月刊「同和と在日」2011年3月号発売しました

今回は大阪大特集です。今まさに府議会で議論されている大阪府部落差別調査等規制等条例にまつわる背景を徹底取材しています。その中で、全国でも最大規模の同和対策事業が行われた大阪のその後の意外な姿が見えてきます。

また、12月号でお伝えした滋賀県草津市の隣保館の、身も蓋もない実情のインタビューを掲載しました。

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目次
●リベラルな電波グラビア館
・俳優・宇梶(うかじ)剛士(たかし)の母がアイヌを語る
・小沢一郎にハマる中高年左翼たちの謎
●追跡 大阪土地差別調査事件
・「隠蔽(いんぺい)」と「暴露(ばくろ)」
・同和地区が個人情報であるという拡大解釈
・糾弾はビジネス? 企業が入会をすすめられる「同企連」の会費は○○万円
●ワイド 大阪同和大帝国
・やっぱりあった“大阪府部落リスト” 作ったのはあの団体
・同和奨学金返還業務は大阪市職員の墓場?
・隣保館運営費等補助金は一般対策!?
・豊中市同和住宅 一般化の意外な手法
・大阪地域支援人権金融公社のなんでやねん? 極楽返済計画
・興信所条例改正を迫る民主党にギブアップ気味の橋下府知事
●自伝本はゴールできなかったサッカー日本代表・李(り)忠成(ただなり)
●声に出して読みたい「同和と在日」文献の旅
・第1回「大阪の部落史第7巻」
●草津市ゴージャス隣保館ぶっちゃけ裏事情
・自立したくても自立できない、甘やかしと甘えの構造
・同和地区と一般地区に立ちふさがる壁
●滋賀県同和行政バトル日記⑤
・第2回口頭弁論「公営住宅の名称と位置は個人情報か?」

大阪市の同和地区の区域図

以前から公開している大阪市の同和地区マップですが、詳細な区域が分かるようにしました。大きく表示するにはこちらをご覧ください。

同和対策事業により、公営住宅などの大きな建物が立ち並んでいることがよく分かります。西成地区の南部は下町風情が残っていますが、新しい住民が多く流入しており、混住化していたことが関係しています。

同和対策事業が行われなかった、中津と舟場は参考のために掲載しています。事業が行われた場所とそうでない場所を比較すると、非常に興味深いことが分かると思います。


より大きな地図で 大阪市同和地区(被差別部落)ツアー を表示

ところで、これを削除要請した大阪法務局の関連文書を開示請求しています。「事件記録」として次の文書が法務局にあるそうです。

鳥取市の同和減免関係の書類の開示について審議中

鳥取市の同和減免について情報公開請求と個人情報開示請求で拒否処分された件で異議申し立てをしたのですが、鳥取市情報公開・個人情報保護審査会で審議が行われています。

情報公開請求関係の理由説明書と意見書は次の通りです。

不開示等理由説明書-H23-1-14-1.pdf
意見書-H23-2-4.pdf

個人情報開示請求関係の理由説明書と意見書はこれです。

不開示等理由説明書-H23-1-14-2.pdf
意見書-H23-2-3.pdf

ポイントは、情報公開請求と個人情報開示請求で判断に違いが出るかどうかです。情報公開請求は情報の公開を求めるものですが、個人情報開示請求は当事者への個別の開示を求めるものです。そのため、両者は似ているようで、全く意味は違います。

しかし、今回の場合は個人情報開示請求の当事者が「地域住民」ということがミソです。情報公開についての意見書に書いたとおり、下味野の住民は1600人以上いるので、それだけの人数に対する「開示」は、もはや「公開」と変わりがないとも言えます。

鳥取市情報公開・個人情報保護審査会の会長は寺垣琢生氏ですが、実は例の鳥取県部落解放企業連合会にからむ情報公開裁判の県側担当もこの方でした。鳥取県では有名な名物弁護士なのですが、果たしてどうなるでしょう。

「滋賀の部落」、閲覧不許可

月刊「同和と在日」のオンデマンド印刷版を発売開始しました。こちらからお買い求めください。Android版も発売しております。Android Marketで「同和」で検索してください。

ところで、話題の書「滋賀の部落」の部落巡礼特集を滋賀県立図書館に閲覧・複写申請したのですが、不許可になってしまいました。

再度目的を変えて申請しようと思ったのですが、県立図書館には他にも似たような本が開架に置いてありまして、普通に借りることができました。今、ここに書くと制限図書にされてしまいそうなので、裁判が終わった後にでもご紹介いたします。

法務省が情報公開・個人情報保護審査会の答申に反して情報を不開示

本サイトに掲載した偽の部落地名総鑑の扱いについて、情報公開・個人情報保護審査会が答申の中で行政機関個人情報保護法に基づいて開示すべきとの判断を示しましたが、法務省は答申に反して不開示としました。その理由については、以下の裁決書をご覧ください。

裁決書-H23-1-27.pdf

滋賀県教育委員会も同様のことをしたように、審議会の答申というのは、何の法的拘束力もないので、その扱いとういうのはこの程度のものです。同和対策審議会答申のように45年経っても金科玉条のように扱われている方が、むしろ特殊な例でしょう。

興味深いのが非開示の理由です。行政機関個人情報保護法14条7号を根拠としているのですが、これは「事務事業遂行情報」と呼ばれるものです。法務省の説明によれば「人権擁護機関に対する国民からの信頼が失われ」ることが事務事業に支障が出る理由だそうです。以下、法務省の説明を引用します。

文書4(註:偽の部落地名総鑑のこと)には大津地方法務局が調査の過程で収集した特定の地域に関する情報が標題とともに多数掲げられたものが記載されている。審査請求人は、文書4の不開示部分は、審査請求人が自ら開設している特定ブログ等の内容を印刷したものであり、審査請求人が知り得ている情報であると主張するが、審査請求人が知り得ている情報か否かにかかわらず、当該部分には特定の地域に関する情報が多数掲げられ、その内容からして、それが事実であるか否かを問わず、差別を助長する可能性のある情報として、人権擁護機関が長年にわたりその排除に取り組んできた対象となるものと認められる。当該部分の情報は、削除要請の対象であるから、同部分を開示することは、それ自体上記取組と相反するものと言わざるを得ない。このような性質の収集情報を自ら開示することになれば、人権擁護機関に対する国民からの信頼が失われ、人権侵犯事件の処理において、関係者から情報提供、調査への協力を得ること等が困難になるなど、職員による事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。

もちろん単にそれだけのことであれば、これは違法だと思います。なぜなら、そんなことが理由になるのであれば、例えば情報を開示すると実施機関の不正行為が明らかになるような情報も「国民からの信頼が失われ」る情報なので、非開示にしてもよいということになってしまいます。

問題は、その「事務事業」が法的保護に値するようなものかどうかです。もし、偽の部落地名総鑑が本当に人権侵害につながるものであれば、行政機関個人情報保護法14条2項にある「開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を理由にすればよいだけのことです。それをしないのは、偽の部落地名総鑑が誰の権利利益を侵害するのか、説明できないからでしょう。単に「長年にわたりその排除に取り組んできた」実績があることだけが理由であって、典型的な自己目的化のように思えます。税金の無駄遣いではないでしょうか。

とにかく、確実なのは次のことです。

  • 実際に人権侵害が起こるかどうか分からないような、単なる住所の羅列でも法務省から「部落地名総鑑」と認定してもらえること。
  • 実際に誰かの人権を守ることになるかどうかは関係なく、「人権擁護機関に対する国民からの信頼」を守るために、そのような情報を排除することが法務省の仕事であること。
  • 法務省は、部落地名総鑑が本物かどうか判断できず、また本物かどうかに関わらず部落地名総鑑をネットに堂々と掲載して、法務局からの削除要請を無視しても何のおとがめもないこと。

ということで、法務省が必死に排除しようとしている部落地名総鑑は以下のファイルですので、ぜひダウンロードしてどんな物か確認してみてください。「人権擁護機関が長年にわたりその排除に取り組んできた対象となるものと認められる」というのですから、ある意味本物です。

部落地名総鑑.zip

法務省人権擁護局の仕事は、その程度のもと見て問題なさそうです。月刊「同和と在日」2月号で三品純氏が指摘している、「人権運動が組織化した時、本当に守るのは「人」でなくなる」というのはこういうことでしょう。

ちなみに、今さらどうでもよいことですが、法務局に通報したのは部落解放同盟滋賀県連のようです。