同和地区に関する訴訟の結果のまとめ

本サイトが行ってきた多くの訴訟について、結局どうなったのか分かりにくいので、確定したものを一覧にまとめて欲しいというリクエストがありました。以下、参考にしてください。

裁判所 事件の概要 事件番号・判決日 結果 判決について鳥取ループの解釈
広島高等裁判所
松江支部
(最高裁は上告棄却)
鳥取県に対して、部落解放鳥取県企業連合会(企業連)の研修の参加企業名の公開を求めた 平成20年
(行コ)第4号
平成21年2月13日
判決文
一部勝訴(50%) 企業連の研修参加企業は、事実上企業連会員企業であり、なおかつ会員企業の経営者は同和地区出身者と考えられ、公開されると商取引を忌避されるなどを差別を受けて企業が不利益を受ける蓋然性が高いので非公開とした。
一方、研修の合否は公開しても支障はないので、企業名・担当者を黒塗りの上公開とした。
大津地方裁判所 滋賀県東近江市に対して同和対策施設(隣保館・教育集会所・人権啓発センター)の設置管理条例の公開を求めた 平成21年
(行ウ)第16号
平成22年4月13日
判決文
勝訴 情報公開条例は、法律や条例により公開されている情報は個人に関する情報であっても公開することを定めているから、公の施設として設置された同和対策施設の設置管理条例は個人に関する情報であるかどうかを判断するまでもなく公開されなければならない。
東京高等裁判所
(最高裁は上告棄却)
鳥取ループブログに対して大阪法務局削除要請した大阪同和地区マップ等について、法務局が取得した情報の行政機関個人情報保護法による開示を求めた。 平成25年
(行コ)第89号
平成25年7月31日
判決文
一部勝訴(40%) 大阪同和地区マップを開示すると、それが事実かどうかに関わらず(事実であればなおのこと)、当該地域の住民が差別を受けて権利利益を侵害される。
また、法務局が同和地区マップを開示して差別助長したように誤解されるので、法務局の事務事業に支障が出る。
よって、大阪同和地区マップなどは開示できない。
ただし、同和地区マップ等以外で法務局の事務事業に支障のない部分の情報は開示しなければならない。
なお、法務局に同和地区マップの削除要請をされても従う義務はないので、法務局の行為は検閲にあたらない。
大阪市や大阪府が同和地区マップや同和地区名一覧を出版しているが、それは別問題。
広島高等裁判所
松江支部
(最高裁は上告棄却)
下味野の同和対策固定資産税減免(同和減免)の対象地域の公開、あるいは住民による個人情報開示を求めた。 平成25年
(行コ)第6号
平成25年10月9日
判決文
敗訴 租税法律主義は、課税要件の公開を政府に義務付けるものではない。
同和減免の対象地域は同和地区と考えられるので、下味野に同和地区があると分かると住民の権利利益が侵害される。
同和減免の対象地域は個人情報ではないので個人情報開示の対象とはならない。

鳥取県の企業連の研修については、この裁判があったためかどうか分かりませんが、廃止となりました。実は、企業連の研修を受けた企業には、指名競争入札の基準となる点数が加点されていたので、企業連会員に限らず、県に登録されている業者の点数と加点基準を全て公開させておけば、丸裸にできたのにと悔やんでおります。

大阪法務局に対する裁判では、東京高等裁判所が同和地区マップや同和地区一覧をインターネットで公開する行為について、事実上違法性がないと判断したのは画期的なことでした。

下味野の同和減免については、減免自体に違法性がなかったかどうか問う住民訴訟はまだ継続中です。

最高裁での弁論の争点

提訴から4年、いよいよ最高裁へと持ち込まれた、滋賀県を相手とする裁判ですが、弁論の期日が近づいております。

答弁書等をこちらで公開しました

答弁書はもう少し手直しするかも知れません。

最高裁は、滋賀県情報公開条例6条1号に関係する事柄を争点から除外して、条例6条6号だけを争点としようとしています。これが何を意味するかというと、滋賀県情報公開条例を見ると分かる通り、6条1号は個人の権利利益が関係していますが、6条6号は県の事務事業への支障が関係します。

おそらくですが、「同和地区施設の場所が公開されると個人の権利利益が侵害される」という議論は既に破綻してしまったためだと思われます。特に、法律や条例等で公開される情報は公開されることが滋賀県情報公開条例に明記されているので、地方自治法が公の施設である同和地区施設の場所の公開を予定している点と、事実市町の条例で公開されている点を主張されると、裁判所としてもどうしようもないことになります。

すると、非公開ありきで判決を出すには「県の事務事業」という個人の権利利益とは関係ない議論を進めるしかないわけです。

この状況でも、最高裁が「滋賀県の同和地区施設マップを作ることは人権侵害だ」という趣旨のことを言うのか注目されます。また、「同和地区住民と分かると権利利益が侵害される」と言うのかどうかも注目でしょう。おそらく、さすがにそれは言いたくないので最高裁が6条1号を排除したのだと思いますが、今回の裁判はかなり異例な展開なのでどうなるのか最後まで分かりません。