滋賀県の同和対策関連文書の全面公開を求めて再度異議申し立てしました

滋賀県の同和対策関連の文書について5月8日に一部公開決定に対して異議申し立てしました。
滋賀県内の同和地区や地域総合センターについて図書館等で資料を収集してみたのですが、むしろ公開しない理由が見つからないので、今回は最初から全面公開を求めています。異議申し立ての趣旨と、理由は次の通りです。

(1) 趣旨
以下の採決を求める。
ア 異議申立に係る処分のうち、地図、地区名、施設名、施設所在地、電話番号および同和地区名や所在地が分かる地区概要等の部分一切を公開しないとした処分を取り消す。
イ 下記の文書を全て公開する。
 同和対策事業に関する地図のうち愛荘町山川原、川久保、長塚の事業に関するもの
 滋賀県同和対策新推進計画(地区別事業計画)<改定計画>
 同和対策地域総合センター要覧
(2) 理由
以下に説明するとおり、異議申立に係る処分の理由に不服がある。
ア 地域総合センターの施設名、施設所在地、電話番号について
 地域総合センターが同和対策に関係する施設であることは「同和対策地域総合センター要覧」という文書名から、自明のことである。施設名、施設所在地は市町の条例により公にされている例が多くあり(添付資料1)、そうでなくとも地域住民が利用する公共の施設であるため、施設所在地や電話番号は公とされるのが慣例である。従って、滋賀県情報公開条例(以降、単に「条例」という)第6条第1号アに該当し、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害する恐れがあるかどうかに関わらず、実施機関には公開の義務が生ずる。従って条例第6条第1号による非公開情報ではない。
 また、同和対策地域総合センター要覧は条例第6条第6号のア~オに掲げられている「監査、検査、取締りまたは試験に係る事務」「契約、交渉または訴訟に係る事務」「調査研究に係る事務」「人事管理に係る事務」「県、国もしくは他の地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等または地方独立行政法人に係る事業」のいずれにも該当していない。また、同和対策は各地域に対して周知の上で実施された公共事業であるから、公開することで、その他事務事業に支障が生ずるということもあり得ない。
イ 愛荘町山川原、川久保、長塚の同和対策事業に関する地図と、その他の地区も含む同和地区名や所在地について
 同和対策事業に関する地図について、異議申立人は地区名を指定して情報公開請求を行っているため、実施機関が非公開としたことにより、愛荘町山川原、川久保、長塚の各地区が同和対策事業の対象であったことを事実上公開することになっている。同和地区名や所在地が非公開であれば、条例第9条により存否応答拒否しなければならず、特定の地区の地図を非公開にしたことと、同和地区名を非公開としたことは、互いに矛盾した処分である。
 地図に関しては、具体的に同和地区の領域を示すようなものではないと実施機関から口頭で説明を受けている。そうであれば、地図や航空写真(添付資料2)等で既に公となっている情報と変わらない。
 また、地区名については、愛荘町に関しては愛荘町地域総合センター条例に書かれた地域総合センターの名称から既に明らかである。図書館で見ることができる昭和40年代の資料(添付資料3)では滋賀県内の各同和地区の名前や歴史的な経緯も明らかになっている。
 従って、これらも条例により公にされているか、あるいは公にすることが慣例になっていると言うことができ、第6条第1号アに該当し、公開しなければならないものである。
 また、住宅地図(添付資料4)等により地区に住む個人はある程度特定されるが、地区の歴史や同和対策が行われた事実は、現住している個人の人格とは無関係であり、公にすることにより、なお個人の権利利益を害する恐れがあるとは言えない。
 アと同様の理由で、条例第6条第6号の事務事業遂行情報にも該当しない。

異議申立書には、次の資料を添付しています。

地域総合センター条例は各市町の地域総合センターの名称と位置が記載されたものです。ウェブで例規集を公開していない町は、役場か地元の図書館まで行かないと見ることができないため、全ては網羅していません。

地図は普通にネットで公開されている地図で、航空写真は国土地理院が公開しているものです。

「滋賀の部落」という資料は同和対策特別措置法が出来た前後に作成されたもので、滋賀県内の被差別部落の名称や歴史的な由来が網羅的に記述されています。おそらくは同和地区指定の根拠とするために研究されたものでしょう。編集発行者の事務局が部落解放同盟滋賀県連合会となっています。これは図書館で普通に閲覧できますし、古書店にも出回っているようです。

ゼンリン住宅地図は、家ごとに表札や看板の内容が記述されているので、おそらくは今回非公開とされた地図よりも詳細です。これも図書館で普通に閲覧できます。

こういった資料で既に明らかになっている地区が、差別対象だから公開できないと判断されるのでしょうか?

番号 資料名 取得元
1 愛荘町地域総合センター条例
栗東市地域総合センターの設置及び管理に関する条例
湖南市地域総合センター条例
甲賀市地域総合センター条例
守山市地域総合センターの設置等に関する条例
長浜市地域総合センター条例
彦根市地域総合センターの設置および管理に関する条例
野洲市地域総合センター条例
愛荘町例規集
栗東市例規集
湖南市例規集
甲賀市例規集
守山市例規集
長浜市例規集
彦根市例規集
野洲市例規集
2 滋賀県愛知郡愛荘町長塚周辺の地図
滋賀県愛知郡愛荘町山川原周辺の地図
滋賀県愛知郡愛荘町川久保周辺の地図
CKK-82-1 昭和57年度 彦根
CKK-75-9 昭和50年度 近江八幡
Yahoo!地図
国土地理院国土情報ウェブマッピングシステム
3 滋賀の部落第五輯(昭和45年)
滋賀の部落第七輯(昭和46年)
滋賀の部落第十一輯(昭和47年)
編集発行・滋賀県部落史研究会
事務局・部落解放同盟滋賀県連合会
国立国会図書館
4 ゼンリン住宅地図
愛知郡愛荘町:旧秦荘町・愛知川町 200605
国立国会図書館

滋賀県から同和対策関連資料の一部公開決定

滋賀県に対して情報公開請求の手続きをやり直していた件で、去る5月8日付で公文書一部公開決定が出ました。
公文書一部公開決定書
「地図、地区名、施設名、施設所在地、電話番号および同和地区名や所在地が分かる地区概要等の部分一切」が非公開となっています。
ところで、情報公開制度にはグローマー拒否という概念があって、文書が存在するかどうかを回答すること自体が、非公開情報を公開することになってしまう場合は、実施機関は公開でも非公開でもない存否応答拒否という決定を行います。滋賀県情報公開条例でも第9条にこの規定があります。
今回の場合、「同和対策事業に関する地図のうち愛荘町山川原、川久保、長塚の事業に関するもの」の開示を求めたので、地図を非公開としたということは、愛荘町山川原、川久保、長塚について、同和対策事業に関する地図が存在するという事実を滋賀県が公開してしまったことになります。その上で、地区名を非公開とするのは矛盾していると言えます。
他にも法的な問題があるため、再度異議申し立てをすることになります。

最高裁から記録到達通知書が届きました

平成21年4月27日付で、最高裁判所第三小法廷から記録到達通知書が届きました。事件番号は次の通りです。
平成21年(行ツ)第121号
平成21年(行ヒ)第144号
最高裁が広島高裁松江支部の判断を変更しない場合は、ほとんどの場合上告棄却の書面が送られてくるだけで終わりです。上告が受理される場合は、大抵は判決が変更される場合で、口頭弁論が開かれます。今回の場合、行政処分に対する憲法解釈の問題が絡んでいるので、争点として認められれば、(日本全体でも年に数回しかない、稀なことですが)大法廷に回されることもあります。
最高裁というのは気まぐれなところらしいので、次の展開や時期は不明です。