同和地区環境整備事業について鳥取市情報公開・個人情報保護審査会の答申

鳥取市の合併特例債で行われた同和地区環境整備事業の記載計画書の一分が黒塗りされた件で異議申立てしていたのですが、情報公開・個人情報保護審査会の答申が出ました。もちろん不開示です。

H24-3-22 鳥取市決定書.pdf

理由は、同和地区が分かると住民にとって不利益になるからだそうです。西品治児童館と市道国安11号線の部分だけ黒塗りにしたので「西品治」と「国安」が同和地区の名前だと分かってしまったではないかと突っ込んだのですが、受け入れられませんでした。

ただ、付帯意見としてこんなことが書かれています。

本件処分は、工事名の内、具体的な町名部分のみを不開示としているが、異議申立人によると容易に施設名及び市道名が特定できるとのことである。この特定が正しいとしても、誤りであるとしても、特定された地域の住民にとって不利益となる可能性は否定出来ない。

部分開示を行う場合は、既に公表されている情報等を踏まえ、不開示とした情報を推測されないよう開示方法に細心の注意をはらうように実施機関に対して要請する。

これは突っ込みどころがいくつかありまして。まず「特定が正しいとしても、誤りであるとしても」としていますが、以前、同和減免の対象地域を非公開にしたときは同和対策のための集会所と地区会館の名称と市は同和地区名を明らかにしたものではないので問題ないとしていました。「同和地区名が特定できる」ことが問題なのか、「同和地区名だと思われる」ことが問題なのか、はっきりしません。

ちなみに、答申の中に「異議申立人は、鳥取市のホームページ等で得られる情報の中から、工事の時期、予算額等により施設名、道路名が容易に分かると主張する」と書かれていますが。私は異議申立書に「ホームページ」というようなことは一言も書いていない上、照合した文書がどこにあるどの文書なのかということも書いていません。にもかかわらず「ホームページ」という言葉が出てくるのは、審査会の誰かか事務方が実際に鳥取市のサイトで確認したのだと思います。実際に確認すれば分かりますが「同和対策事業費」で行われた西品治児童遊園整備事業の金額とぴったり一致しますし、「同和対策市道」と堂々とかかれた書類には市道の名前がそのまま出ています。特定できることは確認済みのはずで、「特定が正しいとしても、誤りであるとしても」ととぼける理由がありません。

答申本文には「市の他の文書で確認できる工事は、単に事業名を公にしているものであり、同和地区名を公にしているものではない」と書かれていますが、「同和地区環境整備事業」なら同和地区名を公にすることになるのに、「同和対策事業費」や「同和対策市道」なら同和地区名を公にするものではないという説明は苦しいのではないかと思います。

「不開示とした情報を推測されないよう開示方法に細心の注意をはらうように」とは何を意味するのでしょうか。それなら、事業記載計画書をほとんど黒塗りにしてしまわないといけないわけで、そんなことをしていれば同和がからむ事業はほとんど「使途不明金」になってしまいます。かつて国費で同和対策事業をやっていた時代であっても、さすがにそんなことはしていなかったと思います。

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今回は九州を大特集。
長崎市で盲導犬「アトム号」が失踪。一方で虐待疑惑が取り沙汰され、地元紙は虐待説を非難。真実を求め現地からのレポート。
北九州市ではあの「松尾城」への潜入を試みた。
そして、長らくお待たせした旧立花町差別ハガキ自作自演事件を追った連載「自演」がついに完結。
ほか

目次
●拡大版リベラルな電波グラビア館
・風雲! 松尾城
・長崎原爆慰霊碑の横に解放同盟の碑も並ぶ
●大炎上!盲導犬「アトム号」失踪事件 住民を引き裂いた「西日本新聞」の“暴走”
・消えた盲導犬・アトム号はどこへ?
・西日本新聞の報道によってさらに大炎上
・寄付で成り立つ盲導犬事業に募金箱制作費440万円は必要か?
・盲導犬と警察犬を混同する記事に関係者も怒り心頭
・眼鏡橋がある風景で起きたアトム騒動
・怒りの白杖《はくじょう》! 中濱さん「ハンパねえ…」
・アトムを世話できなくなったのは家族の事情?
・アトム失踪後、「天罰」の怪文書も出回った
・メディアが訴える美談、感動話の欺瞞《ぎまん》性
・西日本新聞記者「路上放尿はアトムのため」って?
・ケジラミ、ノミ、ダニにも困っていたアトム号
・性善説すぎる盲導犬事業の制度
・戸惑う県と協会、住民にとって障害物でしかないメディアと
●シリーズ「自演」立花町連続差別ハガキ事件 最終回
・「闘いからは何も生まれんよ」
・逮捕の1年前から内部犯行説が出ていた?
・事件の原因は“同和利権”ではない
●鳥取市の謎 同和減免対象区域を公開させられるか?
・同和減免はおそらく違法、しかしそれはまた別の話
・公開すると差別につながるという説明がどこまで通用するか

2012年度の部落解放滋賀県連合会の要求書

部落解放滋賀県連合会から滋賀県下の各自治体や教育委員会に要求書が出されています。

全文はこちらをご覧下さい。
2012解放同盟滋賀県連要求書.pdf

要求は15項目あります。

例えば(3)の人権侵害救済法の制定の要求は毎度のことです。(4)では2000年に制定された人権教育啓発推進法が持ち出されていますが、「人権」と名のつく法律が、同和団体が行政に何か要求をする場合の錦の御旗として利用されていることがよく分かります。

注目すべきは(5)の項目で、隣保館の事業対象となる「地域住民」が「同和地区住民」であることが強調されています。行政も運動団体も対外的には隣保館は「開かれた施設」だと強調するのですが、内輪ではまだ「同和の施設」と言っているわけです。この点については、別の資料を分析中なので、近いうちに結果を明らかにしたいと思います。

15項目の中には、解放同盟の名簿流出や、滋賀県の同和地区一覧のことは触れられていません。この理由について関係者によれば、一言で言うと「金にならへんから」だそうです。

解放同盟は支部から協議会、県連、中央と事案が報告されるボトムアップ型の組織なのですが、事案が途中で止められることがあります。滋賀県連に関して言えば通過するかどうかの基準は、行政交渉の材料として利用価値があるかどうかということだと言います。何をもって利用価値があるかというと、事案が深刻かどうかよりも、まず「分かりやすい案件」ということと「行政の責任を問える」あるいは「企業から金をとれる」ということが重要になります。

滋賀県の同和地区一覧に関しては、もともとの情報の出どころが解放同盟なので、行政の責任は問えません。また、鳥取ループは金を持ってなさそうです。

一方で、湖南市の相談員差別発言事件は一見どうでもいいような事例ですが、役所の中で起こったことなので役所の責任が問えました。

企業がらみの案件でも、例えば別の同和団体がからんできて「分かりやすい案件」から「ややこしい案件」になると解放同盟が手を引くということもあるようです。

鳥取県倉吉市の同和地区の成り立ち

最近、倉吉市役所人権政策課に電話したら、「部落出身で差別を受けてきた」という職員から「市役所まで謝罪に来なさい」というようなエセ同和顔負けの対応をされて延々と2時間ほど絡まれました。

同部署には部落解放同盟の役員が2人おりまして、以前から人権文化センターなどの人権・同和問題関係の部署に配属されています。同和地区マップの削除要請の取り組みは部落解放同盟としても、倉吉市役所としても行なっているということで、解放同盟の活動と市役所の業務の境目がありません。人権政策課が解放同盟の事務所と化しているような状態で、2人の団体役員が強い利害関係のある部署に配属され続けるという、ちょっと今まで聞いたことがないような実態が倉吉市役所にはあるようです。

詳しくは「月刊同和と在日」2月号「匿名で企業に圧力 大阪芸大「人権問題論」講師・北口学の「エセ同和行為」」の中でレポートしています。2月14日発売予定の書籍版「同和と在日3 ―直撃! 部落解放研究全国集会」にも、この2人が誰なのかということを加筆して掲載しています。

さて、鳥取県の部落史研究者の間では非常に有名な宇田川宏先生の論文に「鳥取縣における新部落の形成」というのがありまして、これは倉吉の部落の成り立ちを知る上では貴重な資料です。まず、以下の地図の中央辺りが倉吉市の被差別部落の分布です。

より大きな地図で 鳥取県内の同和地区(被差別部落) を表示
注目すべきは、天神川沿いに部落が多いことです。前述の論文にはこうあります。

次の述べようとするのは明治を中心とする倉吉周辺開田部落の成立についてである。その心軸をなしたものは天神野開田部落でありその中に天神野、西鴨、中田、生竹、安歩、紀穏、志津の七部落を含んでおり、ひとしく開田の名で呼ばれている。

そして、これらの部落は明治から大正にかけて鳥取市や八頭郡の部落から開拓のために移住してきた人により形成されたと説明されています。逆に倉吉市に古くからある部落は勝負谷で、その近くにある妻ノ神は勝負谷の富裕農家が大正時代に土地を買って移転してきたということです。

ちなみに以前、同和地区の企業が加入している部落解放鳥取県企業連合会の加点研修に参加した企業の一覧を鳥取県が黒塗りして公開した時に、鳥取県が消し忘れていた会員企業の秋山組がある「みどり町」も同和地区ですが、この地区は国土地理院の航空写真を見ると昭和になってから新しく整備されて宅地造成されています。

倉吉市役所の人(解放同盟役員)は、なぜか「同和地区」が判明することを異常に嫌いますが、実際は説明した通り倉吉市の同和地区のほとんどは明治以降に荒地を開拓してできたため、いわゆる「穢多地」であった経歴すらありません。倉吉市における「同和」というのは、ほとんどの場合いわゆる「属地」ではなく「属人」なわけです。

また、勝負谷は辺鄙な場所にある小戸数の集落ですが、「富裕農家」が移転してできた「妻ノ神」がなぜ同和対策対象地区とされたのかよく分かりません。妻ノ神も小戸数の集落で、戦後間もないころの航空写真を見ても、鳥取市の部落にありがちな住宅が密集しているということもありません。

固定資産税の減免要件の公開を求め鳥取市を提訴

同和行政を検証するブログ「鳥取ループ」(http://tottoriloop.miya.be/)の運営者宮部龍彦は8日、鳥取市税条例により行われている、いわゆる「同和減免」の対象区域等の公開を求めて鳥取市を鳥取地裁に提訴した。

訴状・甲号証はこちら

同和減免は市内の同和地区内にある同和関係者が所有する固定資産税と都市計画税を減額するもので、平成24年度まで行われ、市の資料によれば平成21年度には市全体で1847件、5578万8000円の市税が減免された。なお、同様の制度は鳥取市以外の自治体にもあり、例えば米子市でも行われている。

宮部龍彦は鳥取市下味野地区の同和減免の説明資料と対象区域を市に情報公開請求したが、下味野地区内に同和地区があることが判明するという理由で拒否された。また、下味野の住民が個人情報開示請求をしたものの同様に拒否されている。

憲法30条と84条は租税を課すためには法律の定めが必要としているところ、同和減免の具体的要件が非公開であるなら市民に課された税金の額が適法なものか判断できないことになり、市長が条例の定めなく秘密裏に税を減額したに等しく、憲法違反である。また、同和減免の適用を受ける場合「自分の住所は同和減免の対象区域かどうか」知らなければ申請は不可能で、自己の情報を個別的に開示することを求める制度である個人情報開示請求に対して応答を拒否したことはそれと矛盾している。

本訴訟の意義は、ほとんど目にすることができない個別の地区に関する同和行政の資料を公開のものとし、市民が報道や調査研究に利用する道を拓くことである。また、個別の地区について自由な議論ができるようにすることで、同和問題が情報隠しや不正の隠れ蓑として利用されるのを防ぐことである。