人権アンケートに不適切質問(山口)

古い記事ですが、興味深かったので掲載します。
2003年1月14日、朝日新聞より引用。

山口県玖珂(くが)町教委が町民を対象に実施した「人権問題に関するアンケート」で、心身障害者や「同和地区の人」との結婚についての意識を尋ねていたことがわかった。
町教委は町民から「差別や偏見を助長する質問で、不適切」との指摘を受け、13日までにアンケートの中止と用紙の回収を決めた。
町教委によると、アンケートは昨年12月、人権教育の新たな指針を作るために、無作為に抽出した20歳以上の男女計1000人を対象に、実施された。無記名で今月末までに回答するように求めていた。
問題の質問は、「人権の個別的な課題について」の項目のひとつ。「次のような人(心身障害者、外国人、感染症患者、罪や非行を犯した人、同和地区の人)との結婚についてお聞きします」とある。
回答者が既婚なら自分の子ども、未婚なら本人が、その立場の人と結婚する場合の対応を尋ねたもので、既婚の場合は「子どもの意志を尊重する」「家族や親戚(しんせき)の者が反対なら認めない」「誰が何と言っても絶対に反対する」など5つの選択肢から選ぶ。未婚の場合も同様に「自分の意志を貫き結婚する」「家族や親戚の者が絶対反対なら仕方なく結婚をあきらめる」などの4通りの回答が用意されている。
このアンケートに対し、町民の男性が「列挙された人たちに対する差別や偏見を助長する質問で適切ではない」と抗議。町教委は県教委と相談し、10日に中止と用紙の回収を決定した。担当職員が「質問事項に不適切な項目が含まれていた」とする謝罪文を持って各家庭を回り、ほぼ回収し終えたという。
町教委の伊藤卓男・教育次長は「具体的にどの質問が不適切だったかは言えないが、一部質問に配慮が足りなかった。深く反省し心からおわびしたい」と話している。

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同和関係世帯の世帯主名簿

以前、同和地区実態把握等調査(生活実態調査)についてご紹介しました。この調査では対象世帯の名簿を持って調査員が回るわけですが、その世帯名簿は事前に行われる地区概況調査で作成されていました。
地区概況調査の実施要領を見るにはこちらをクリックして下さい。
この資料では、世帯主名簿の作成準備として「個人的給付事業の対象者名簿の整理」「地元精通者等に協力を求める」ということが挙げられています。同和対策を行っている市町村では、当然地区や地区住民を把握しているため、こういった資料や住民基本台帳をもとに世帯名簿を作成するようです。以前の記事でも触れたとおり、本人の知らない間に情報は収集されるため、知らない間に調査対象の世帯になっていた、ということも起こります。
作成された世帯名簿は市町村が保管し、県には各地区の世帯数一覧表が提出されます。つまり、住民の個人情報は市町村止まりで県には行かないようになっています。とは言え、鳥取県個人情報保護条例第7条で収集が禁止されている「社会的差別の原因となるおそれのある個人情報」(鳥取県個人情報保護条例施行規則第5条で「同和地区の出身であることに関する情報」がこれに該当することが明記されている)を収集することになるため、例外規定を適用するために鳥取県個人情報保護審議会による審議が行われています。なお、県によれば審議は平成12年に行われた前々回の同和地区実態把握等調査の際に行われたそうです。
世帯主名簿は当然のことながら厳重に管理され、実態調査事務の終了後一年(今年の7月31日)をもって処分されています。しかし、「市町が保有している資料等により世帯主名簿の代替ができる場合は、新たに作成する必要はないこと。」と規定があるため、独自に世帯主名簿に順ずるものを作成している自治体があるようです。
そこで、市町村の1つである我が鳥取市の同和対策課に「鳥取市は同和関係世帯の世帯名簿を現在保有しているか」とFAXで単刀直入な質問をぶつけてみたのですが、「『同和地区世帯名簿』といったものは保有していません。」という回答が返ってきました。「現在保有しているか」という質問をしたので、市は県の要請に基づいて名簿を作成して、既に処分してしまったということかも知れません。
[2006.9.2]
追加報告です。鳥取市内のとある隣保館に聞いたところ、平成17年度の調査の際に、確かに市役所で同和地区の世帯名簿を閲覧したということでした。これを受けて再び同和対策課に問い合わせたところ、実は世帯名簿は作られていたが、現在はシュレッダーで処分されたということでした。
なぜFAXでは保有していないと回答したのかを問いただすと、現在の同和対策課長は昨年の調査には関わっていないので知らなかったということでした。さらに、名簿がどのような方法で作られたのか聞くと、「分からない」ということでした。

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過料や氏名の公表まで県外を対象にしたのは県側のミス?

元社会作り協議会委員の松田章義氏に、条例の県外適用について電話取材しました。以下は、その要旨です。

私) 条例の県外への適用を強く主張されていたようですが?
松田氏) 鳥取県民が県外に出かけて差別や人権侵害を受け、鳥取県に帰ってから申し出た場合に、県外のことだから門前払いするのは、なんとなくつれないのではないかと。せめて、県外の行政機関や人権擁護のしかるべき機関や団体に問い合わせをして、調査するくらいのことはあってもいいと言った記憶がある。
しかし、県外の該当者を追いかけて処分するとか、問いただしたり処断することまでは、できないという趣旨で発言した。
私) 結果としては、県外まで対象になるととらえられて、県外から批判されることになったが、どのように思われますか?
松田氏) 私が委員会で申したときには、県外まで出かけていって強権的にどうこうしようという考えは持ち合わせていませんでした。せめて問い合わせてみるという程度の準備をしていてよいのではという程度のことでした。
私) 条文には県外の事案も申し立てできるるようになっていますが、それは松田さんが想定されたことだったのですか?
松田氏) 県がどこまで対応するという文言になっていたでしょか?
私) 調査であるとか、応じない場合は過料や氏名の公表となっています。
松田氏) そんなことまで?
私) 条文の上では県外のことは排除されていません。
松田氏) 私どもも最終段階まで責任もって見届けるという形にならなかったですね。県が委員の意見を聴取するが、あとは県の方にお任せ下さいというやり方でした。それで作成委員の方には不満が残った。
委員長の國歳氏もそのことは最後まで言っていました。7割がたの意見が採用されて、3割は県の事務局に任せる形になりました。
私) 確かに過料や氏名の公表は人権局が入れてきた部分です。
松田氏) 私は当初から氏名の公表には異議をとなえていました。それから、過料というようなことが県の条例のレベルでできるのか疑問を発していました。やりすぎというか、無理でないかといったことは当初から言い続けていた。県外まで捜査するとか、過料とか氏名の公表ということは毛頭なかったですね。
私) 県外も対象にするような主張をした趣旨は、あくまで過料や氏名の公表まではしないという前提であったということですか?
松田氏) もちろんそうです。その上で県外の事案で申し出があった場合に受理せず門前払いというのは冷たすぎはしないかと強く主張したつもりです。
松田氏) 私はここまで強権的なものを作ることを片山知事が了承したのか疑問をもっていた。

また、松田氏は「知事がOKしたのか?」と聞いたのは、こういった強権的なものまで知事が了承したのか疑問を持っていたのだと話していました。
確かに、松田氏は先の議事録で、氏名の公表といった処分に疑問をはさんでいます。

松田委員 勧告に従わないとき、住所・氏名を公表。公表はできると規定し、県広報への掲載とか云々。このあたりは、しっかり詰めておられるのか。
安田委員 かえって人権侵害になるのでは。
中島局長 よほどのことだ。
松田委員 いろんな方法があるなかで、ここまで書かれるということは、相当の覚悟のうえということで受け止めていいのか。
中島局長 よほど悪質で、故意で止めそうにないという場合には、ここまでするつもりで制度を作っていきたい。
松田委員 公務員の不祥事でも、その者の名前や職名や年齢について出すか出さないかということで大きく意見が分かれる時代のなかで、住所、氏名まで公表というとこまでするのは、法的な根拠ができているのか。今度聞きたいと思います。

松田委員をはじめとして、対象範囲を広げる方向での議論がある一方で、実質的な罰則など強権的な条例にしようとする動きもありました。最終的な調整を誤り、強権的でなおかつ違法なまでに対象範囲の広い条例になってしまったのは両者に齟齬があったと言えそうです。条例を適法なものとするには、強権的な部分については範囲をしぼる条項が必要であったはずです。

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