同和問題研修に積極的に取り組んでいる事業所の一例

鳥取県内の同企連企業では社員向けの同和問題研修が行われます。特に、四社懇企業のように、非常に熱心な企業というのも存在します。
私の手元に「同和問題・人権問題研修資料-事業所における同和問題・人権問題の取り組み方-」(平成12年5月/鳥取県)という資料があります。その中に、同和問題研修に積極的に取り組んでいる事業所の「好事例」として2つの例が掲載されていました。
以下、1つめの企業の研修の中身を紹介します。

①新入社員研修会…合宿研修(社内・社外講師による公園 意識調査 2時間程度 1回/年)
②全従業員研修会…各部会単位(ビデオ・グループ討議・ワークショップ・社内・社外講師による講演1.5~2時間程度 2回/年)
従来の研修では、ビデオ、講演の後、感想あるいはアンケート調査により社員の意識の状況を把握していましたが、一方通行に終わりやすく、また、内容においても消化不良のままで終わってしまう懸念もあり、座談会形式の場を設定し、部落差別事象や啓発映画を教材として「常日頃から疑問に思っていること」、「同和問題に対する考え方」、「差別をなくすため自分としていかに行動するか」等につき、皆が自分の意見を発表し、グループ討議を行い、討議結果の発表、意見交換の後、社内講師による指導・助言を受ける相互研修方式をとり入れています。また昨年は、ワークショップも体験し自分にできる周囲への働きかけを認識することも行っています。
③ 役職員研修会…全役職員(主任・係長・課長・部長・グループ討議・社内講師による講演2時間程度 2回/年)
全従業員研修のグループ討議においてまとめ役をするための事前研修として実施。
④ 幹部研修会・協力会社幹部研修会…労使幹部、協力会社幹部(社外講師による講演 2時間程度 1回/年)
同和問題解決の中心的課題である就職の機会均等を柱に、講義方式と相互研修方式にて研修を進めています。

この企業がここまで熱心に同和研修に取り組むきっかけは、関連会社が「部落地名総鑑」を購入していたことに端を発します。徹底した同和研修は現在も続いており、2005年度も同様の活動を行っています。講演については、社内の講師によるもの、解放同盟によるもの、その他の学識経験者によるものと3パターンあり、その比率はおおよそ同じくらいです。気になる講師への謝礼については、同企連の活動の一環ということもあり、支払ってはいないということでした。関係者曰く、「ぶっちゃけた話、いくら払おうといった提案をしても、先方が必要ないというので菓子箱程度で済ます」ということです。

2005年度同和教育推進体制
この企業の2005年度同和教育推進体制

研修以外の活動では、ヒューマンライツ等の書籍を1冊づつ購入している他、「人権標語募集」というのがあります。これは「全社員その家族からも募集、入選者は人権週間に表彰、入選作品は各職場朝礼にて1ヶ月間唱和」するというものです。2004年の応募点数は523点で、社員の参加率は100%です。ちなみに、朝礼で唱和された優秀作品は以下の通りです。
・「差別の芽 見抜く心と摘み取る勇気」
・「差別だと気づく知識と言う勇気 誰かが待ってる あなたのひとこと」
・「摘みとろう 心に芽生えた差別の芽 咲かせよう やさしい心で人権の花」
・「ゲームのようにリセットできない心の痛み 意識を高める人権学習」
・「見つけよう 私の中の差別の芽 広げよう全ての人に人権意識」
ここまですると同和地区出身者の社員はかえって「引く」のではないかと思いますが、2つめの事業所はさらに上をいっていました。その詳細は、近日報告します。

悪意のない発言でも差別者にされる

全国的にもそうですが、鳥取県でも部落問題はあまり大っぴらに語られることではありません。その理由として、「部落問題に下手に関わると差別者に仕立て上げられる」ということがあります。これはある意味事実です。
2003年4月1日の「市報くらよし」(倉吉市広報)の「糾弾会で思ったこと」という記事に興味深い記述がありました。以下、引用します。

部落差別は時には命を奪う。意図的に差別の型を使うことが許されないのは言うまでもありません。一方、差別の意図もなく、また直接「部落」の人を対象にしたわけでもなく使ってしまった場合(例えば遊び感覚)はどうでしょうか?この場合「悪気はなかったんだから…」あるいは「誰も傷ついていないんだし…」といった考え方ができるかも知れません。しかし、この考え方では見失われてしまうものが二つあります。それは差別を広める作用、もう一つは差別をなくしたいという願い。意図がないから差別に当たらないとはなりません。

刑法の侮辱罪や名誉毀損罪には過失犯は当てはまらないので、悪気がない人を罰することはできません。また、親告罪なので誰も傷ついていない場合は事件として成立しません。なので、完全に法を逸脱した考えです。
また、「差別をなくしたいという願い」が欠けていると差別に当たるようです。「差別を広める作用」については、次回で取り上げます。
そして、記事はさらにこう続きます。

私は「部落」に生まれたわけではありません。だから「部落に生まれた者の気持ちがわかるか」と問われれば、究極のところ「わからない」としか答えられません。「自分が言われてイヤなことは他人にも言わない」が当てはまらないのです。

これはある意味殺し文句です。
ただ、これは強調しておきたいことですが、私の実感として部落に生まれたかどうかで意識が大きく違うということはありません。同じ人間なのだから当然のことです。つまらないことで「差別だ」と言いがかりをつける人はごく一部で、大部分はそういう人を「頭のおかしい人」と見なしているのが実際のところです(と、私は思います)。
さて、それでは悪意なく発言したことで差別者に仕立て上げられてしまった事例というのはあるのでしょうか?次回は平成12年5月に鳥取県が出した文書に書かれた事例を紹介します。

「なぜ、部落差別だけを大きく取り上げるのか」は差別的な意見?

以下は平成11年8月6日に東郷町(現 湯梨浜町)公民館で行われた社会同和教育熟年指導者養成講座の資料です。

この講座のねらい
同和問題を学習する手法に参加型学習を取り入れ習得し、地域で実践しながら個々の体験を発言できる力を要請することをねらいに企画しました。また、自分自身が高齢者だという気持ちを持つ方はほとんどいらっしゃいませんでしたが、同和問題の関連を意識するために「高齢者問題と同和問題」の分科会も設定しました。
ア 講座と演習「これからの啓発に求められる手法―参加型学習―」
講師 鳥取県人権文化センター専任研究員 ■■■■ さん
○講演
(1)人権文化を育むために
 ①人権文化の社会とは、人権意識、人権感覚にあふれた人々で、地域が満たされ、人権を尊重する心や態度が日常生活の隅々まで行き渡るような社会
 ②人権文化をはぐくむための2つのアプローチ
  ・人権の視点から新しい価値観の創造=「差別の文化」を弱める
  ・人権のための新しい社会的ネットワークを育てる
(2)体験的参加学習を活用した人権学習
 ①体験的参加型学習は、学習者が主人公となる学習
 ②めざすもの
  ・人権のための基本的技能習得訓練の場
  ・鋭い人権感覚を養う「気づき」の場
  ・人権文化の町づくりへの参画、行動へ
○演習
(1)アイスブレイキング
  輪になって座る―→人権肩たたき、4つのコーナー、ふりかえり、自己紹介ゲーム、グループ分け
(2)文章完成法、フォトランゲージ
イ 分科会
第1分科会
演習「参加型で学ぶ同和教育」
地域でよく聞かれる差別的な意見にどう答えるかグループごとに討議していただきました。
討議の一例
テーマ「なぜ、部落差別だけを大きく取り上げるのか」
原因・背景
 ねたみ意識……同和対策事業に対する地区外のねたみを取り除く心情的な教育は不足していた。
 おしつけの同和教育……受身の学習で、自分の問題としてとらえられていなかった。
 学習会のマンネリ化……もういい
 長期的なものとして、条例を具体化する。
対策
 心の壁を取り除く……参加型学習
 「部落差別・同和問題」と他の差別とのちがいを明らかにする。
 同和問題を核として、自分とのかかわりにつなげる。
ウ 第2分科会
講演「高齢者問題と同和教育」
鳥取県社会同和教育指導委員■■■さん
意識調査結果を分析したところ、人権意識の低さ・差別の自由がありすぎる今の県民意識の現状が分かったそうです。高齢者の人権の現状と課題・「国際障害者年は地域のあり方についてのすべての住民参加による議論から構成されることを求めていること」など国際高齢者年の趣旨について教えていただきました。人権問題を自分自身の問題とするためには生命の感受性を大切にしていくことが大切になってくるということを御自身の体験も交えながら話していただきました。
(4)受講生の声
ア 今日、私がうれしかったのは……?
 ・体験的参加学習とは、その意義とはという疑問をもってきたが、少し理解できたように思ったこと。
 ・志を同じくする方と話せ、誰も苦労なさっていることがわかったこと。
 ・午後の講演が素晴らしかった。特に水平者宣言の1節についてと先生の人間としての生き方・考え方に共鳴しました。
 ・参加型学習によって受身ではなく少しでも仲間(グループ)のなかで自分の思いが言えたこと。
イ これから私が実行しようと決めたことは……?
 ・差別への気づき
 ・自分の中に気づかない固定観念がここまであったことに気づいた
 ・本気で学習する気になった。
 ・小地域懇談会・座談会で参加型学習をしていきたい。
 ・多くの人間と触れ合って、人間らしく生きる姿勢を共に探っていきたい。
ウ 気づいたこと・考えたこと。書いておきたいこと
 ・人に学ぶことが多いこと、大切なことに気づきました。
 ・同じ熟年といっても直接同和教育に携わっていない人もたくさんある。基本的な考え方にも大きな違いがある。このような集団でいずれも和気あいあいと話していく中で自分の意識を変えていく場にしたい。
 ・固定観念(思い込み)の払拭を取り上げることが部落差別を考える一方法であり―→自分との関係として考えられる。
 ・①心の壁を取り除くこと②テーマに迫る③ふりかえるというプログラムを考えることが大切であると思った。
 ・国際的にも同和問題の現実を深めながら行動していきたいと思います。
 ・固定観念による偏見の打破をしていきたい。
(5)まとめ
この研修に参加して、面識もない他市町村の方と知り合いになり気分がほぐれてよかったです。
参加型学習の手法を学習させていただき、その要領がわかりはじめました。講演もよいですが、受講生が相互の幅広い経験を出し合えるこの手法は素晴らしいと思いました。今後、自分の地域でも取り入れていきたいと思います。
国内はもちろん国際的な幅広い内容も視野に入れた内容に触れることができました。自分自身を含めて多くの人は、固定観念・偏見をもっています。柔軟な考えをし、間違った観念を打破していきたいです。自分の価値基準を見直す作業が苦痛ではありませんでした。他人の心の痛みがわかるような自分でありたいと思いました。

「地区進出学習会」の実態とは

鳥取県では「地区進出学習会」(学習会)が行われる地域があります。学習会は、かつては同和地区が経済的に低位にあったことに由来する学力の格差を解消するため、学力保障のために始められたものです。もちろん、参加するのは同和地区の子供達です。
学習会は校区に同和地区を有するいわゆる「有地区校」で行われるわけですが、全ての有地区校で行われているわけではなく、地域により取組みに差があります。
以前、智頭町の砂丘1号さんからこのようなコメントを頂きました。

もちろん学習会はありました。内容は確か国語と算数のドリルだったと記憶してます。
私は関西から転入してきた(父親の実家が智頭町)ので、学習塾の感覚で参加してたのですが実際は全く違いましたねえ(笑)
高学年になるとだんだん同和色が強くなっていき参加するのも嫌になってきましたが先生に叱られるのでしぶしぶ…

少なくとも1990年代、いくつかの地域の学習会の実態はおおよそこのようなものです。子供の頃鳥取市で学習会に参加した方からお話を聞くことができました。

― 学習会への参加は強制だったのか?
「ああ、強制強制。」
― 学習の内容は?
「国語や算数とかもやったけれど、児童館に行って、部落差別の学習をしたりとか、ここまでが地区で、ここからが境界だというようなことを教えられた。」
― 立場宣言は?
「それも強制。あの時は泣きそうだったし、泣いている人もいた。」
― それは毎年のことだったのか?
「兄弟もやったし、毎年やってたんだろう。」
― 後でわだかまりはなかったのか?
「そういうことがあって中学生くらいの頃まではずっと後ろめたい気分でいた。だけど、地区外の友達はずっと普通に付き合ってくれている。結婚だとか、職場でのけ者にされたりとか差別はあるけれども、一方で地区の方から壁を作っているというのはあると思う。」

地区学習会の内容は地域差はありますが、普通の教科が3分の1で、残りが部落問題学習というのがおおよその実態でした。それも、低学年はほとんどが普通の教科で、高学年になればほとんどが部落問題学習となります。その内容は、部落差別や解放運動の歴史、狭山闘争に関することも含みます。
地域によっては、かなり低学年からも人権や部落問題学習が行われいたようです。以下は1993年の文集から引用したもので、船岡町(現在は合併により八頭町となっている)の小学1年女子児童の作文です。

 わたしは、がくしゅうかいを見て、みんな
ががんばっているなあとおもいました。へや
の中は、すごくしずかで、びっくりてしま
いました。みんなががんばっていたから、
わたしもやりたくなりました。
 なぜ、がくしゅうかいをするのか、おしえ
てくれました。がくしゅうかいでは人をた
いせつにするべんきょうをしているのだそう
です。
 とても、たいせつなべんきょうだとおもい
まる。わたしも、しっかりべんきょうしたい
です。

以下は同じ文集の男子児童の作文です。地名は伏せてあります。具体的に自分の部落が被差別部落であるということを早くから教えていることが分かります。

 昔の、■■■■の人はそんなにいじめられたとは
しりませんでした、
 今は、みんながあんまりいじめなくなったので昔と
今をくらべたら平和です。みんな■■の人たちと仲良
くなっています。今はそのぶらくも仲よくしていま
す。
 ぼくは同じ船岡町の■■■■なのになんで、そん
なことをいうんだろうと思いました。

現在では、こういった学習会への参加を拒否する保護者も出始め、以前のように全員が強制参加という状態ではなくなってきているという声が聞かれます。

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差別事象を隠蔽した人も差別者?

平成12年3月、鳥取県教育委員会から部落解放同盟鳥取県連の杉根修委員長(当時)に宛てられた「学校における差別事象に係る鳥取県教育委員会の見解について」という文書に次の記述があります。

平成10年度以降、中学校や高等学校で、「賤称語」等を使用した差別事象が多発しています。これらの事象は、同和問題学習や部落史学習の中で学んだ「賤称語」や「被差別部落」という言葉を、その言葉の持つ重みを十分に認識せず、自分たちの生活や遊びの中で、安易に発言したり、人を見下したりするために使用するといった差別事象です。

想像に難くないことですが、鳥取県の特に教育関係者は「エタ・ヒニン」という言葉に異常なまでに敏感です。一方で、「エタ・ヒニン」という言葉は授業の中で、非常に詳しく教えられます。鳥取の同和教育の特殊性はここにあります。例えば、「気違い」という言葉の意味を学校で詳しく教えられて、「気違い」と言うと激しく非難される状況を想像してみてください。ちなみに、私が高校の頃は「チョン校」という言葉も習いました。
そういった言葉を使えば全校集会など、重大な事態になる、ということは児童生徒の間でもよく知られていました。もちろん、いい加減に対処すると教師もただでは済みません。
実は、この文書は「鳥取の部落史第4号」に掲載されていたものです。この冊子には差別事件を「隠蔽工作」した校長先生が糾弾された例が書かれています。

小学校で発覚した三件の事象のうち、倉吉市小鴨小学校の児童による差別発言事件意外は、外部の大人による犯行の可能性が強い。このうち西郷小学校の事件では、校長が事件を隠蔽したと言う意味で重大な問題を含んでいる。この事件ではせっかく児童が発見し、学校に届けたにもかかわらず、校長は事件を隠蔽する工作を行っており、二〇〇二年八月二〇日に開催された「差別事件並びに人権・同和教育推進確立集会」(以下「集会」と略す)では、参加者から集中的な抗議の的になった。

この一件のあらましは次の通りです。

児童が「えたの○○○○かたわの○○○おまえらがおるから世の中が乱れる だまっとけ」と書かれた紙を拾った。この紙を児童は教頭へ渡した。教頭は校長へ渡したが、校長はこれを隠蔽してしまった。公民館に投げ込まれた同様の差別投書について学習しているとき、児童Aが「同じものを見た。教頭先生に持っていった。」と発言したことで、学校にも差別投書があったことが判明した。

小学校で公民館の差別投書について学習するというのもなかなか凄いですが、実はこれは鳥取県同和対策課・人権同和教育課(現在は人権局)が作成した文書の一部です。この件で「差別した者等」は「西郷小学校校長」となっています。
なぜここまで差別事象について激烈な対応をするのか?それはやはり、「部落解放同盟との緊密な連携」が関係しています。
最近鳥取県のホームーページに「差別落書き対応要領」というものが掲載されており、それには「当該市町村内の部落解放同盟市町村協議会へ現場確認の立会を依頼すること。」という記述があります。これは強制ではないはずですが、対応を怠ればこれまで述べたとおり糾弾という「罰則」があり得るので、事実上の強制と言えます。

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意識調査に意味はあるか

以前紹介した智頭町広報には、次の記述がありました。

では、自分や自分の家族が差別を受けたり差別をした経験についてはどうかというと、どの年代も半数近くの人が差別をしたことも受けたこともないと回答しているのです。現存する差別の実態に気づかない、或いは見ようとしない私たちの姿がここに現れています。

智頭町が独自に行った意識調査で、差別をしたり差別をしたこともないという結果が多かったことについて、差別を見ようとしないと評しています。
一方、2004年7月1日の鳥取市の広報では県が行った意識調査について、次のような記述があります。

平成十二年七月に鳥取県が行った県民意識調査(右下図参照)に次のような集計結果が出ています。
「今の時代、部落差別はもはや存在するはずがない」という質問に対して、「そう思う」(部落差別は存在していない)と回答した人は約二十五パーセント、「そうは思わない」約四十二パーセント、「どちらとも言えない」約三十一パーセントとなっています。その内「そうは思わない」「どちらとも言えない」と回答した人を対象に、「世間の人々は、口先でいいことを言っても、腹のそこでは差別している」という質問をしたところ、「そう思う」と回答した人が約五十一%もいました。この回答結果からも、部落差別が今なお、根強く残っていることが伺えます。

鳥取市では差別があるという答えが多いので差別が根強く残っていると評しています。しかし、智頭町では差別をされたこともしたこともないという答えが多いので、町民は差別の現実を見なていないという結論が出されています。そして、それは教育や啓発が必要であるという根拠となります。

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鳥取市同企連補助事業等実績報告書

鳥取市同企連補助事業等実績報告書

画像は鳥取市同企連の2004年の補助事業等実績報告書です。開示された文書の全体はこちらのPDFファイルをご覧ください。
まず、注目されるのはその所在地です。住所は尚徳町116となっていますが、これは鳥取市役所の住所です。以前、鳥取市同企連の窓口は市役所の人権推進課であることを指摘しましたが、これはそのことを裏付けるものです。
収入総額375万3232円のうち、財源は会員企業の会費と市の補助金がほぼ半々となっています。
そして、支出の大部分を占めるのは研修会や啓発活動の費用です。この文書の開示を市に請求した方は、支出のさらなる内訳を知るために証憑書類も同時に請求しましたが、これらの書類は「鳥取市同和問題企業連絡会が保有しており、鳥取市は保有していないため。」という理由で不開示となりました(現在異議申し立てをしているということです)。
その活動内容の多くは部落解放同盟やその関連団体の関係者による講演です。男女共同参画やハンセン病問題に関するものもあります。幹事会や研修会の議題として「新入社員研修における『差別感想文事件』の取組みについて」「『差別糾弾会』の異議について」といった記述も見られます。
人権救済条例や法案に関する活動では、「部落解放・人権政策確立要求鳥取市実行委員会総会(ちなみに、これにはまた別に市から補助金が交付されています)」「人権侵害救済法の制定をめざす企業集会(出席者は鳥銀担当者となっています)」があります。

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倉吉で行われた同和教育と立場宣言

同和教育年間指導計画

倉吉市にお住まいの方から、倉吉市教育委員会の「小学校・中学校 同和教育年間指導計画」(1999年3月)を入手しました。この冊子には、教材名を挙げながら指導の内容が事細かに書かれています。その内容は、おおよそ鳥取県の作成した「人権・同和教育の指導のあり方」を具体化したものです(時期的には倉吉市の指導書が古いので、以前の記事で採り上げた県の指導書を受けて作られたわけではありません)。

その中の「学年目標」の部分を抜き出してみます。

小学校
1学年 身のまわりの差別にきづき、みんなでなかよくしようとする。
2学年 身のまわりの差別を解消していきながら、くらしの中の差別に気づくようにする。
3学年 くらしの中の偏見や差別に気づきそれをみんなでなくそうとする。
4学年 暮らしの中の偏見や差別をなくそうとし、さらに部落差別に気づくようにする。
5学年 部落差別に気づき、被差別部落に対する偏見や差別を許さない心情を高め、社会にある不合理や矛盾、差別をみんなで解決していこうとする。
6学年 部落差別の不当さを理解し、基本的人権を尊重するとともに、あらゆる差別をなくするための行動力を身につける。
1学年 人権の大切さを正しくとらえ、部落差別や不合理・偏見などを自らの問題として解消しようとするとともに、差別を許さない仲間づくりをする。
2学年 部落問題やその他の人権にかかわる問題の歴史的背景や解放への歩みを正しく理解し、連帯して社会の矛盾を解消しようとする。
3学年 部落問題やその他の差別問題の本質を正しく理解し、その解放運動から人間としての行き方を学ぶとともに、自らが差別解消に向けて行動する。

やはり、身のまわりの差別に気づかせる指導をしています。言い換えれば、差別が存在することを前提とした指導です。そして、その差別の具体例として部落差別が重要視されているのが分かります。

そして、倉吉市でも「立場宣言」が行われています。その核心となる記述が「部落問題に関する学習」の「6学年 ねらいと学習内容」の部分です。

教材領域 道徳 学活
題材 今こそ自分が 地区進出学習会で学ぶ仲間たち
ねらい 自らの社会的立場の自覚を深めるとともに、部落差別解消に向けて、自分がどのようにかかわっていけばよいのか考える。 地区進出学習会のねらいや学習内容を正しく理解するとともに、部落差別解消のため行動しようとする態度を育てる。
学習内容 ○主人公の小学校時代の差別性をとらえる。
○村にあった部落差別の実態を考えさせるとともに、部落差別解消に向かって立ち上がっていた主人公の心情をとらえる。
○課題解決に向かって行動する主人公のすばらしさに学ぶ。
○地区進出学習会について知っていること、疑問に思っていることを話し合う。
○ビデオ視聴をし、感想を出し合う。
○地区進出学習会がなぜ今もあるのかを考え、差別をなくしていく仲間として自分は何ができるのか考える。
資料 倉吉市同和教育教材1 倉吉市同和教育ビデオ教材

これは、道徳の時間に同和地区の子供たちが「立場宣言」を行い、その後のホームルームで「地区進出学習会」についてビデオを見せて感想を書かせる、といような段取りになると思われます。

なぜこの指導が立場宣言を意味するのかと言えば、地区進出学習会(学習会)は同和地区の子供だけが受けているものであるからです(学習会と言ってもピンと来ない方は、学習塾のようなものを想像してください。元々は、同和地区の子供たちにたいする学力保障として始められたものです)。いわゆる有地区校(校区内に同和地区がある学校のことをこう呼びます)で、立場宣言を行わずに学習会についての指導をすることは考えられません。なぜなら、一部の子供たちが学習会に通っていることは誰でも知っているためです。同和教育の時間に学習会を採り上げれば、その子供たちに共通することは「部落出身である」ということが必ず明らかになります。

この指導書は1999年のものですが、倉吉の一部有地区校における立場宣言は現在でも行われていることが確認されています。最後に、倉吉市教委の現在の(非公式)見解を載せておきます。

各小・中学校で取り組まれている『自らの社会的立場の自覚を深める学習』について

自分のくらしやそれを取り巻く社会の中にある部落差別をはじめ、さまざまな差別の問題やそれを取り巻く社会の仕組みを見据え、「自分の生き方」や「差別を解消するための社会的役割」を自覚していく学習です。

このことを通して、自分と向き合い、社会的に自立し、主体的な生き方を求め、仲間を広げていく力を子ども達に育んでいくことをねらいとしています。

特に同和地区児童生徒におきましては、保護者や各人権文化センター等の関係機関等の理解と協力を得ながら、地区進出学習会や家庭での親子の話し合い等を通して、自分の街や村の調査活動を行ったり、親の被差別体験や先人の生き方に学び、自分と部落差別との関わりを考える取組みを行います。そのなかで、決して差別に屈することなく、勇敢に差別に立ち向かっていった先人や自分の家族に自身や誇りを持つと共に、自らも主体的に部落差別を解消しようとする社会的立場の自覚を深めてまいりました。

一方、地区外児童生徒におきましても、自らと部落差別との関わりを考える中で、一人ひとりが部落差別をなくすることを自分の問題として捉えるようになってきました。また、このような取組みを行う中で、それぞれが持つ心の悩み、葛藤やわだかまりにも目を向けるようになり、再度自分自身を見つめ直すことでそれらを乗り越えることができるようになってきました。このように、真に一人一人の意識に迫る手法を当して、子供達に人間性、社会性を身につけさせる取り組みを行っているところであります。

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結婚に反対するのは年寄りではない?

智頭町の広報誌、「広報ちづ」の2005年9月号に興味深い記述を見つけました。以下は、智頭町の「同和問題に関する町民意識調査」からの引用です。

「家族や親戚が被差別部落の人との結婚を望んだらどうしますか」との設問に対し、20歳~30歳では31%の人が「祝福して応援する」、42%超の人が「本人が決めること」との回答をしており、同和教育30余年の成果として受け止めることができます。
しかし内容をみますと「世間体があり賛成しかねる・反対する」が60歳以上で8%余に対し、20歳~39歳が19%近い数字に驚きました。

実は、智頭町の調査では、同和地区住民との結婚に関して若年層ほど肯定的な回答が多い反面、否定的な回答をするのも若年層が多いということが分かっています。
人権啓発映画や同和教育の教材でありがちなパターンと言えば、若い二人の結婚を年寄りが妨害するということですが、現実は必ずしもそうではないようです。
これは2005年の智頭町の調査でしたが、1999年の溝口町(現伯耆町)のデータを入手できました。こちらでも、智頭町と同様の傾向が見られます。
「あなたのお子さん、又は家族が結婚されるとき、相手の人が同和地区出身であるとわかった場合、どうされますか」という設問に対して、「本人の意見を尊重し、結婚を祝福する」という肯定的な回答が最も多いのは15~19歳で86.5%です。逆に最も少ないのは70歳以上で28.2%です。しかし、「その結婚に反対する」という否定的な回答が最も多いのは30~39歳で19%です。それに対して、70歳以上では14.1%、60~69歳では9.5%となっており、必ずしも「年寄りが差別する」とは言えません。ただし、「特に反対派しないが、困ったことだと思う」という微妙な回答は70歳以上に最も多く、38%です。この回答は30~39歳では15.5%となっています。
県全体ではどうでしょうか?手元に2000年の「同和問題についての県民意識調査」がありますが、これには同様の質問がありません。代わりに「あなたは、現在、同和地区が県全体からみて、どのよおうな状況にあると思いますか(結婚)」という部分のデータを見ると、「同和地区出身であることが不利な条件になっていると思う。」が最も多いのが35~39歳で61.5%です。「もはや不利な条件になっていないと思う」が最も多いのは70~74歳で35.5%です。自分で「結婚に反対する」と言っておきながら「同和地区出身は結婚に不利な条件ではない」と答えることは考えられないので、智頭町や溝口町と同様の傾向があることが示唆されています。

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鳥取県教委と部落解放同盟との「緊密な連携」

1970年代後半は、同和教育が学校だけでなく家庭や地域にも入り込むようになった時期でもありました。
その背景をうかがわせる記述が「同和教育実践事例集」(昭和55年3月)にあります。

(昭和)51年、52年頃は、ロングホームルームにおける同和問題についての討議にはたびたび同和奨学金制度に関する問題の質問(「あなた達部落の生徒より貧しい地区外の生徒もたくさんいるのに、なぜあなた達に限って同和奨学金がもらえるのか」等)が出され、さらに発展して特別措置法による各種補助金、優遇措置から土地改良の負担金に至るまで親からの聞きかじりが飛び出す有様で、同和奨学生は勿論、指導者の担任教師自身が即答に困るという状況もあり、同和研の会員を中心として同和奨学生の融資がこれらの疑問に正面から取組み、校内討論会を開いて問題解決に当たり、同和奨学生全体が本気になって取り組んできた。このころから俗に言う逆差別論が台頭し、家庭からの影響が生徒に強く現れ、学校としても保護者の同和教育に対する協力を得ることを真剣に考えなければならなかった。
52年後半になると地区外生徒の理解も進み、奨学金制度についての疑問はルーム討議の中から姿を消していったが、今度は同和奨学生自身の無気力、無責任が目立ち始め、地区生徒が現状に甘える姿勢が問題となるようになった。

当時、「逆差別論」が出るのはそれなりの理由がありました。
同資料によるデータでは、昭和50年には経済的理由で学校を長期欠席する児童・生徒は地区内外ともほとんどいなくなっていました。また、中学校卒業者の高校への進学率は、昭和50年で地区内91.1%、94.0%と格差はほとんどなくなっています。これは、奨学金の効果がそれなりに出ているものと思われます。しかし、高校卒業者の大学への進学率は昭和49年で地区内15.7%、地区外35.9%、昭和54年で地区内16.4%、地区外38.8%と、格差が横ばい状態であり、奨学金が意味をなしているのか疑問を持たざるをえない状況でした。(註:大学進学率の格差が変わらない理由は諸説ありますが、私は地区内の産業構造が建設・製造業に偏っていることと、就職上の優遇措置のために大学進学の必要性が低いことが原因ではないかと思います。)
また、同和地区に対する優遇措置としては、当時以下の貸付制度がありました。
住宅新築資金貸付

  1. 年利2%
  2. 償還期間25年以内
  3. 貸付金額30万円以上500万円以下

宅地取得資金貸付

  1. 年利2%
  2. 償還期間25年以内
  3. 貸付金額30万円以上300万円以下

住宅改修資金貸付

  1. 年利2%
  2. 償還期間15年以内
  3. 貸付金額4万円以上250万円以下

また、2万円の就職支度金といった個人給付もありました(これは一部自治体では現在も継続されています)。こういった制度に対する批判も「家庭に対する同和教育」によって鳴りを潜めて行きました。
この時期、運動団体とは距離を置いていた県教委に対して、部落解放同盟の主張が公然と入り込むようになります。この「同和教育実践事例集」の編集委員には部落解放同盟鳥取県連書記長、前田俊政氏の名前があります。同じく1982年の指導書には当時の県連書記長の森下冷蔵氏の名前があります。
こういった解放同盟との関係は現在も続いているのでしょうか?5年前に鳥取県教委が作成した「同和教育事業概要」(平成12年度)に決定的な記述がありました。

同和教育事業概要
同和問題の根本的解決を図るため、同和地区住民の自発的意思に基づいて運動を進めている部落解放同盟と緊密な連携を保ちながら、同和教育の推進に努める。

この点について鳥取県教育委員会に問い合わせたところ、今現在の方針として、「鳥取県人権教育基本方針」(平成16年11月)の一文を紹介されました。

関係諸機関・諸団体等との緊密な連携に努めます。また、教育の主体性を維持し、教育活動と政治運動・社会運動との関係を明確に区別し、教育の中立性を確保しながら人権教育の取組を充実していきます。

一応「教育の中立性」を掲げているわけですが、この「鳥取県人権教育基本方針」自体が編集委員に部落解放同盟鳥取県連合会副委員長の中野俊夫氏が加わっており、在日本大韓民国民団鳥取県地方本部団長、在日本朝鮮人総聯合会鳥取県本部委員長も名前を連ねるなど、自己矛盾を含んでいます。

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