鳥取県内の高校では、就職を希望する生徒には、「公正採用選考」についての指導が行われます。それは、差別につながる質問をされても答えてはいけないというもので、時には学校に報告するように指導されます。
私は高校の頃、進学組だったのですが、就職する生徒が多い高校だったので、特別に時間を設けてクラス全体でこの指導が行われました。差別につながる質問として代表的なのが、父親の職業を聞いてはいけない、ということです。なので、例えば企業の面接担当者が「お父さん」ではなく「父は」と答えられるか確かめるために父親の職業を聞いたところ、「そういう質問には答えられません」と言われて面食らうことが度々あるようです。
同和問題に関して言えば、県内で就職差別の事例は、ここ10年ほどの間、1件もありません。過去の差別の事例として有名なのは「部落地名総鑑」です。鳥取県内でも某大手家電メーカーや電力会社が買っていたことが明らかになっています。県内の主要都市にある同企連はこの事件がきっかけで設立されました。
この頃、半ば強制的に進められたのが、企業の採用選考で全国高等学校校長会による統一応募用紙を使うことでした。それをしないで、例えば家族構成を聞くといったことをすれば、差別体質を持った企業として糾弾されました。実際に1990年代、鳥取県や島根県で統一応募用紙を使わなかった企業に対して相次いで糾弾会が行われています。
こうして、差別のあるなしに関わらず、「差別につながる」と思われるような選考は企業はできなくなりました。これは鳥取だけでなく、大阪などでも有名な話ですね。
手元に、鳥取県商工労働部発行(平成10年7月)の「企業における同和問題・人権問題の取り組み方」という企業向けの研修資料があります。この中から、採用選考でしてはいけない質問について抜き出してみます。
- あなたの本籍地はどこですか。
- あなたのお父さん(お母さん)の出身地はどこですか。
- どうして本籍と現住所が違うのですか。
- 生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか。
- あなたのお父さんは、どこの会社に勤めていますか。また、役職はなんですか。
- あなたの家の家業は何ですか。
- あなたの家族の職業を言ってください。
- あなたの家族の収入はどれ位ですか。
- あなたのうちは、田畑はどれ位ありますか。
- あなたのうちの不動産はどれ位ありますか。
- あなたのうちは、山林がありますか。
- あなたのうちの耕地面積はどれ位ですか。
- あなたの住んでいる家や土地は、自分のものですか。
- (住所について)××町の△△はどのへんですか。
- あなたの住んでいる地域は、どんな環境ですか。
- あなたの住所の略図を書いてください。
- あなたの家庭の雰囲気は。
- あなたは転校の経験はありますか。
- お父さん(お母さん)がいないようですが、どうしたのですか。
- お父さん(お母さん)は病死ですか、死因は何ですか。病名は。
- お父さん、お母さんの学歴は。
- あなたの信条は何ですか。
- あなたの生活信条は。
- あなたの信条としている言葉は。
- 家の宗教は何ですか。何宗ですか。
- あなたの家庭は、何党を支持していますか。
- 尊敬する人物を言って下さい。
- あなたの人生観は。
- あなたは、自分の生き方についてどう考えていますか。
- あなたは、どんな本を愛読していますか。
- あなたの家は、何新聞を読んでいますか。
最後の方は何か凄いですが、実際に高校ではこういった質問は違反だと指導されます。私の高校の頃の経験では「愛読書や好きな言葉を聞いてはいけない」と教師が言ったら、さすがに野次が飛びました。
果たして、県内企業の採用選考において「差別につながる質問」がゼロになる日は来るのでしょうか。
思うに、就職と言うのは結婚に近いものがあります。米国では書類選考では履歴書に張られた写真の印象で80%が決まるというデータがあるそうです。
私も就職活動の時は、インスタント写真じゃなくて、高い金払って、写真屋で撮ったものです。最近の写真屋はデジタル加工で印象よく修正してくれるのでおすすめですよ!