8月4日は、地域総合センターの名称・位置、同和地区名等の公開を求め滋賀県を提訴した裁判の第5回口頭弁論でした。
まず、双方の書面の確認が行われ、次に裁判官から被告(滋賀県)へ質問がされました。
裁判官: 第2書面別紙にある乙4号証の抹消の理由はこれで全てですか?
滋賀県: 漏れているものはないので、これで全てです。
これはこの書面の22枚目以降の説明のことです。乙4号証(同和対策地域総合センター要覧)の黒塗りにした部分がどのようなものであったかを説明した資料なのですが、これが全ての削除箇所の類型を網羅しているのかどうかを裁判官は尋ねたわけです。
裁判官: 乙3号証(滋賀県同和対策新総合推進計画)、乙4号証(同和対策地域総合センター要覧)には地区名が書かれていますが、これはどちらも同じ地区名ですか?
滋賀県: 同じです。
裁判官: 数えると乙3号証は66箇所で、乙4号証は61箇所ですが、この違いは何ですか?
滋賀県: センターが設置されていない地区があるからです。
ここまでは何ということもない質問だったのですが、ここで「事務事業支障情報」という争点が問題とされました。
裁判官: 事務事業の支障とはどのようなものですか? 例えば部落地名総鑑ができて差別が助長される意外に何か支障がありますか。
滋賀県: 啓発に支障が生じるということです。
裁判官: もっと具体的なことはありませんか?
滋賀県: 第2準備書面の21ページにあるように、同和地区の問い合わせや、身元調査をしてはいけないと啓発していることと、矛盾するということです。情報が出てしまうと、問い合わせや身元調査を行われる蓋然性が高いです。
裁判官: (質問の趣旨は)事業への支障ということを翻訳すると規範としてどのようなものがあるかということです。
滋賀県: 自ら情報を公開してしまうと、県民の信頼を失って、事業の存続の障害となるということです。
裁判官: 抽象的に弊害があるとしても、具体的に何に支障が出るのですか?
滋賀県: 身元調査をしてはいけないと啓発しているので、県が公開すると矛盾してしまい、県民が言うことを聞かなくなるということです。
裁判官: それは理解できるが、具体的な事業がなにかという店を、整理してもらえますか。
滋賀県: 整理します。
この点は私も準備書面で問題としているのですが、県がいう「事務事業への支障」というのが曖昧すぎるため、条例の条文に該当すると考えるのは無理があるのではと裁判官は考えているものと思われます。
情報公開条例の上で「事務事業への支障」が生ずる情報というのは、典型的なものでは「実施前の試験の問題」が挙げられます。試験の問題の内容が事前に明らかになってしまえば、当然のことながら試験ができなくなってしまいます。ここでいう事務事業は「試験」、支障というのは「事前に問題が分かると試験の結果が意味をなさなくなってしまう」ということなので、具体的で明快です。
しかし、事務事業が「啓発」、支障が「県民からの信頼が失われる」というのは具体的ではありません。例えば「身元調査お断り」だけが啓発ではありません。学校で「立場宣言」をやって「部落民としての自覚を持ち、それを誇れる社会を作る」という啓発のやり方もあるかも知れません。であれば、同和地区名が公開されても啓発はできるわけです。また、「県民からの信頼が失われる」ということが事務事業への支障と言えるのであれば、後ろ暗い公金の使途が書かれた書類を公開して県民からの信頼を失うことも「事務事業への支障」ということになってしまうでしょう。しかし、それは明らかに情報公開条例の趣旨に反します。
次回までに県は上記の点についてさらに説明をし、私は「緑色の同和地区の境界線」についての県の主張に反論する書面を提出することとなりました。
次回期日は9月22日、13:30です。