大阪法務局が人権侵犯事件記録のうち大阪市の同和地区一覧を不開示にした件と、大津地方法務局が人権侵犯記録の利用停止に応じなかった件で審査請求していたのですが、情報公開・個人情報保護審査会の答申が出ました。
平成23年度(行個)102.pdf
平成23年度(行個)103.pdf
内閣府のサイトでも同じ文書が公開されています。
利用停止については認められませんでした。しかし、大阪市の同和地区一覧の開示については認められました。注目すべきはその理由です。
諮問庁は,特定ブログの写しの内容は,法14条2号にも該当すると説明するが,特定ブログの写しには特定地区に係る情報等が具体的に掲げられているものの,それ自体から特定個人の氏名等特定の個人を識別できる情報は記載されておらず,また,特定地区に係る情報等については,特定図書館において誰でも閲覧できることとされていることからすると,当該部分を公にしても個人の権利利益を害するおそれがあるとまでは認められず,同号に該当しないと認められる。
「特定ブログ」というのは鳥取ループのことで、「特定地区」というのは大阪市内の同和地区のことです。「特定図書館において誰でも閲覧できる」というのは、大阪市人権協会が同和地区一覧を載せた「50年のあゆみ」が国立国会図書館に置いてあるということです。
「法14条2号」というのは行政機関個人情報保護法のことで、「開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの」は非開示とすることが定められているのですが、審査会はこれには該当しないと言っているわけです。
個人情報保護法と情報公開法は表裏一体のもので、情報公開法5条1号が非公開にする情報として同様のことを定めています。従って、審査会が「当該部分を公にしても個人の権利利益を害するおそれがあるとまでは認められず」と判断したことは、大阪市の同和地区一覧は行政機関個人情報保護法の開示情報であるだけでなく、情報公開法上の公開情報であると判断したわけです。
少なくとも大阪市内に関して言えば、同和地区の一覧(しかも地番まで書かれたもの)が公になっても「個人の権利利益を害する」ことはないと政府の審査会が判断したわけで、非常に画期的なことです。
しかも、同和地区一覧について「特定個人の氏名等特定の個人を識別できる情報は記載されておらず」としているので、審査会の判断は「住民票その他と結合することにより、特定個人が旧同和対策事業対象地域の出身者であることが判明する」という大阪府の解釈とは正反対です。つまり、同和地区の場所は、法律上の個人情報ではなく、個人情報保護法による規制対象ではないわけです。
ある意味「解放令」のようなもので、大阪市の同和地区住民にしてみれば喜ぶべきことかも知れません。
数ヶ月以内に法務省(おそらく判断をするのは人権擁護局)による決定が出されると思います。審査会の決定に反してあくまで「同和地区が分かると個人が権利利益を侵害される」と判断するのかどうか注目です。それによって、人権擁護局がどのような役所なのかまた1つ明らかになるでしょう。