同和問題研修に積極的に取り組んでいる事業所の一例

鳥取県内の同企連企業では社員向けの同和問題研修が行われます。特に、四社懇企業のように、非常に熱心な企業というのも存在します。
私の手元に「同和問題・人権問題研修資料-事業所における同和問題・人権問題の取り組み方-」(平成12年5月/鳥取県)という資料があります。その中に、同和問題研修に積極的に取り組んでいる事業所の「好事例」として2つの例が掲載されていました。
以下、1つめの企業の研修の中身を紹介します。

①新入社員研修会…合宿研修(社内・社外講師による公園 意識調査 2時間程度 1回/年)
②全従業員研修会…各部会単位(ビデオ・グループ討議・ワークショップ・社内・社外講師による講演1.5~2時間程度 2回/年)
従来の研修では、ビデオ、講演の後、感想あるいはアンケート調査により社員の意識の状況を把握していましたが、一方通行に終わりやすく、また、内容においても消化不良のままで終わってしまう懸念もあり、座談会形式の場を設定し、部落差別事象や啓発映画を教材として「常日頃から疑問に思っていること」、「同和問題に対する考え方」、「差別をなくすため自分としていかに行動するか」等につき、皆が自分の意見を発表し、グループ討議を行い、討議結果の発表、意見交換の後、社内講師による指導・助言を受ける相互研修方式をとり入れています。また昨年は、ワークショップも体験し自分にできる周囲への働きかけを認識することも行っています。
③ 役職員研修会…全役職員(主任・係長・課長・部長・グループ討議・社内講師による講演2時間程度 2回/年)
全従業員研修のグループ討議においてまとめ役をするための事前研修として実施。
④ 幹部研修会・協力会社幹部研修会…労使幹部、協力会社幹部(社外講師による講演 2時間程度 1回/年)
同和問題解決の中心的課題である就職の機会均等を柱に、講義方式と相互研修方式にて研修を進めています。

この企業がここまで熱心に同和研修に取り組むきっかけは、関連会社が「部落地名総鑑」を購入していたことに端を発します。徹底した同和研修は現在も続いており、2005年度も同様の活動を行っています。講演については、社内の講師によるもの、解放同盟によるもの、その他の学識経験者によるものと3パターンあり、その比率はおおよそ同じくらいです。気になる講師への謝礼については、同企連の活動の一環ということもあり、支払ってはいないということでした。関係者曰く、「ぶっちゃけた話、いくら払おうといった提案をしても、先方が必要ないというので菓子箱程度で済ます」ということです。

2005年度同和教育推進体制
この企業の2005年度同和教育推進体制

研修以外の活動では、ヒューマンライツ等の書籍を1冊づつ購入している他、「人権標語募集」というのがあります。これは「全社員その家族からも募集、入選者は人権週間に表彰、入選作品は各職場朝礼にて1ヶ月間唱和」するというものです。2004年の応募点数は523点で、社員の参加率は100%です。ちなみに、朝礼で唱和された優秀作品は以下の通りです。
・「差別の芽 見抜く心と摘み取る勇気」
・「差別だと気づく知識と言う勇気 誰かが待ってる あなたのひとこと」
・「摘みとろう 心に芽生えた差別の芽 咲かせよう やさしい心で人権の花」
・「ゲームのようにリセットできない心の痛み 意識を高める人権学習」
・「見つけよう 私の中の差別の芽 広げよう全ての人に人権意識」
ここまですると同和地区出身者の社員はかえって「引く」のではないかと思いますが、2つめの事業所はさらに上をいっていました。その詳細は、近日報告します。

鳥取市同和問題企業連絡会会員名簿

鳥取市同和問題企業連絡会の会員名簿と役員名簿が公開されました。
役員名簿の個人名は代表幹事を除いて不開示となっており、企業名だけが公開されています。役員名簿の筆頭にある中国電力、鳥取三洋、日ノ丸自動車は同企連のコアグループとして重要な役割を果たしている企業です。鳥取の主要都市にある同企連の全身は、これら3社にさらにオムロン倉吉を加えた四社合同同和問題連絡会(略称・四社懇)です。これらの企業に共通することは、いずれも部落解放同盟の糾弾を受けていることです。そのきっかけとなったのは、1980年前後に起こった「部落地名総鑑事件」でした。中国電力、鳥取三洋、オムロン(オムロン倉吉ではなく京都のオムロン本社)はい部落地名総鑑を買った企業です(日ノ丸自動車については未確認です)。
四社懇の設立は1982年であり、これらの企業では早くから社内での同和研修に取り組んできました。しかし、なぜかその後もこれらの企業では「差別事件」が続発します。そして、1990年には鳥取市同和問題企業連絡会が設立されました。
鳥取市同企連は9つのグループに分けられています。以下は、役員名簿と各グループごとの名簿です。鳥取市の名だたる企業はほとんど名前を連ねているので、鳥取市にお住まいの方は、お勤めの企業名が入ってるかも知れませんね。
代表幹事
中国電力㈱鳥取支社
副代表幹事
鳥取三洋電気㈱
日ノ丸自動車㈱
グッドヒル㈱
㈱鳥取銀行
鳥取いなば農業協同組合
幹事
鳥取中央郵便局
西日本旅客鉄道㈱米子支社・鳥取鉄道部
日本生命保険(相)鳥取支社
日ノ丸西濃運輸㈱
㈱損害保険ジャパン鳥取支店
大和建設㈱
鳥取県農業協同組合中央会
㈱山陰合同銀行鳥取営業部
㈱鳥取大丸
やまこう建設㈱
リコーマイクロエレクトロニクス㈱
会計監査
朝日生命保健(相)山陰支社
山陰リネンサプライ㈱
第1グループ
㈱鳥取銀行
鳥取中央郵便局
朝日生命保険(相)山陰支社
住友生命保険(相)鳥取支社
鳥取市立病院
鳥取信用金庫
日ノ丸慣行㈱(ニューオータニ)
日ノ丸産業㈱
日ノ丸ハイヤー㈱
㈱斧谷晴壹商店
第2グループ
グッドヒル㈱
西日本旅客鉄道㈱米子支社・鳥取鉄道部
㈱HRD
大鳥機工㈱
㈱三協商会
聖和精機㈱鳥取工場
太洋住研ホーロー㈱
日立金属㈱鳥取工場
ミサワホームサンイン㈱
鳥取県畜産農業協同組合
第3グループ
西日本電信電話㈱鳥取支店
やまこう建設㈱
えびす本郷㈱
(財)中国電気保安協会鳥取支部
中電プラント㈱鳥取事業所
東部タクシー㈱
鳥取瓦斯㈱
㈱モリックスジャパン
第4グループ
鳥取三洋電機㈱
大和建設㈱
山陰リネンサプライ㈱
菌興椎茸協同組合
弘信観光㈱鳥取営業所
㈱田中建設
第一生命保険(相)鳥取支社
大山乳業農業協同組合鳥取支所
富国生命保険(相)鳥取支社
(財)鳥取県保健事業団
第5グループ
中国電力㈱鳥取支社
リコーマイクロエレクトロニクス㈱
アクサ生命保険㈱鳥取支社
資生堂販売㈱鳥取支社
商工組合中央金庫鳥取支店
㈱中電工鳥取支店
鳥取市水道局
日本海信販㈱
日本海テレビジョン放送㈱
三井生命保険(相)鳥取支社
第6グループ
鳥取いなば農業協同組合
日ノ丸西濃運輸㈱
㈱ウエスコ鳥取支社
コクヨ事務用品工業㈱
㈱サンマート
㈱ソルコム鳥取支店
第一道路施設㈱
日本通運㈱鳥取支店
㈱日照プレス
㈱マルテ
第7グループ
㈱損害保険ジャパン鳥取支店
日ノ丸自動車㈱
イオン㈱ジャスコ鳥取店
㈱エヌ・ティ・ティネオメイト東中国鳥取支店
㈲亀井堂
三洋製紙㈱
㈱大晃工業
日本放送協会鳥取放送局(NHK)
㈱藤原組
第8グループ
鳥取県農業協同組合中央会
日本生命保険(相)鳥取支社
㈱今井書店
公立学校共済組合鳥取宿泊所
全国共済農業協同組合連合会鳥取県本部
鳥取県信用農業協同組合連合会
鳥取県農業共済組合連合会
日本交通㈱
富士火災海上保険㈱鳥取支店
第9グループ
㈱山陰合同銀行鳥取営業部
㈱鳥取大丸
大同生命保険㈱鳥取支社
山陰信販㈱鳥取支店
㈱富士通中国システムズ鳥取事業部
全国農業協同組合連合会鳥取県本部
日本赤十字社鳥取県本部
明治安田生命保険(相)鳥取支社
医療法人明和会 渡辺病院

倉吉市同和問題企業連絡会

最近、鳥取市のネタばかりなので、たまには他の地域のネタも採り上げます。
以前、鳥取市の同和問題企業連絡会(同企連)について採り上げました。実は、同企連は鳥取の主要都市に存在します。すなわち、米子には米子の同企連があり、倉吉には倉吉の同企連があります。
しかし、元祖は鳥取市の同企連です。1990年、部落地名総鑑事件などで解放同盟の糾弾を受けていた4社(当時は四社懇と言われていました)のうち、鳥取県東部の3社が鳥取市同企連を結成しました。それは鳥取でも有名な花形企業、鳥取三洋、日ノ丸自動車、中国電力鳥取支社です。そして、残りの一社オムロン倉吉をはじめとする企業で1994年に結成されたのが倉吉同企連です。
件の4社の倉吉営業所はもちろん、倉吉同企連には鳥取の有名企業が名を連ねています。JR西本倉吉駅、株式会社いない、神鋼機器工業、倉吉グンゼ、鳥取オンキョー、鳥取銀行倉吉支店、山陰合同銀行倉吉支店などです。
倉吉同企連の電話番号を調べると倉吉市役所産業部企業立地推進室の電話番号になっており、鳥取市同様、市役所内に窓口があることが分かります。
同企連の会員企業には同和問題研修推進委員がおり、講師による講演、座談会、啓発ビデオ鑑賞といった研修が社員に対して行われます。全社員参加しての研修、というのが理想なようですが、実態としては半数以下に留まるようです。ともかく、同企連会員企業は人権教育に熱心な企業ということになります。
最後に、倉吉同企連の10周年記念誌に掲載されている、部落解放同盟倉吉市協議会委員長の中野俊夫氏の祝辞から引用しておきます。

「現在『人権教育及び人権啓発の推進に関する法律』が制定され、『人権侵害救済法』制定の運動が全国的に高まっている今、倉吉同企連の役割と存在は重きをなすものと思います。今後ともその取り組みを続けていただきたいと思います。」

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