公共工事の入札で特定団体を優遇する制度

つい最近、今年の2月1日から2月3日に鳥取県が施行した入札制度に、特定団体を優遇する内容が盛り込まれていることが明らかになりました。平成18年2月3日付けで施行された、「鳥取県建設工事入札参加資格者格付要綱」(以降「格付要綱」)に関連する要綱がそれです。
公共工事の入札に参加できる企業の格付けは点数制になっています。当然、点数の高い業者は入札に参加できる機会が多くなり、公共工事を受注できる機会も多くなる、ということになります。
鳥取県の場合、この加点条件の中に「人権問題や同和問題に関する研修」というのがあります。以下、格付要綱から関連する部分(第4条第3項第3号)を引用します。

(3) 研修受講による加点(30点を限度とする。)
格付日の属する年度の前年に行われた次のいずれかの研修(県土整備部長が指定するものに限る。)の受講者(別に定めるところにより受講効果が認められた者に限り、イの研修にあっては、有資格者の常勤役員(有資格者が個人の場合は、代表者)に限る。)の所属する有資格者について、別に定めるところにより算定した点数
…(省略)…
ウ 人権問題や同和問題に関する研修、その他建設業者の経営幹部と実務従事者の両方が受講するのが効果的な研修

そして、附則として次のことが書かれています。

3 平成19年度及び平成20年度の格付においては、第4条第3項第3号中「30点」とあるのは「30点(部落解放鳥取県企業連合会の会員である有資格建設業者にあっては、33点)」とする。

つまり、「部落解放鳥取県企業連合会」の会員企業には通常の点数よりもさらに3点加点することができる、ということです。
では、「県土整備部長が指定する」研修とは何なのでしょうか?「鳥取県建設工事入札参加資格者格付要綱における県土整備部長が別に定めるものについて」という文書には、人権・同和研修は「部落解放鳥取県企業連合会」によるものが指定されています。加点数については、「常勤役員(監事は含まない)が受講した場合3点、その他の職員が代理受講した場合1点」とされています。
さて、度々出てくる「部落解放鳥取県企業連合会(以降「連合会」」とはいったい何なのでしょうか?
当の団体に問い合わせたところ、入札に関する研修は連合会の会員のみに対して行っているということでした。では、「会員になるにはどうすればよいか?」という問いに対しては、「住所とか企業名とかをお聞きした後でのお話になります。」とのことでした。
複数の県内企業関係者などの話では、この団体は鳥取市幸町の中央隣保館(解放センター)にあります。会員になった企業は同企連同様、規模に応じて会費を支払う仕組みになっている、ということでした。
そこで、取材目的であることを明らかにし、再び連合会に問い合わせてみました。
私) 所在地は幸町の解放センターなのでしょうか?
連合会) ちょっとお待ちください… (保留) その取材の目的は何でしょうか?
私) 入札制度の文書に貴団体の名前があったので、どういった団体か確認したいのです。
連合会) そういうのは行政がやってることですし、そちらの方にお尋ねください。
もちろん、行政に問い合わせてみました。それに関しては次回お話するとして、鳥取県の入札制度をもう少し見てみましょう。
県土整備部の指名競争入札に関する「鳥取県県土整備部建設工事指名業者選定要綱」の採点基準には、「地域貢献度」という項目があります。以下、それに関する別表の第8項を引用します。

8 地域貢献度(-10以下は-10とし、10以上は10とする。ただし、所管県土局の長が次の④の加点項目について5点以内の加点を行う場合は、当該加点に限り、10を超えて行うことができる。)

そして、その加点項目というのは以下の通りです。

①緊急時の除雪、災害復旧への協力
②公共的な活動への主体的な参画
③発注工種と同種の工事の良好な施工
④同和問題解決への積極的な取組
⑤その他公共の福祉や地域の振興に貢献する行為

ご覧の通り、「同和問題解決への積極的な取組」をしている企業には余計に5点が加点されるしくみになっています。
では、「同和問題解決への積極的な取組」とは何を意味するのでしょうか?そのことは「鳥取県県土整備部建設工事指名業者選定要綱の施行について」という文書に詳しく書かれています。

6 別表の第8項関係
地域貢献度による採点は、各発注機関が、その地域の年々の実情に応じて定めるものなので、発注機関により内容に差異があっても差し支えはなく、必ずしも全項目について網羅的に定める必要もない。ただし、できるだけ客観的な基準により採点することとし、独自の取扱いも合理的に説明できる範囲で行うこと。なお、加点項目の④については、例えば次のような基準が考えられる。
(規定例1)
部落解放鳥取県企業連合会が実施する建設業者のための研修(○○県土整備局長が指定するものに限る。)を受講した同会の会員である有資格者については、歴史的・社会的事情によりその中でなければその者は受注が困難と認められる区域(その者について○○県土整備局長が指定する区域とする。)内で施工される対象工事に限り、5点を加点する。
(規定例2)
部落解放鳥取県企業連合会が実施する建設業者のための研修(○○県土整備局長が指定するものに限る。)を受講した同会の会員のうち、当該年度において同種県工事の請負契約を未だ締結したことがない有資格者については、5点を加点する。

またも「部落解放鳥取県企業連合会」が出てきました。
実は、鳥取市の公共工事にも同様の制度があります。これについても、次回で引き続き採り上げます。

コメント

コメント(1)

  1. 青い炎の日記 on

    公共工事品確法と鳥取県入札制度

    差別をなくすにはどうしたらいいのか?これにはいろいろと悩ましい問題を抱えている。一般的な考え方では、当初はある程度強引に『結果の平等=差別されていた側へ特権を与えること』的な施策を行って、当初の差別的状態が解消されれば、『結果の平等』的な政策から『機会の