法務省が再び個人情報保護審査会の答申を無視

以前お伝えしたとおり、内閣府情報公開・個人情報保護審査会は大阪市同和地区一覧は公開情報であり、開示すべきと判断しました。しかし、今月1日付けの裁決書で、法務省は答申を無視し、大阪市同和地区一覧を不開示としました。以下がその裁決書です。

裁決書-H23-12-1.pdf

裁決書の5ページでその理由が説明されています。

 それらは、その内容が事実であるか否かを問わず、差別を助長するおそれのある情報として、人権擁護機関が長年にわたしその排除に取り組んできた対象そのものである。そのような情報を開示することは、それ自体上記取組と相反するものであって、人権擁護機関に対する国民からの信頼が失われ、人権侵犯事件の処理において、関係者からの情報提供、調査への協力を得ること等が困難になることが明らかである。このような事態は、人権擁護行政に係る事務の適正な遂行に対する重大な支障となるものである。

さて、審査会の答申では、この情報を開示すべき2つの理由が示されていました。1つは、これは情報公開ではなく個人情報の開示であるので、本人がブログに掲載している情報を本人に開示してもこれ以上の情報の拡散はあり得ないことです。もう1つは、大阪市同和地区一覧は個人情報ではない上、既に大阪市人権協会が出版頒布し、図書館でも閲覧できるものなので、開示することで誰かの権利利益が侵害される余地はないことです。

法務省はこの2点を完全に無視しました。人権救済法の議論がされている中で、法務省としてはメンツを潰したくないのでしょうが、個人情報保護制度や情報公開・個人情報保護審査会の権威を犠牲にしてまで守るべきものなのか、気になります。

そもそも、法務省は最初の段階で何度も対応を誤りました。まず、大阪市人権協会の出版した本をブログで引用したことを人権侵犯事件として扱ったことが理解に苦しみます。個人情報開示請求された後も、鳥取県みたいに全部開示しておけば、私は審査請求できないので、知らん顔をしていても全く問題はありませんでした。どうせ同和がらみということで、めったに表沙汰にはならないでしょうし。

今までの経緯を以下にまとめました。

2010年2月15日 当時FC2ブログを使用していた鳥取ループに、「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」は「ざる法」という記事を載せる
2010年2月20日 同様に大阪市の消滅した同和地区(中津・舟場)を載せる
2010年4月21日 FC2から大阪法務局から上記の2つの記事に対して削除要請があったと警告が来る、こちらから大阪法務局に電話して要請を拒否
2011年1月11日 大阪法務局に「人権侵犯事件記録」を個人情報開示請求
2011年3月28日 事件記録を部分開示。記録内にある大阪市同和地区一覧が黒塗りにされる
2011年4月11日 黒塗りにした大阪市同和地区一覧の開示を求めて審査請求

個人情報開示制度というのは比較的新しい制度ですが、この制度ができた背景も、実は同和がらみだったりします。どのようなものかは、こちらをご覧ください。

コメント

コメント(1)

  1. カミツレ茶 on

    正直といえば正直な裁決ですねえ。

    同和関連でなにかあったときに、「関係者からの情報提供、調査への協力を得ること等が困難になることが明らかである」から厭なんだと、つまり運動団体と仲が悪くなるのが辛くてしようがないということですよね。