鳥取市下味野の旧赤池部落の同和減免の関連文書の公開について争っていた件、広島高裁松江支部に控訴しましたが、10月9日付で判決が出ました。判決文はこちらです。
結果は「棄却」つまりは非公開ということなのですが、いくつか認められた事実があります。
- 美和小学校で下味野地区に同和地区が存在することを明らかにする指導が行われていたこと
- 市報などに同和地区に関連して下味野という地名が出されていること
- それらの結果、下味野地区に同和地区が存在するとの情報は鳥取市において相当程度流布されている
しかし、それでもなお鳥取市が同和地区の場所を公にしていたことにはならないそうです。ここまでくると、情報公開条例が慣行により公にしている情報であれば個人に関する情報でも公開するという規定は無意味なのではないかと思います。
そしてもう1点、これが最も重要なのですが、憲法84条が定める租税法律主義は、同和減免の対象地域外の住民に対象地域を明らかにすることを要請しているとは言えないと判断されています。とすると、田舎によくある過疎地減免のようなものも、対象地域を公示しなくてもよいということになります。もちろん、そんな事をしてしまえば、事情を知る一部の人だけが減免の恩恵に預かることが出来るということになるので、あり得ないことだと思いますが…
もちろん、上告して最高裁判例として確定させます。
一方、鳥取地裁で同和減免の違法確認を求めている件、裁判所がどうしても判決で下味野という名前を出したくないようで、なぜ請求対象を下味野に限定しているか説明して欲しいということなので、以下の準備書面を提出しました。
以前説明した通り、地区を限定しているのは、そもそも住民監査請求で下味野地区に限定して税の徴収を求める請求をしているので、法律上その範囲を超える請求はできないということです。ということなので、原告の意思がどうであれ、法律上裁判所が違法確認をするためには、下味野という地区を特定しなけばなりません。
そもそもですが、裁判の公開は情報公開制度とは別個のもので、個人に関する情報は非公開というような情報公開制度の論理を裁判の手続きに持ち込んだら、裁判自体が成り立たなくなります。例えば、自治体が個人に対して不正な支出を行った場合に、「個人の権利利益に関わるから、裁判で個人を特定するな」という理屈は通らないでしょう。それなのに、単なる地域名にすぎない同和地区名に裁判所が反応するのは、いかに同和が特殊な扱いをされているかという証左でしょう。それでいて、国民に対して「差別をするな」と言って平等な扱いを求めるのはおかしなことです。
矛盾に矛盾を重ねるような状態になっていますが、今後収拾がつくのか注目されます。