大津地方法務局に個人情報の利用停止請求をしたところ、認められなかった件で法務省に審査請求をしました。理由は次のとおりです。
本件個人情報は法務省設置法(平成十一年七月十六日法律第九十三号)第4条第26号にある「人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関すること。」のために収集されたものであるが、人権侵犯事件が生じたあるいは生ずるおそれがあった事実がない。従って、処分庁は法令の定める所掌事務を遂行するため必要な範囲を超えて本件個人情報を収集しており、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)(平成十五年五月三十日法律第五十八号)第3条第1項、第2項への違反がある。
処分庁は本件個人情報を利用して、審査請求人に対して審査請求人がインターネット上に掲載した情報の削除の要請をし、さらに啓発のための冊子の送付を申し出たが、審査請求人はいずれも拒否した。一方、行政手続法(平成五年十一月十二日法律第八十八号)第32条は、行政指導は行政機関の任務又は掌握事務の範囲を逸脱してはならないこと、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることを定めている。削除の要請と啓発は掌握事務の範囲を逸脱している上、審査請求人は協力しない旨を表明しているので、処分庁が本件個人情報を利用して今後事務を遂行することは不可能であり、本件個人情報を利用する必要はない。従って、処分庁は本件個人情報を保有し続けることは行政機関個人情報保護法第3条第2項により違法である。
上記の理由から、本件個人情報は処分庁により適法に取得されたものではなく、行政機関個人情報保護法第3条第2項に反して保有されているものであり、行政機関個人情報保護法第36条第1項第1号に該当するため、審査請求人による本件個人情報に対する利用停止請求は正当である。従って、本件個人情報を利用停止をしないとした処分は違法である。
ポイントとなるのは、行政機関個人情報保護法と行政手続法です。
行政機関個人情報保護法は必要のない個人情報を行政機関が収集したり保有したりしてはならず、もしそうであれば当事者は個人情報の削除または利用停止を求めることができるというものです。そして、行政手続法は法律によらない勧告や指導には強制力がなく、拒否できるというものです。そこで、後半部分は「行政手続法により今回の啓発・要請に強制力がないので、相手方が拒否しているのに相手方の個人情報を保有し続けることは違法」と主張しているわけです。
法律上は利用停止できるはずなのですが、法務省にもメンツがあるので、たとえ情報公開・個人情報保護審査会で利用停止すべきという答申が出ても従わないことが予想されます。それ以前に情報公開・個人情報保護審査会の答申がどうなるかも注目です。
こういった争い方をしたのは実は私だけではなくて、最近では君が代不起立個人情報保護裁判というのがあります。個人情報保護法ができた背景の1つに同和絡みのことがあるのですが、一方でこんな法律の利用法もあるということを知っておくと何かと便利です。