1996年に、保護者向けの研修で配布された冊子です。子供への説明に使うことを意識してか、絵本のような内容になっています。
(表紙)
も・っ・と・す・て・き・に・な・る・た・め・に
かげがえのないあなたへ
(見開き1)
三月三日
三月三日はひな祭りです。
ひな段には十二単の
お内裏さま
三人官女や
五人ばやしをしたがえて…
でも、私は
一番下で素足の
お供の人形が好きです
三月三日はみみの日です
私のお友達は
手でお話をします
いつもニコニコ笑って
たのしそうに…
でも、時々
お友達が少なくて
淋しいと言ってます
私は、今
遠い遠い日
大正十一年三月三日を
偲んでいます
全国「水平社」創立の日を…
連作一九九一年 くらしの中で より
西村 まさ子
(見開き2)
– 省略 –
(身分制度により被差別部落がつくられたこと、明治以降も続いた差別、全国水平社の設立など)
(見開き3)
これでいいのかな……
「君!めくら判をおしちゃだめじゃないか。」
・・・・・
「会議に参加したが、つんぼ桟敷におかれてしまった。」
・・・・
「…舌足らずでしたが、ご挨拶にかえさせていただきます。」
・・・・
「男性ばかりに目を向けるのは片手落ちではないか。」
これらのことばは、よくないことを身体の障害を例にして説明しています。このことばには、だれもがもっている人間の尊厳をおかしているものの見方・考え方が反映されています。身体の障害にばかり目を向け、人間を見ようとしない姿が感じられます。
これでいいのでしょうか……。
私たちは、身体の障害や性のちがい、民族のちがいなどを理由に偏った見方をしたり、身のまわりにある迷信や誤ったいい伝えなど、根拠のない考え方をもとに生活したりしてはいないでしょうか。
これらを何の疑いもなしに受け入れて暮らしていくことは、結果として多くの人を苦しめ傷つけてしまい、さらには、自らの生き方をせばめてしまうことにつながります。
お互いのちがいを認め合い、共に生きていくことが大切ではないでしょうか。
(見開き4)
水平の心
-省略-
(水平社宣言の起草者、西光万吉が全国水平社創立大会への参加を呼びかけた文章)
(見開き5)
お地蔵様
-本文省略-
(奥田昭美の詩)
千代川の河口の近くに、小さなお堂が建っています。中には石造りの大きなお地蔵様が、左右にも小さなお地蔵様がたっています。人々はこの大きなお地蔵様を「首切り地蔵」とも「見殺し地蔵」とも呼び、花を供え線香をたてて供養しています。
昔、千代川の河口一帯は竹ざおにおおわれ、所々に古い松がありました。そのわずかな広場を鳥取藩は罪人の処刑地に定めました。数多くの罪人が命を失いました。中には、武士に反抗したとして処刑された人もいました。
いつのころからか、お地蔵様はたっていました。悲しみ泣き叫びながら助けを求める人々を、お地蔵様はどんな想いで見ていたのでしょうか。
見ていたのはそれだけではありません。お地蔵様は処刑の役目を押しつけられた人々の悲しみや怒り、役目を果たせば果たすほど人々からのけ者にされ差別されていく姿も見ていました。村人たちが処刑された人々のことを想い涙を流したことも、役目のつらさに涙したのも知っていました。
昭和の初期、千代川の改修工事が始まり、お地蔵様も移転しました。被差別部落の人たちは今でも先祖の心を想い、お地蔵様を温かく村に迎え、供養をつづけています。
(見開き6)
百聞は一見にしかず
「向かいのお家は、りっぱですねぇ。そこに住んでいる息子さんは、どんな人ですか。」
「いい人ですよ。」…
(そういえば、お兄さんのことを尋ねたのかしら、弟さんの方だったかしら)
知りたいですね。でも、あてにならない話を何百回聞くよりも、自分で会って確かめた方が…
百の思いより一つの行動を
電車の中で、立っているおばあちゃんに
席を譲りたいんだけど、
大勢の人が見ているから、目立っちゃうな、
恥ずかしいな、どうしようかな。
というわけで、そこがつらいところ。
ほんとうは、人間ってみんな、
やさしい気持ちでいっぱいなのになぁ…
(見開き7)
ちりも積もれば山となる
「ささいなことだから…」
「たいしたことではないから…」
「私だけでは…」
と、考えてがまんしたり、うやむやにしたりしていることはありませんか。
大きな川もひとしずくからって言うじゃないですか。
うそも積もれば本当に…
「ヨーイ 始め!」
「ヒソヒソ ヒソヒソ…」
耳うちをして話を伝える伝言遊びは、途中で話が変わっておもしろいですね。
でも、遊びの中だけにしてほしいものです。
(裏表紙)
人権尊重宣言都市
鳥取市・鳥取市教育委員会