現在発売中の「週刊ポスト」2010.8.20/27号から、髙山文彦氏の「糾弾」という連載が始まっています。早速私も買って読んでみました。
冒頭に出てくる、矢部川にかかるレトロなモスグリーンの鉄橋とは、これのことです。川の中洲にあるムラとは、ここのこと(立花町山崎の2300番地から2600番地付近)です。このように、十分に場所を特定できる情報が書かれているので、隠す意味が全くないわけです。
また、部落解放同盟筑後地区協議会書記長の組坂幸喜氏の話としてこんな記述がありました。
どこの部落の人間にも似たような傾向があるんですが、ここのムラの人たちも、どこか近くの町で会合があって、遅くなって相乗りしてタクシーで帰って来るとき、この橋を渡り終えたら右に曲がってもらえばいいのに、ここでいいからと渡ったところで下ろしてもらうというんですね、タクシーが見えなくなるまでその場に立って、そうしてすっかり見えなくなってからやっと自分のムラへ帰っていく。僕にはその気持がわかるんです。どこに住んでいるのか、人に知られたくないんです。
これは、全国共通のテンプレです。鳥取市でも似たような話がありました。私が聞いたのは、自分の住んでいる場所が分からないように、わざわざ隣のバス停で降りるというものでした。しかし、どれも「また聞き」程度の話ですし、そもそもの問題として、田舎ではほとんどの家に車があるので、近くの町の会合に出るような人が、バスやタクシーの相乗りで帰るという状況自体があまりなさそうです。酒飲んだから代行を頼むというのならあるかも知れませんが。
で、立花町山崎は被差別部落で、ほとんどの人は2つの姓のどちらかを名乗っているそうですが、具体的に何という姓か(「上島」と「牛島」のことだと思います)電話帳や住宅地図で調べれば分かると思います。文中で仮名にしてありますが、あまり意味がありません。
自作自演をやった町職員の名前を山岡一郎と仮名にしてありますが、これは熊本和彦です。懲戒免職になったので、実名が公表されてます。この人は商売もやっているので住所も分かります。彼のウェブサイトによれば「福岡県八女郡立花町大字山崎2599の1の2町営さくら台住宅801号」となっています。住所表記は立花町山崎ですが、地図では鉄橋から左側、川の中洲の外にあるので、おそらくは被差別部落とされる「ムラ」の外ということになると思います。 Yahoo地図では中洲の中のようです。
こんなことも書いてありました。
もともと彼の姓は、「鈴木」であった。結婚を機に妻の「山岡」姓を名乗りはじめたのだ。久留米で育ってきた妻は部落外の人であり、これから生まれてくるわが子のためにも、部落外から自分のもとへ嫁いできてくれた奇特な妻のためにも、彼は慣れ親しんできた自分の姓を捨てたのだ。部落差別の視線から家族を守ろうとして。
本人が言ったのか、組坂書記長が言ったのか、筆者の推測か、分かりませんが、昨今の状況を見ると、奇特というほどでもないと思います。また、地元で立花町山崎のあの名字と言えば部落民と分かるような状況なら、先の相乗りタクシーの話と矛盾するのですが。立花町山崎の住人は会合で偽名でも使うのでしょうか。
しめくくりは、組坂書記長の号泣です。
山岡の女房を見ると自分の女房に思えるんですよ。三人の息子を見ると自分の息子に思えるんですよ。同じ部落民じゃないですか。どうやって糾弾しろと言うんですか。
こんな調子で、ステレオタイプな、まさに「絵に描いた」ような被差別部落、部落民像が展開されていきます。このあたりが「表のメディア」の限界であろうと思います。
何せ週刊ポストで髙山文彦氏の記事なので、立花町山崎は本当にそのような地域なのかも知れませんが、全国どこでも同和地区はそんな場所ではないということを理解していただき、さらに前述のことも念頭に読むと、2倍楽しめる連載です。
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