人権侵害投稿 閲覧可能状態に 県公式ツイッターサイト

日本海新聞に以下の記事が出ていました。

鳥取県の公式ツイッターポータルサイト「toritter(トリッター)」に人権侵害の書き込みがあることが、29日に県庁で開かれた差別事象検討小委員会(委員長・一盛真鳥取大学地域学部准教授)で取り上げられた。有識者委員がサイトの閉鎖を県に求めたが、この日は結論を持ち越した。情報交換の場として一定の利用もあり、県は難しい判断を迫られる。

続きはこちらで

私のことと思いますが、この件については鳥取県からも一切連絡はありませんし、日本海新聞からも取材を受けていません。なので、何が「人権侵害の書き込み」なのか分かりません。

同和問題に絡んで特定の個人名を挙げて差別的な発言をしたり、別の差別的なサイトへ誘導したりする投稿で、ごく少数の投稿者が投稿している。ハッシュタグさえ付ければ自動的に投稿が表示され、県が削除できない仕組みのため、検索すれば問題の投稿が2~3週間は閲覧できる状態になってしまう。

 委員会では、問題の書き込みに対し弁護士の吉岡伸幸委員が「刑事でも民事でも名誉毀損(きそん)で裁判できるレベル」と指摘。県ケータイインターネット教育推進員の今度珠美委員も「人権侵害の落書きがあれば問題になるのに、個人名が出るような状態は放置するのか」などとして、サイトの閉鎖を提案した。

「個人名を挙げて差別的な発言」が何なのかということも、「差別的なサイト」のどこが差別的なのかも分かりません。これでは新聞の読者も何のことか分からないだろうし、どうして「鳥取ループ」とはっきり言わないのかと思います。5W1Hを押さえていない、よくない記事の例です。

本当に吉岡伸幸氏が「刑事でも民事でも名誉毀損(きそん)で裁判できるレベル」と指摘したのかどうか分かりませんが、要は私のサイトの内容について反論したくないから、日本海新聞を使って脅しをかけたつもりなんだな、としか取れません。

私はいかに鳥取県の同和行政と、同和問題についての啓発が矛盾しているかということを、証拠と根拠を示しつつ淡々と指摘してきました。例えば同和地区の場所を調べるなと言っているのに、行政が隣保館や地区会館の場所として同和地区の場所を事実上公開しているということ。過去の学校教育との整合性の問題伏せ字の解放令なんかもそうです。

おかしい事をおかしいと言っているのに、問題に向き合わずに、他人を黙らせることばかりをして、矛盾に矛盾を積み重ねているから、いつまでたっても同和問題を解決できないのです。そのことを実証することが名誉毀損だとか差別だというのであれば、どうぞ刑事でも民事でも裁判してくださいとしか言い様がありません。私も出版人である以上「思想犯」になる覚悟は出来ていますので。

東京地裁第1回口頭弁論

人権侵犯事件の証拠開示と人権侵犯事実不存在の決定を求めて国を提訴した件、前回は期日を忘れて欠席してしまいましたが、今回は本当に初回口頭弁論です。

まず、型どおりに双方が書面の通り陳述。実は「人権侵犯事実不存在」の決定の求めは取り下げて、証拠の開示だけに絞るように請求を変更しました。理由は訴訟の手数料が余計にかかるためです。

先に被告(法務省)から書面が提出され、それに対して反論しています。

被告準備書面(1).pdf
原告第1準備書面.pdf

その他の書面はこちらです

ここで、裁判官から「原告の反論は以上でいいのか?」と何度も聞かれました。これでよいと答えましたが、よくよく考えてみると、私は言う必要もないのに「本件情報は紛れもなく同和地区の場所だ」と、これでもかとばかりに書いておいたので、不審に思われたのかも知れません。

次回口頭弁論は12月11日10時30分です。

伏せ字の解放令

明治4年太政官布告、いわゆる「解放令」を根拠に、同和減免は無効だと主張する住民監査請求を鳥取市に出したことは以前お伝えしました。その結果がこちらです。戦中戦前の検閲された書籍みたいに、伏せ字だらけです。

鳥取市長措置請求に基づく監査結果について

伏せ字

同和地区名が隠されるのはお約束として、「非常に古い法律である解放令が有効と判断されるのか?」というのが1つのポイントでしたが、ご覧のとおり伏せ字にされるという、さらに予想外な結果となりました。「穢多非人」という言葉が放送コードにひっかかるようです。とは言ってもれっきとした公文書で、もとは公に布告されたものなので伏せる理由がないとは思うのですが。

「人権に配慮し、一部地名等の表示を略す」とありますが、「等」とは解放令に書かれた「穢多非人」というわけです。政府による初めての部落解放宣言である解放令を、人権に配慮して鳥取市が伏せ字にするというのは、これもまた同和の矛盾を凝縮していると思います。

水平社宣言にも「エタ」という言葉があるので、これも公文書に載せる場合は伏せ字にしなければいけないのでしょうか?「誰を」解放するのかということを言わずに、「解放」を達成できるのでしょうか?

同和問題に限らず、単に説明責任の放棄、保身、逃避のための、形式だけの秘密保持や個人情報保護というのが近頃は横行しているように感じます。

存否応答拒否をすると非公開情報を公開することになる事例

この堂々たる石碑と…

下味野改良事業

鳥取市の情報公開拒否処分の通知の内容。

拒否処分

石碑には「地区改良事業」と書かれており、その横にある石碑(リンク先)には昭和46年から59年まで23億5000万円の予算を投じて「小集落改良事業」を行ったことが誇らしげに説明してあるのですが、「同和対策事業」であるとは書かれていません。

ところが、鳥取市の開示請求拒否処分決定通知書には「同和対策事業」と明記されています。結果的に、拒否処分により鳥取市において小集落改良事業が行われた地域が同和地区であると分かってしまいました。

情報公開請求に対する拒否処分を行う場合は、同種の情報に対しては原則として拒否処分を行わないといけなくなってしまうので、ここで同和対策事業と書かなければ、鳥取市では特定の地域を対象とした公共事業に関する文書は全て開示を拒否することになってしまいます。なので、「同和対策事業だけは特別だ」と言わなければならなくなってしまうのです。

それにしても、存否応答拒否処分により非公開情報が公開されてしまう事例というのは初めて見ました。貴重な事例だと思います。

参考:グローマー拒否

これは情報公開制度の矛盾によるものではなくて、制度が「公然の秘密」の存在を許さないように非常によく出来ているので、公然の秘密となっている同和の矛盾がこういった形で現れたのではないかと思います。

同和対策審議会答申 フルバージョン

同和対策審議会答申は、昭和44年の同和対策事業特別措置法制定の4年前に出されました。答申はその前文で、同和問題の解決は「国の責務であり、同時に国民的課題である」と述べていました。

それゆえに同和対策事業推進の根拠とされ、行政闘争に大いに活用されました。各地の自治体の交渉の現場では「同対審答申も知らないのか!」と役人に食って掛かる場面が度々見られたと言います。また、教育の現場でも「国民的課題である」というフレーズが叩きこまれ、一般国民も同和対策事業に協力すべき根拠とされてきました。

ただ、実際のところ同対審答申は内閣府の一審議会の提言に過ぎないもので、国会が議決したものではなく、法的拘束力は何もありません。答申の提出先は内閣総理大臣なので、地方自治体や一般国民には何の関係もありません。それなのに、金科玉条のように扱われました。これは同和に限らないことなのですが、審議会の答申というのはその内容が都合が良ければ、あたかも錦の御旗のように、権威に弱く無知な人々を従わせるよい道具となる一方で、都合が悪ければ、拘束力はないからと足蹴にされる程度のものです。

しかし、現実には「同和」と名前がつくような部署がある市役所等では、未だに同対審答申が影響を持ち続けています。

そんな同対審答申ですが、よく知られているのは実は抜粋で、その完全版を読んだことがある人はほとんどいないのではないかと思います。以下の文書は、部落問題研究所が製本して会員に配った同対審答申です。付属資料も含めた完全版です。

同和対策審議会答申(附属書類全文)昭和40年8月11日.pdf

注目すべきは108ページ以降で、「同和地区精密調査報告」として同和地区の実名を出して、各地区の状況を解説しています。さらに332ページ以降には岡山県内の同和地区名が列挙されています。

この資料からは「寝た子を起こすな」という考えがあった一方で、同和事業の実施を求めるにあたって、「ここが部落なんだ」と地区名を明らかにしてきた経緯が読み取れます。そして、実際に事業が実施され、そのことにより大いに勢力を拡大した運動団体や、国からの補助により恩恵を受けた自治体が、現在同和地区の場所を必死に隠しているというのは、大きな矛盾です。

ちなみに、部落問題研究所は現在では共産党系、反解放同盟と見られていますが、この答申が出された当時はまだ解放同盟と協力関係にありました。皮肉にも、同対審答申に対する評価が運動団体の中で割れたことが、部落問題研究所と解放同盟の対立、そして解放同盟の分裂の原因になりました。

岡山同和事業