人権侵犯事件の証拠開示を求めて法務省と争っていた裁判で、2月7日に同和地区マップについては不開示とする判決が出されましたが、控訴しました。控訴理由書はこちらです。
私の控訴理由の論点は数多くありまして、主要なものを列挙すると次のとおりです。
- 同和地区一覧は「真実であるか否かにかかわらず同和地区の住民や出身者に対するいわれなき差別を助長するおそれのある情報ということができる」と東京地裁は言うが、真実でなければ同和地区の住民や出身者は無関係なので、文章としておかしい。
- 開示を求めている同和地区一覧は大阪市行政が公表している同和地区一覧と一致するので、間違いなく真実。
- 同和地区一覧は「当該地区の住民又はその出身者の人格権その他の権利利益を著しく害するおそれのある情報」と東京地裁はいうが、法務省や裁判所が「権利利益を著しく害する」と認定するような場所なら、関わりたくないと思って当然ということになる。
- 図書館で公表するのとインターネットで公表するのは違うというが、インターネット云々は裁判所の外の話で、話が脱線している。
- 個人情報開示請求権は法律によるものである一方、法務局の人権擁護活動は訓令による役所の内規に過ぎないので、前者の方が優位にある。
- 行政機関個人情報保護法14条2号イの「法令の規定により又は慣行として」知ることができるというのは、開示請求者が当然に知り得ていれば足りるので、個人に関する情報だからというのは開示しない理由にならない。
- 同和地区一覧を開示したら「大阪法務局長が結果的に差別行為に加担したとの誤解を国民に与え」ると東京地裁は言うが、誤解まで考慮しないといけないなら事実や法律の判断ではない。誤解されないように説明すれば済む話。
- 同和地区一覧を開示したら「部落地名総鑑事件と同様の問題が発生しても,任意の提出や自主廃棄等の協力を受けることができな」くなると東京地裁は言うが、既にFC2もGoogleも応じていないし、私も応じるつもりはないし、どんな判決が出ようと関係ない。
- 法務局が同じ事を出版社にやったら間違いなく検閲で、ネットのブログだからと舐めている。
特に重要なのは、やはり大阪市と部落解放同盟大阪府連合会が1度ならず、何度も、しかも部落地名総鑑事件の後も大阪市内の同和地区名を公表していることでしょう。
私が証拠として提出したのは以下の資料です。
この資料は国立国会図書館にありました。大阪市の行政文書で、地区ごとのデータが分かりやすくまとめられています。当然ですが、同和地区名は「50年のあゆみ」の記述と一致しています。
こちらは大阪市立図書館で借りることができる資料です。もとは昭和43年に1000円で売られていたものですが、部落地名総鑑事件の直後の昭和54年にわざわざ復刻出版されました。発行所は「大阪市同和対策部」となっており、どう考えても大阪市が行政ぐるみで多くの人に読んでもらうために発行したものです。
いきなり中表紙に同和地区マップが印刷されており、文中にはしつこいほど同和地区一覧が繰り返し出てきます。
大阪市民にとっては、もはや常識のレベルかと思いますが、いわゆる同和校の一覧もありました。他の地域ではあまり見られないのですが、同和地区についてはとにかく何でも一覧にするのが大阪市の方式のようです。
なぜか、厚生省が指定した全国のモデル同和地区一覧も掲載されていました。実は私は昭和36年に厚生省が発行した「同和行政の手引き」を持っているのですが、それにも同じ一覧があります。
細かくて見づらいですが、大阪府の同和地区マップもありました。何でも地図に落としこむのも大阪市の方式のようです。
以下が続編ですが、同じように同和地区のデータを表にまとめたものが何度も出てきます。
次回に続きます。