広島高裁松江支部の件、最高裁に上告

広島高裁松江支部が鳥取市下味野の同和減免関連文書について不開示とした件について上告および上告受理申立てをしました。

上告状兼上告受理申立書.pdf

上告は憲法違反や判決文に食い違いがあるということが条件になります。また、上告受理申立ては判例違反、法令の解釈に関する重要な事項があることが条件となります。今回の場合、以下の5つの点が問題になる可能性があると考えられます。

・鳥取市長が同和地区内で任意に設定できる同和減免の対象地域を非公開としたことが、租税の要件は法律で定めるとした憲法84条に違反しないか
・広島高裁松江支部が判決文で下味野の旧赤池集落が同和地区であるという事実を半ば認めつつ、「当該地区の居住者や出身者の権利利益を害する」とした判決自体が同和地区のみならず被差別地域の場所を明らかにしており自己矛盾ではないか(要は鳥取市長が同和地区の場所を公開するのはだめで、裁判所が憲法で公開とされている判決文で同和地区の場所を明らかにするという矛盾)
・同和減免の対象地域が「個人の権利利益を害するおそれがある」と認定するにあたっては「特定の地区を同和地区と把握していることを表明する」と断言する一方で、同じ同和対策事業である小集落築改良事業や同和集会所については「示唆する種々の事実」としか言わないのは二重基準ではないか
・鳥取市が「小集落築改良事業の対象地域は同和地区だから」という理由で存否応答拒否(グローマー拒否)したように、ある事業が同和対策事業であることを理由としてグローマー拒否することは、その事業の対象地域が同和地区であるという新たな情報を公開することであって、グローマ拒否の意味がないのではないか。もっと言えば事実上公になっている情報を隠そうとしているのでこのような無理が生じているのではないか。
・情報公開請求を拒否する一方で、それに係る個人情報開示請求も拒否するのは、情報公開制度と個人情報開示制度は互いに補完する関係にあると判断した最高裁判例(最高裁判所平成9年(行ツ)第21号平成13年12月18日第三小法廷判決)に反するのではないか。つまり広島高裁松江支部の判決によれば「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある」情報は情報公開制度と個人情報開示制度のどちらもカバーできない盲点となり、2つの制度により補完されない部分が生じることになる。

そして、まだ地裁で審理中の住民訴訟の件です。対象地域を秘密にしたまま、どうやって違法確認するのでしょうか。違法確認により明らかにされた地域の居住者や出身者は裁判所が認定する通り権利利益を害される人たちなのでしょうか。そして、いよいよ鳥取市固定資産税課の職員が下味野を1軒1軒回って税を徴収しなおすことになった場合に、地元の人にどう説明すればよいのでしょうか。

鳥取地裁 訴え変更申立書

鳥取地裁で同和減免の違法確認を求めている件で、本日付けで以下の書面を提出してみました。

訴え変更申立書.pdf

これは何かというと、今まではあくまで同和減免の違法確認だけを求めていたものですが、さらに減免された税を徴収し直すように求めるものです。

つまり「こういうわけで、減免した分をやはり支払って欲しい」と説明しながら、減免対象だった家を1軒1軒回って徴収して頂きたいということです。

広島高裁松江支部判決+鳥取地裁第4準備書面

鳥取市下味野の旧赤池部落の同和減免の関連文書の公開について争っていた件、広島高裁松江支部に控訴しましたが、10月9日付で判決が出ました。判決文はこちらです。

広島高裁判決-H25-10-9.pdf

結果は「棄却」つまりは非公開ということなのですが、いくつか認められた事実があります。

  • 美和小学校で下味野地区に同和地区が存在することを明らかにする指導が行われていたこと
  • 市報などに同和地区に関連して下味野という地名が出されていること
  • それらの結果、下味野地区に同和地区が存在するとの情報は鳥取市において相当程度流布されている

しかし、それでもなお鳥取市が同和地区の場所を公にしていたことにはならないそうです。ここまでくると、情報公開条例が慣行により公にしている情報であれば個人に関する情報でも公開するという規定は無意味なのではないかと思います。

そしてもう1点、これが最も重要なのですが、憲法84条が定める租税法律主義は、同和減免の対象地域外の住民に対象地域を明らかにすることを要請しているとは言えないと判断されています。とすると、田舎によくある過疎地減免のようなものも、対象地域を公示しなくてもよいということになります。もちろん、そんな事をしてしまえば、事情を知る一部の人だけが減免の恩恵に預かることが出来るということになるので、あり得ないことだと思いますが…

もちろん、上告して最高裁判例として確定させます。

一方、鳥取地裁で同和減免の違法確認を求めている件、裁判所がどうしても判決で下味野という名前を出したくないようで、なぜ請求対象を下味野に限定しているか説明して欲しいということなので、以下の準備書面を提出しました。

原告第4準備書面.pdf

以前説明した通り、地区を限定しているのは、そもそも住民監査請求で下味野地区に限定して税の徴収を求める請求をしているので、法律上その範囲を超える請求はできないということです。ということなので、原告の意思がどうであれ、法律上裁判所が違法確認をするためには、下味野という地区を特定しなけばなりません。

そもそもですが、裁判の公開は情報公開制度とは別個のもので、個人に関する情報は非公開というような情報公開制度の論理を裁判の手続きに持ち込んだら、裁判自体が成り立たなくなります。例えば、自治体が個人に対して不正な支出を行った場合に、「個人の権利利益に関わるから、裁判で個人を特定するな」という理屈は通らないでしょう。それなのに、単なる地域名にすぎない同和地区名に裁判所が反応するのは、いかに同和が特殊な扱いをされているかという証左でしょう。それでいて、国民に対して「差別をするな」と言って平等な扱いを求めるのはおかしなことです。

矛盾に矛盾を重ねるような状態になっていますが、今後収拾がつくのか注目されます。

10月は「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」啓発推進月間です

「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」啓発推進月間が始まりました。

啓発と言っても、何1つ正確な情報は伝えられないと思いますので、ここで事実を述べておきます。

「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」はザルです。その理由は次の通りです。

  • 個人の居住地や出身地の住所を調査することは禁止されていない。
  • 個人の親族等の関係者の居住地や出身地の住所を調査することは禁止されていない。
  • 過去に大阪府や大阪市やその関連団体が同和地区の場所を出版物で明らかにしている。
  • 個人が部落解放同盟・全国地域人権運動総連合・全日本同和会・自由同和会・部落解放同盟全国連合会・全国水平同盟等の同和団体に所属しているかどうかを調べることは禁止されていない。
  • 調査業を行っていない人は条例による規制対象ではない。

例えば、探偵や調査業者に「この人が同和地区出身者か調べて欲しい」というと断られてしまうので、とりあえず「同和」という言葉は終始使わずに「この人と、できれば親兄弟の現住所と過去の居住地の住所一覧が欲しい」と依頼します。

業者から報告を受け取ったら、自分で、図書館等で読むことができる以下の資料と照合します。

50年のあゆみ地区紹介.pdf

大阪の同和事業と解放運動.pdf

大阪府解放会館名簿.pdf

大阪市同和事業史

「自分で」行うのがポイントです。調査業者の仕事が終わった後に、勝手に調べるのであれば条例は関係ありません。

個人が部落差別を受ける要件は何なのか統一した見解というのはありませんが、とりあえず司法において高裁レベルでは、同和地区に居住していた人、同和地区の出身者(言い換えると過去に同和地区に居住した経歴がある人)が該当すると判断されているようです。