委員長の中野俊夫氏が加わっており、在日本大韓民国民団鳥取県地方本部団長、在日本朝鮮人総聯合会鳥取県本部委員長も名前を連ねるなど、自己矛盾を含んでいます。

JRに対する「鳥取スタイル」の糾弾会

鳥取の名無し氏演説より引用
その事件はJR鳥取駅で起きました。ある方が…今は退職しておられますけど、JRにお勤めだったわけです。企業の方はよくご存知と思いますけど、鳥取には同企連なる鳥取市内の企業に人権教育をやったりとか、研修をさせたりという名目の組織があるわけです。ネトラジ(インターネット・ラジオ)をお聞きの皆さんでしたら、鳥取ループさんという有名なブログがあるんですけど、そちらの方でも多々採り上げていらっしゃいます。
鳥取の名だたる企業は、ほとんどこの同企連という組織に属しておられて、そこで出された研修資料を元に人権教育をやったりとか、それから啓発に関する費用…みかじめと言っては言い過ぎかもしれませんが、そういうお金を払って彼らの活動に資しているというわけなんです。
で、その同企連を担当する部署にいたそうなんです。で、ある時期…情報源の方が決して個人と分かるようなことを出さないでくれということだったので、時期は申しませんけど、鳥取駅構内で差別落書きとうものがあったそうなんです。その、被差別部落の方に対しての悪意のある落書き…これは当然やっちゃいけませんよ。もちろんやっちゃいけないんですけど、当然、その筋の団体の方が乗り込んでくるわけなんです。
で、その現場…場所は申しませんけど鳥取駅構内のある場所でですね、そこにロープみたいなのを張って、丸一日情報公開とまでは言いませんけど調査をされるわけなんです。その後ですね、なぜこういうことが起こったか、事実を確認させろと…ネトラジをお聞きの方はよく分かると思いますが糾弾会ですね。法務省は、これを違法行為と断罪した、糾弾会を開催したわけなんです。そこにいたその方は…もちろんその方が書いたわけではないですよ、たまたま同企連の担当の部署にいた人です、担当者として呼び出しを食らったわけです。
すごかったらしいですね、十数名の人に囲まれてですね、一斉に罵声を浴びせられるそうなんです。暴力は使っていませんよ、殴られたりとかはしていませんよ。ただね、人間の悪意を、十数名のあらゆる方向からぶつけられることがどれだけ恐ろしいことか。その方は、糾弾会が終わるころには嘔吐してしまったそうです。吐いたんだそうです。あまりの毒々しさと凄まじさに、悪意の応酬に、吐いてしまったんだそうです。
これ、1回だけではなく、実は何度かあったそうです。その人が嘔吐するまで、彼らの罵声は止まらなかったそうです。その方いわく、過去にJRのいろんなところでそのような事件が起きて、やはり、同じように糾弾会が行われて、そこにいた担当者さんは、悪意で精神がやられて吐くまで、糾弾を続けられたそうです。その嘔吐するまでの糾弾を鳥取スタイルと密かに呼んでいたそうです。
私も鳥取のその筋の団体さんはよその地域にくらべて比較的温和だと聞いておりましたけど、確かに暴力は使いませんでしたけど、言葉と悪意の暴力を、延々ぶつけて、相手の側が..(聞き取れなかった)..たくまで続けると、そういう恐ろしいことをされているそうです。

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あるバス会社の社内報の内容

同和問題学習資料「企業・職場における同和問題の取り組み」鳥取県部落解放研究所(平成5年1月18日)より引用
先日、米子営業所に大へん嬉しい手紙が届きました。
前略、7月9日、午後6時10分ごろ、日の出町から高島屋前まで貴社のバスを利用させていただいた者ですが、実は乗車してから小銭の持ち合わせがないことに気づきました。(財布の中に5,000円札しかなく)運転手の方に両替をお願いしたところ「5,000円札は両替できません。この次に○○バスに乗られた時に今日の料金と一緒に払っていただけたらけっこうです」と言われました。大へん迷惑をおかけして申しわけありませんでした。
しかし、普段○○バスを利用することはほとんどなく、次はいつ乗車するかわかりませんのでこのようなかたちで運賃をお返しさせていただきますことをお許しください。
たしか、バスのナンバープレートが<12-61>で運転手さんは長谷川さん(仮名)と言われる方でした。
どうもありがとうございました。
とあって郵便書留(642円)で、130円が入っていました。
私はこれが水平社宣言に言う「人間を尊敬すること」だと思いました。人の心を傷つけないように気を配り、乗客を信頼する運転手。その細かい配慮を感謝し、信頼にこたえようとするお客さん。この心と心の響きあいが、本当の意味の人間尊重・人権尊重だと思いました。
このお客の行為に感激した米子営業所長は、感謝の印に1,000円相当のテレホンカードを持って行かれたとのことです。
わずか130円が、双方合わせて1,642円の出費になりましたが、人の心の美しさは、お金の多寡でないことを教えてくれました。
米子での最高の土産でした。

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企業研修は差別を拡大・再生産する恐れがある

鳥取市解放大学(リーダー養成講座)というものがあります。この講座は、市役所の管理職や、鳥取の主要な企業の人権啓発担当者が参加する一種の人権・同和研修です。
ではなぜ、「リーダー養成講座」なのでしょうか?「リーダーの養成」については、鳥取県の資料に記述があります。鳥取県商工労働部による「企業における同和問題・人権問題の取り組み方」(平成10年7月)という冊子です。
「企業における取り組みのあり方」という章に以下の記述があります。

(3)研修推進の課題
同和問題の研修を推進するためには、次の条件を整備することが必要です。
第1は、研修リーダの養成と、その資質の向上です。研修には画一的なマニュアルはなく、同じ企業の中でも職場によって研修の内容は異なります。指導者は、職場の実情に合わせて、自分の言葉でわかりやすく語りかけ、みんなと十分に話し合うことが大切です。画一的な、硬直した研修会は、結果として差別を拡大・再生産する恐れすらありますので、すぐれたリーダーが必要です。研修リーダーの養成と資質の向上に努めてください。
特に研修リーダーとなる人については、「差別の存在」に気づき、またそれを見抜く力を備えていることが問題解決にとって必要不可欠ですので、具体的な事例をひいて自らの差別性を絶えず点検することも大切なことです。

この資料は8年前のものですが、現在のリーダー養成講座も、内容は大差ないものと思われます。
「画一的な、硬直した研修会は、結果として差別を拡大・再生産する恐れすらあります」と認めていますが、実際の企業研修は「画一的な、硬直した」ものではないのでしょうか?
結論から言えば、「画一的な、硬直し」ていない研修が民主的で、自由な研修であるならば、それは不可能であると思われます。それは、この冊子に導くべき答えが指定されているためです。企業研修は、必然的に用意された結論に到達しすることになります。以下に、この冊子から抜き出した模範解答を列挙してみます。

  • 不当な差別に憤りを覚え、その解決に努力する意欲に燃えることが大切です。
  • 部落差別は今も厳しく生きていますので、同和地区の人たちの生活の実態とともに差別をしてきた側の実態を正しくとらえ具体的に学ぶことが必要です。
  • 「同和問題とのかかわりがない」という逃避的な考えは、結果として部落差別を温存するものであり、自分は何をすべきかの自覚が大切です。
  • 同和問題は、同和地区の人たちの生命と生活にかかわる深刻で厳しい問題であり、安易な気持ちで語ってはいけません。
  • 自由な話し合いとはいえ、差別する自由はありません。部落差別の現実を抜きにして問題を考え、話し合うのは間違っています。
    こういった結論を真っ向から否定する主張をすることは、実際のところ無理でしょう。例えば、社員研修の感想文で本音をありのままに書いたところ、「差別感想文」として問題にされるといったことが実際に起こっています。

  • 男女共同参画にも広がる入札優遇制度

    先日採り上げた鳥取県の公共工事に関する特定団体の優遇制度ですが、鳥取県建設工事入札参加資格者格付要綱にはもう1つ興味深い記述があります。
    以下は、その第4条第3項第5号からの引用です。

    (5) ISO認証取得等による加点
    …(省略)…
    ウ 格付日の属する年度の前年度末において、鳥取県男女共同参画推進企業として認定を受けている者について、5点(平成19年度以降の格付から適用)

    同和研修だけではなく、こういった制度は男女共同参画まで広げられています。では、鳥取県男女共同参画推進企業とは何なのでしょうか?その答えは鳥取県のホームページにあります。
    鳥取県では「鳥取県男女共同参画推進企業認定要綱」が制定されており、そこに定められている認定委員会により認定されたものが鳥取県男女共同参画推進企業ということになります。
    実際にやまこう建設株式会社、株式会社山陰放送、鳥取三洋電機株式会社といった企業が認定を受けています。やまこうと言えば先の入札制度の格付けでもトップにある企業で、鳥取市同和問題企業連絡会にも加入し、社内で熱心に同和教育を行っています。「人権・同和研修に熱心な」企業は、こういった特典もあるということです。
    しかし、同和対策事業関連の特措法の期限切れにより、同和問題によって恩恵を受けられなくなってきた同和団体が、男女共同参画などの別の人権問題に手を伸ばし始めているのでは、といった県内関係筋の声も聞かれます。
    それをうかがわせるものとしては、例えば鳥取市の「男女共同参画プラン策定委員会」議事録を見ると「男女共同参画を同和教育の中で外部講師を招いて行っているということもある。」など、同和教育との関連が高いという実情が述べられています。また、『鳥取市男女共同参画かがやきプラン(案)』には「平成15年(2003年)4月、男女共同参画課を企画部から総務部人権政策監に組織改変し、男女共同参画は人権問題であり、人権施策として総合的に推進することを明確にしました。」と書かれています。
    なお、鳥取市でも男女共同参画に関する入札での優遇制度が検討されているようですが、関係部署との調整が進んでいないのが実情のようです。

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    鳥取商工会議所の同和対策課は幸町?

    鳥取市で一番目立つ建物と言えば、何といっても三洋製紙工場の煙突です。鳥取駅前のライブカメラからも、もくもくと蒸気を上げる姿を見ることがでます。
    その裏手に、いつもでかでかとスローガンが掲げてある建物があります。それが幸町(さいわいちょう)の解放センター(中央隣保館)で、ここは鳥取市はおろか、鳥取県の人権・同和行政の県庁と表現しても過言ではない場所です。ここは鳥取市の施設なのですが、部落解放同盟鳥取県連合会や部落解放同盟鳥取市協議会が入っています。鳥取市人権情報センターもここにありますね。
    ここに入っている部落解放鳥取県企業連合会も解放同盟とは切っても切れない関係にあるわけで、例えば企業連の肩書きで講演する一方で、解放同盟鳥取市協議会の役職を持っている人物がいたりします。
    さて、企業連について調べている過程で、奇妙なことが分かってきました。それは、企業連と鳥取商工会議所同和対策課の電話番号が同じである、ということです。鳥取商工会議所のホームページにその電話番号が掲載されていました。
    実は、鳥取商工会議所同和対策課は、 部落解放同盟鳥取県連合会と共に鳥取市同和地区中小企業特別融資資金の申し込み窓口になっています。しかし、鳥取商工会議所同和対策課と企業連の電話番号が同じということは、どちらも幸町の解放センターにあるということになります。
    鳥取商工会議所に電話して聞いてみると、そのことはあっさりと認めました。理由を聞くと、「今、決算の時期でね、そちらに出向している。よく分からんけどね、電話を共有で使っとるんでないかな?」ということでした。
    ところでこの融資制度ですが、鳥取市同和対策総合計画によれば、融資実績は減少傾向です。利子を軽減するための補助金制度もあるのですが、ここ数年の給付実績はゼロの状態が続いています。

    鳥取市の入札制度と部落解放鳥取県企業連合会

    前回に引き続き、入札制度に関する問題について採り上げます。
    実は、同様の入札制度について、最初に私が目をつけたのは鳥取市の方でした。鳥取市にも鳥取県と同様の制度があり、こちらは平成17年2月1日に施行されています。
    「鳥取市建設工事入札参加資格者格付要綱」の第4条3項3号を以下に引用します。

    (3)次に掲げる研修受講による加点(30点を限度とする。)
    格付日の属する年度の前年度及び前々年度に行われた下記の研修について、次式のとおり算定を行う。
    研修受講点数=(前年度点数+前々年度点数)÷2
    …(省略)…
    ウ 企業内人権・同和問題研修(研修時間が1時間以上のものに限る。)を実施した者
    当該研修の内容に応じ次の表の左欄の点数と右欄の点数を合計した点数
    研修の講師   役職員の参加率
    外部講師 5点 80%以上 2点
    内部講師 3点 50%以上80%未満 1点
            50%未満 0点
    エ 市長が指定する研修を役職員に受講させた者 別に定めるところにより算定した点数(13点を限度とする。)

    部落解放鳥取県企業連合会の名前は、「市長が別に定めるもの」という文書に出てきます。その中の「4 第4条第3項第3号エ関係(指定研修の加点)」という部分です。平成16年度指定研修の主催者名として「部落開放(ママ)鳥取県企業連合会」と書かれており、加点については「常勤役員(監事は含まない)が受講した場合3点」となっています。
    会員企業に余計に加点している鳥取県に比べると、優遇の度合いは低いです。しかし、この研修は企業連の会員しか受けられないため、非会員の企業が不利になるのは確かです。
    この件について、鳥取市都市政策課に問い合わせてみました。
    私) 格付要綱の「市長が別に定めるもの」にある部落解放鳥取県企業連合会について、所在地を教えていただけますか?
    都市政策課) 鳥取市幸町151番地です。
    私) 解放センター内ですよね。
    都市政策課) はい。
    私) この団体は、鳥取商工会議所の同和対策課の窓口も兼ねてないですか?
    都市政策課) 解放センターは同和対策課の所管なので、そちらの方が詳しいと思います。
    …ということなので、同和対策課に問い合わせてみました。
    私) 部落解放鳥取県企業連合会とは、どういった団体でしょうか?
    同和対策課) 市とは別個の団体でして、こちらではちょっと…
    私) 直接この団体に電話したのですけど、市の方に聞いて欲しいと言われたんですよ。この団体について、鳥取商工会議所の同和対策課の窓口にもなっていると思うのですが、どうでしょうか?
    同和対策課) 少しお待ちください… 問い合わせをメールでしていただければありがたいです。
    私) えーと、どうしましょうか…こちらから…
    同和対策課) 企業連さんは、同和対策課が所管というわけではないです。
    私) 所管ではないんですか?
    同和対策課) 鳥取市とは別個の団体です。補助金を出しているというわけではないです。
    私) ただ、入札の制度に関することであれば得体の知れない団体というわけはないので、把握していると思ったのですが。
    同和対策課) 問い合わせ事項を書類で出していただけるとありがたいですが。
    私) 以前、お送りしてちゃんと答えていただけなかったことがあるので、できればこの場で答えていただきたいのですが。市としてはどういった団体か把握していらっしゃらないのでしょうか。
    同和対策課) 答えるべき立場でないというかね。
    私) お答えしてはいただけない。
    同和対策課) 把握していないという立場になると思いますけどね、別個の団体ですので。その団体の方に問い合わせしていただいた方がよろしいと思います。
    さて、市が把握していない団体が入札制度に関わっているのはどういうことでしょうか?
    同和対策課の名誉のために注意しておきますと、文書で質問してちゃんと答えなかったというのは鳥取市の別の部署のことです。
    ところで、企業連の所在地と鳥取商工会議所の同和対策課の窓口について私が質問しているのが気になったと思います。実は、企業連については、鳥取市の企業支援制度に関しても、奇妙な事実があります。それについては、次回お話します。

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