元社会作り協議会委員の松田章義氏に、条例の県外適用について電話取材しました。以下は、その要旨です。
私) 条例の県外への適用を強く主張されていたようですが?
松田氏) 鳥取県民が県外に出かけて差別や人権侵害を受け、鳥取県に帰ってから申し出た場合に、県外のことだから門前払いするのは、なんとなくつれないのではないかと。せめて、県外の行政機関や人権擁護のしかるべき機関や団体に問い合わせをして、調査するくらいのことはあってもいいと言った記憶がある。
しかし、県外の該当者を追いかけて処分するとか、問いただしたり処断することまでは、できないという趣旨で発言した。
私) 結果としては、県外まで対象になるととらえられて、県外から批判されることになったが、どのように思われますか?
松田氏) 私が委員会で申したときには、県外まで出かけていって強権的にどうこうしようという考えは持ち合わせていませんでした。せめて問い合わせてみるという程度の準備をしていてよいのではという程度のことでした。
私) 条文には県外の事案も申し立てできるるようになっていますが、それは松田さんが想定されたことだったのですか?
松田氏) 県がどこまで対応するという文言になっていたでしょか?
私) 調査であるとか、応じない場合は過料や氏名の公表となっています。
松田氏) そんなことまで?
私) 条文の上では県外のことは排除されていません。
松田氏) 私どもも最終段階まで責任もって見届けるという形にならなかったですね。県が委員の意見を聴取するが、あとは県の方にお任せ下さいというやり方でした。それで作成委員の方には不満が残った。
委員長の國歳氏もそのことは最後まで言っていました。7割がたの意見が採用されて、3割は県の事務局に任せる形になりました。
私) 確かに過料や氏名の公表は人権局が入れてきた部分です。
松田氏) 私は当初から氏名の公表には異議をとなえていました。それから、過料というようなことが県の条例のレベルでできるのか疑問を発していました。やりすぎというか、無理でないかといったことは当初から言い続けていた。県外まで捜査するとか、過料とか氏名の公表ということは毛頭なかったですね。
私) 県外も対象にするような主張をした趣旨は、あくまで過料や氏名の公表まではしないという前提であったということですか?
松田氏) もちろんそうです。その上で県外の事案で申し出があった場合に受理せず門前払いというのは冷たすぎはしないかと強く主張したつもりです。
松田氏) 私はここまで強権的なものを作ることを片山知事が了承したのか疑問をもっていた。
また、松田氏は「知事がOKしたのか?」と聞いたのは、こういった強権的なものまで知事が了承したのか疑問を持っていたのだと話していました。
確かに、松田氏は先の議事録で、氏名の公表といった処分に疑問をはさんでいます。
松田委員 勧告に従わないとき、住所・氏名を公表。公表はできると規定し、県広報への掲載とか云々。このあたりは、しっかり詰めておられるのか。
安田委員 かえって人権侵害になるのでは。
中島局長 よほどのことだ。
松田委員 いろんな方法があるなかで、ここまで書かれるということは、相当の覚悟のうえということで受け止めていいのか。
中島局長 よほど悪質で、故意で止めそうにないという場合には、ここまでするつもりで制度を作っていきたい。
松田委員 公務員の不祥事でも、その者の名前や職名や年齢について出すか出さないかということで大きく意見が分かれる時代のなかで、住所、氏名まで公表というとこまでするのは、法的な根拠ができているのか。今度聞きたいと思います。
松田委員をはじめとして、対象範囲を広げる方向での議論がある一方で、実質的な罰則など強権的な条例にしようとする動きもありました。最終的な調整を誤り、強権的でなおかつ違法なまでに対象範囲の広い条例になってしまったのは両者に齟齬があったと言えそうです。条例を適法なものとするには、強権的な部分については範囲をしぼる条項が必要であったはずです。