神戸新聞が報じた八鹿高校事件(1)

神戸新聞 1974.11.23
地元兵庫県の神戸新聞は、事件翌日の1974年11月23日の朝刊の社会面で中程度の記事で伝えていますが、その日の状況を生々しく記述しています。以下、第一報の全文を引用します。

見出し: 「解放研と教師対立 数人ケガ授業できず 同和教育めぐり 八鹿高」
兵庫県養父郡八鹿町の県立八鹿高校(珍坂邦巌校長)で、同和教育、サークル活動の部落解放研究会のあり方をめぐって、教師側と解放研の生徒や部落解放同盟などの八鹿高差別教育糾弾闘争共闘会議(丸尾良昭議長)が対立。解放研のメンバー二十一人が二十一日午後からハンストに入っていたが、さらに二十二日朝、一斉に休暇届を出し下校しようとした教師集団と、止めようとした共闘会議の間でトラブルが起き、八鹿署の調べで教師ら数人がケガをした。
同署の調べでは、同日午前十時ごろ「同町新町の路上で教職員二十-三十人が解放同盟の百人ぐらいに囲まれ、ケガ人が出ている」と一一〇番があり、同署員が出動したが、すでに教師、共闘会議のメンバーらは同高体育館へ入っていた。このあと同署は公立八鹿病院で手当てを受けている教師ら数人を確認、県警本部へ連絡するとともに但馬各署へ応援を要請した。同高では、夜に入っても教師への確認会が続き、共闘会議は決起集会を開いた。
一方、同校の生徒ら数百人が「暴力反対」を訴え町内をデモする動きもあり、県教委職員、父兄らともみ合う場面もあった。結局、生徒らに丸尾共闘会議議長が「事実をよく見てほしい。暴力はいけないが、この起きた背景にこそ部落差別がある」と呼びかけ、同盟役員らが「八鹿高生徒が喜んで授業できるように話し合っていこう」とアピール。生徒らは改めて「暴力反対」を決議したあと夜になって解散した。
また兵高教組(吉冨健二委員長)は同夜「教育の問題は外部の圧力で解決すべきでない。全教職員が一刻も早く教育活動の自由を取り戻せるように望む」と声明を出し、県教委、警察に要請した。
同高では以前からサークル活動として部落研があったが、新たに今年七月解放研が結成された。解放研側は教師側に「正式の活動サークルとして認めよ」という要請を続けてきたが、校長、教頭を除く教師側は「解放研は外部の指導によってつくられたもので、学内活動のサークルと認められない」という態度をとってきた。解放研側は今年十八日朝、三項目の要求を出し、二十余人の生徒が職員室前で座り込みを始め、二十一日から解放研の二十一人がハンストに入った。
解放研の教師側への要求は(1)解放研の顧問(現教頭一人)をさらに三人つけること(2)解放研と先生との話し合いを持つこと(3)現在の同校同和教育は、部落の解放とすべての生徒の幸せにつながっていないこと-を認めること。
これに対し教師側は職員一同の名で(1)解放研の性格は運動体の一環で、そのまま学校教育の現場に受け入れることはできない。(2)外部の圧力がかかっている状態で生徒と話し合うことはできない(3)話し合いは解放研結成以前の状況に戻すことが先決-としている。

なお、八鹿高差別教育糾弾闘争共闘会議の丸尾良昭議長は、後の刑事裁判で、この事件の主犯格として懲役三年、執行猶予四年の判決を受けています。
翌日24日の朝刊の社会面には、「36人が入院 八鹿高校事件」という見出しで小さな記事が載っています。その中で、八鹿署の23日午後3時半の発表として「ケガ人の実数は、まだ十分つかめていないが、八鹿病院で診察を受けたのは先生ら四十三人とハンストの二十一人。うち先生ら二十八人、ハンストの生徒八人の入院を確認しているが、重軽傷別は不明」としています。
そして、25日月曜日の夕刊では、「八鹿高校事実上の休校状態 生徒らほとんど登校せず」という小さな記事で、授業再開を予定していたにもかかわらず、生徒が数百人、先生は数人しか登校しなかったことを伝えています。また、公立八鹿病院の説明として「二十四日夜の時点で、セキ椎骨折などの重体一人、治療一-二ヶ月の重傷者七人、あとの先生は治療十日から三週間」と伝えています。
以後、神戸新聞は小さな扱いでしたが、事件の続報を伝えました。

  • 26日夕刊 – 生徒会が正常化へ三要求
  • 27日朝刊- 八鹿問題で共産党代表が兵庫県に申し入れ
  • 27日夕刊- 45人ケガ 入院28人
    28日以降、全国紙が沈黙した後も、事件は終わっていませんでした。八鹿の長い日はまだまだ続きます。
  • コメント

    コメント(2)

    1. あき on

      初めまして、私はあきと申します。管理人様の名前は鳥取ループさんで宜しいでしょうか。あの鳥取県の人権条例ができてからはや2ヶ月ほど経ちましたが、鳥取県民の方の意見や鳥取の忌まわしき差別利権の構造など生の証言を知ることができて、参考になります。私が住む福岡も差別利権の温床という部分があって非常に共感を得ることができます。私は両親とも教師で小さい頃「同和問題で・・」と深刻そうに話すのを見てきています。子どもの頃は部落出身者の人はずっと差別されている人たちだと思ってました。八鹿高校事件や広島の校長先生自殺事件は恐ろしすぎて本当に人事とは思えません。

    2. 鳥取ループ on

      あきさん、初めまして。管理人の名前は鳥取ループで結構です。
      私は同和地区に隣接する地域に住んでいたので、部落出身者に対する暗いイメージはないんですよ。そもそも、同和教育以外では、そんなことは意識していませんでしたから。
      むしろ、同和問題と馴染みのない地域から鳥取に移り住んで、鳥取で研修や教育を受けた人の方が、部落に対する暗いイメージや、腫れ物に触るような感覚を持っているのではないかと、個人的には思います。それだけ教育の内容と、実態がかけ離れていましたから。
      ただ、八鹿高校事件や、広島の問題など同和団体のイデオロギーの絡む部分は、本当に恐いと思います。