大阪市の消滅した同和地区(中津・舟場)

早速ですが、以下の地図をご覧ください。これは1963年(昭和38年)に刊行された「大阪市同和事業促進協議会10年の歩み」という本(国立国会図書館請求記号 369.76-O776z)に掲載されていたものです。
10年の歩み
国の同和対策事業が始まった1969年よりも、かなり前に大阪市で同和対策事業が行われていたことを示す資料でもあるのですが、ひとまず新しい地図と比較してみてください。
古い地図には、新しい地図にはない中津と舟場という同和地区が含まれています。中津は、かの有名な許永中の出身地なので、大阪人でなくても同和対策との関わりは知る人ぞ知る所だと思います。舟場は有名な場とは全く違う場所で、今は地名が変わり、中崎西という名前になっています。大阪駅から梅田センタービル、ポケモンセンター方面と言えばすぐに分かると思います(実際はもう少し先にある住宅地です)。
中津と舟場は、既に同和地区としての指定を外されてしまったものと考えられます。どうしてそうなったのかと言えば、この「10年の歩み」を読むと、おおよそのことが分かります。
10年の歩み.pdf
2つの地区について、次のような状況であったことが書かれています。
中津
・生活にゆとりの出来た住民は、舟場や天六(天神橋筋六丁目)方面に移住し、入れ替わりに落ちぶれた住民が流入した
・都心に近いため地価が上がり、各々が土地を売り払って引っ越した
舟場
・生活保護を受けている世帯は1軒もない
・住民は「寝た子を起こすな」という考えが強い
・部落解放同盟への反発が強い
部落差別を解消して、同和地区をなくすにはどうすればよいのか?
中津の例から学ぶとすれば、「地上げによって住民が散り散りになればよい」ということになります。
また、舟場の例からすると、「住民が部落解放同盟から離れて自立すればよい」ということです。


ところで、大阪府によれば、どこが同和地区か指し示す行為は個人情報保護条例違反となるそうです。以下は、http://www.pref.osaka.jp/kenshin/users-guide/hoki-shiryo.htmlからの引用です。

 なお、旧同和対策事業対象地域の所在地名については、当該情報からは特定個人が直接識別されませんが、これが住民票その他と結合することにより、特定個人が旧同和対策事業対象地域の出身者であることが判明することから、大阪府個人情報保護条例における「社会的差別の原因となるおそれのある個人情報」に該当します。
 このため、不動産物件が「同和地区にある」という情報や「同和地区と同じ校区にある」という情報についても、「社会的差別の原因となるおそれのある個人情報」に該当します。
 したがって、不動産物件が「同和地区にある」、「同和地区と同じ校区にある」という情報を収集したり、顧客の求めに応じてこれを教えたりする行為は、大阪府個人情報保護条例第47条に違反する行為となります。

「50年のあゆみ」は大阪府や大阪市の個人情報保護条例の施行中に発行されたものですが、大阪市人権協会は個人情報保護条例の適用対象になるのかどうか大阪府と大阪市に聞いてみたのですが、今現在、明確な回答は得られていません(大阪府は「市の団体だから大阪市に聞いてくれ」というような回答、大阪市には「調べて電話する」と言われたきりで放置プレイ状態です)。

コメント

コメント(4)

  1. K on

    貴重な資料をアップロードして下さり有難うございます。興味深く拝読しました。森功の『同和と銀行』(講談社)という本を読むと、飛鳥会事件の小西邦彦が昭和40年代、権利関係の複雑さ故になかなか開発できなかった大阪駅前の地上げに際して大阪市に手を貸したことから同市の行政に多大な影響力を持つようになった旨が記されています(p.79)。この本には大阪駅前のその地区が被差別部落だったとは明記されていませんでしたが、どうやらここが舟場地区だったようですね。地区住民との交渉には、被差別部落出身の小西の方が大阪市の一般の吏員より好都合なこともあったのでしょう。

  2. 鳥取ループ on

    コメントありがとうございます。
    「同和と銀行」で地上げの舞台になったのは駅前第1ビル~第4ビルの辺りなので、舟場とは別ではないでしょうか?梅田は終戦直後は闇市のような状態になっていたと聞いたことがあります。
    中崎西~天六の辺りは大阪に住んでいた時に、よく通りましたが、相変わらず小さな住宅や商店がひしめいた場所でした。

  3. 焼肉奉行 on

    大阪府北部の自治体で職員をやっていた人によると少なくとも同特法以前は役所に解同がやってきても「そんな話は通らんわ」くらい言って追い返していたと聞いたことがあります。市内と他地域では若干、温度差があるような気もしますがどうなんでしょうか。

  4. 柿の種 on

    早く気づいて欲しい
    鳩山内閣の選挙前
    「政権交代が最大の経済効果」
    →税収低下、デフレ宣言
    「国債(借金)は発行しません」
    →やっぱり国債発行
    「子供手当ての財源は無駄を省けばあります」
    →事業仕分けでの確保出来たのは45%ほど。
    →しかも来年以降も毎年必要。
    「高速道路は無料にします」
    →地方道路のみ試験的に実施。
    →都市部に住む人には無関係。
    →日曜1000円は廃止。都市部の人は結局なにも得しない。
    その他、民主党の報道されない失敗。
    民主党の石井一選挙対策委員長は22日
    「鳥取県とか島根県と言ったら、日本のチベットみたいなもので、
    少し語弊があるかもわからないが、人が住んでいるのか。牛が多いのか。
    山やら何やらあるけど、人口が少ない所」
    と発言したが、マスコミは報道せず。
    以前の政権の時は「漢字読み間違い」「カップめんの値段」で
    バンバン報道されましたね。