グーグルマップを利用した同和地区マップに対して、私が知る限り公的機関だけでも、大阪法務局、大津地方法務局、鳥取地方法務局、鳥取県人権局、滋賀県人権施策推進課から削除要請がされておりますが、どうしても消えないようです。鳥取県では2年も前から対策会議が開かれており、さすがに税金と労力の無駄ではないかと感じています。そこで、なぜ消えないのかということを、技術的な面と法的な面から解説していきます。
技術的な問題
グーグルマップの地図データ、航空写真などは常にグーグルのサーバー上にあります。同和地区マップもそうで、さらに今のところは同和地区施設の場所を示すデータ(目印データ)もグーグルのサーバー上にあります。「今のところ」というのは、目印データはグーグルのサーバー上に置く必要はなく、別の場所に置くことができるからです。
実際に、別のサーバー(Dropbox)に置いてみました。こちらをご覧ください。
地図データとマップ上の目印は一体のものではなく、それぞれ別々のデータとなっており、ブラウザ上で動作するプログラムにより重ね合わせられるというのがグーグルマップの仕組みです。それぞれデータは別のサーバーにあっても構わないわけで、前述の例では地図はグーグル、目印はDropboxのサーバーにあります。ということは、グーグルに削除要請をしてもグーグルはどうにもできないわけで、Dropboxに削除要請をしなければいけません。
さらに、地図とマップ上のデータを合成するプログラム(HTML, JavaScript)を別のサーバーに配置することができます。こうなると、ぱっと見たところではどこに削除要請をすればいいのか分かりませんね。しかも、どれか1つのデータが消されても、別のサーバーに移せばよく、そのようなサービスは世界中にいくらでもあるのでいくらでも復活できます。
グーグルが鳥取県人権局に対して「マイマップに関するクレーム、ご意見等にいては、マイマップを作成したユーザーに直接ご連絡いただくようにお願い致します」と答えているのは、そういう意味ではないかと思われます。「ユーザーを逮捕してインターネットから遮断しない限り、こちらが消しても無駄ですよ」ということなのです。
法的な問題
日本の法律では言論の自由というのは非常に強力な権利です。憲法21条で「言論、出版その他一切の表現の自由」が保障されており、さらに「検閲は、これをしてはならない」とされているためです。一方で、削除要請の根拠となっているプライバシーや個人情報の保護は憲法では直接規定されていません。従って、2つの権利が衝突する場合は、前者のほうが優先されやすいと言えると思います。さらに、憲法82条は裁判の対審及び判決は原則として公開法廷で行うことを規定しており、特に憲法21条を含む国民の権利が関わるものは一切例外を認めないという強力な規定になっているので、行政が争訟になるような強制力のある措置というのもいろいろな意味でやりにくいわけです。
同和問題では憲法14条(法の下の平等)が錦の御旗にされる一方で、なぜか前述のような規定は邪魔なものとされているようで、そこで行政は回避策を考えました。大阪法務局、鳥取地方法務局、鳥取県人権局が私に直接削除要請をせずに、グーグルなどのプロバイダに削除要請をするのは、もし実際に同和地区マップが削除された場合「消したのはプロバイダだ、こちらは直接手を下していないので検閲ではない」と責任回避をする意味があるものと思われます。
削除要請が「行政処分」ということになって、それが検閲かどうかが問題にされるようなことがあると、都合の悪いことについて説明を求められることになってしまいます。例えば、同和地区マップの載せている情報は、もともとは自治体がインターネットで公表しているものだったり、部落解放運動団体や同和対策事業団体の出版物に掲載されているものだったりすることです。
すると、「部落地名総鑑事件」以降の教育、啓発、解放運動といったものが、根底部分からおかしかった、そのために無駄な税金と労力を費やしてきたということが明らかになってしまいます。様々な人、団体のメンツが丸つぶれですよね。それをライフワークとして人生の大半をかけてきた人もいるようですが、これでは馬鹿みたいです。そこで、いろいろな人が必死になって、なるべく自分の手を汚さない方法で同和地区マップを消させようとしているのですが、そもそもその行為自体が矛盾と欠陥だらけの教育、啓発、解放運動の中で行われているものなので、どうしても消えないというわけです。