低価格入札防止のために企業連から県に圧力

県により情報公開された資料によれば、遅くとも2003年(平成15年)以降、部落解放鳥取県企業連合会(企業連)から低価格入札を防止するよう県に対して要請されていました。
2003年5月15日に鳥取市解放センターで行われた、県県土整備部、農林水産部と企業連との協議会で、企業連側から次の協議事項が出されています。

近年、県発注工事において低価格・同額入札による抽選落札が急増している事を踏まえ、低価格入札防止のための履行保証割合の引き上げや前払い金の引き下げなどの導入が図られているところであるが、導入後においても低価格入札が相変わらず続いている。これらの現状についての報告と今後の対応について明らかにされたい。

この部分は、実は手書きで修正されています。修正前の文章は次の通りです。

近年、県発注工事において低価格・同額入札による抽選落札が急増している事を踏まえ、低価格入札防止のための履行保証割合の引き上げや前払い金の引き下げなどの導入が図られているところであるが、最近これら制度に抵触している業者がいるにもかかわらず、何ら行政指導がなされていない現状が報告されているが、これら現状についての報告と指導について明らかにされたい。

原文は、以下のファイルをご覧ください。
[2003.5.7]企業連役員との協議会
[2003.10.31]企業連役員との総括協議会
手書きで修正された経緯は不明ですが、県側の回答書は修正後の文面で作られていることから、協議事項が県庁に送られた後、協議会の前に修正されたものと考えられます(低価格入札が何らかの制度に「抵触」するわけでもなく、県が「指導」するわけにもいかないからでしょう)。
それに対する県側の回答は以下の通りです。

低価格落札への対応策としては、昨年5月に「配置技術者増員制度」を、本年2月に「履行保証割合の引き上げ及び前払い金の引下げ制度」を導入しましたが、御指摘のようになかなか効果が出ていないのが現状です。
本年4月に新たに設けた「地域貢献度」の制度において、県内業者を活用できるのに活用しなかった場合は減点対象とすることとしていますが、著しく安く工事を請け負う県外業者を下請けに使うことが低価格落札を可能にする一因となっていることから、当該制度も低価格落札への防止策としての効果が期待できると考えています。
今後とも、低価格落札への対応については、国や他の都道府県の事例も参考にしながら、積極的に取り組んでいきたいと考えます。

実際に県側は対策を講じており、2004年(平成16年)5月27日の協議会では倒産防止策として次の回答をしています。

特に、過度の価格競争が建設業者の体力喪失に拍車をかけ、倒産を促進している現状に鑑み、低価格入札防止のために、経営診断指導など様々な対策を講じた結果、平成15年度は、その発生率が平成13年度なみに低下したところであるが、今後も機動的に対応してその抑止に努めてまいりたい。

同様に2005年(平成17年)6月15日には次の回答をしています(原文のママ)。

過度の価格競争が建設業者の体力喪失に拍車をかけ、倒産を促進している現状に鑑み、低価格入札防止のために、経営診断指導など様々な対策を講じており、低入札の状況は平成15年に比して平成16年は減少しいる。今後も機動的に対応してその抑止に努めてまいりたい。

さらに、2006年(平成18年)5月25日の回答は以下の通りです。

県土整備部では、新たな対策として、本年度、経営診断要領を見直すこととしている。
これは、経営診断の基準を厳しくすることにより、低価格入札の抑止に努め、倒産になることを未然に防ぐよう考えている。

(次回に続きます…)

「人権侵害の救済に関する法律」の制定のために鳥取市から岩美町に働きかけ?

「人権侵害の救済に関する法律」の早期制定を求める意見書の提出のついて

画像は、平成17年2月24日付けで岩美町議会に出された一通の陳情書です。件名は『「人権侵害の救済に関する法律」の早期制定を求める意見書の提出のついて』となっています。(議長名の部分は資料提供者の希望で消しています。)
ご存知の通りこれは国会で審議された「人権擁護法案」のことで、鳥取県下の自治体はほぼ例外なくこの法律の制定を推進してきました。もちろん、この陳情は岩美町議会で可決され、次の意見書が提出されています。
「人権侵害の救済に関する法律」の早期制定を求める意見書

提出者は「部落解放・人権政策確立要求鳥取県実行委員会」です。以前の記事でもご紹介したとおり、竹内功鳥取市長が会長をつとめています。
ところで、住所の部分が鳥取市尚徳町116番地となっていますが、ご存知の通りこれは鳥取市役所のことです。鳥取市同和問題企業連絡会のような例もあるので、「部落解放・人権政策確立要求鳥取実行委員会」であればあり得る話ですが、「部落解放・人権政策確立要求鳥取実行委員会」も鳥取市役所の中にあるということなのでしょうか。
早速、鳥取市の人権推進課・同和対策課に問い合わせてみました。

私) 「部落解放・人権政策確立要求鳥取実行委員会」は市役所内にあるのか?
鳥取市) 鳥取実行委員会の事務局は鳥取市役所にある。
私) 関連団体の「部落解放・人権政策確立要求鳥取実行委員会」もそうか?
鳥取市) 「県連」にある。
私) 県連とは?
鳥取市) (解放センターの)部落解放同盟鳥取県連。
私) 岩美町議会に提出された陳情書には「部落解放・人権政策確立要求鳥取実行委員会」の名前があり、住所は鳥取市尚徳町116番地となっていた。県連であれば幸町ではないのか。
鳥取市) 互いに協力関係があるのでどちらということもないが、正式には尚徳町ということなのだろう。

ちなみに、「部落解放・人権政策確立要求鳥取実行委員会」には、鳥取市から補助金が出ています。つまり、以下のような構図になっているということです(端が切れる場合は、図をクリックしてください)。
鳥取市-岩美町相関図

この件は、さらに実態を解明すべく取材継続中です。
追記2006年11月10日
鳥取市役所の中の方から指摘がありました。2002年の特措法切れ以降は行政関係者でも「いわゆる」を付けることがあるそうです。「それでは、陳情書は市の職員が書いたのか?」という指摘には「当時の経緯はよく分からない」ということだそうです。
「記述を消して欲しい」なんて言われましたが、消してしまうのなぜ消したのか分からなくなってしまうので、ここでフォローしておきます。それにしても、鳥取市もオープンになってきました。
追記2006年11月23日
徐々に実態が分かってきました。
「部落解放・人権政策確立要求鳥取実行委員会」の事務局は、実際のところ解放センターにあるようです。
「部落解放・人権政策確立要求鳥取実行委員会」は市役所内にあります。
岩美町に出された陳情書の住所がなぜ尚徳町なのかは…謎です。

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鳥取県による企業連会員への公共工事の優先発注

部落解放鳥取県企業連合会との協議会は県においても毎年定例で行われていることが、県が開示した資料より分かりました。以下は、本年度の協議会資料です。
[2006]企業連協議会.pdf
協議会は県土整備部、農林水産部との間で行われている他、鳥取市同様「同和地区建設業者育成連絡協議会」という名前で各総合事務所においても行われています。同和地区建設業者育成連絡協議会の参加要請は松田秋夫・企業連理事長に加えて、中田幸雄・部落解放同盟鳥取県連委員長の名前で出されています。
鳥取市同様、企業の倒産防止策、会員企業への積極的な指名発注、職員への同和研修について質問が出されています。
そして、実際に県土整備部でも農林水産部でも、会員企業1社辺りの指名件数は非会員より多くなっており、指名されない業者は少なくなっています。鳥取市と異なり、こちらは仕組みが分かっていて、県土整備部の回答では「指名選定における地域貢献度の部分で5点加算をすることにより、積極的な指名発注につながっていると考えている。」としています。
以前の記事でも指摘したとおり、「鳥取県県土整備部建設工事指名業者選定要綱の施行について」という文書に次の記述がありました。さらに、この記述は今年の4月10日に「鳥取県県土整備部建設工事指名業者選定要綱」に組み入れられています。

(規定例1)
部落解放鳥取県企業連合会が実施する建設業者のための研修(○○県土整備局長が指定するものに限る。)を受講した同会の会員である有資格者については、歴史的・社会的事情によりその中でなければその者は受注が困難と認められる区域(その者について○○県土整備局長が指定する区域とする。)内で施工される対象工事に限り、5点を加点する。
(規定例2)
部落解放鳥取県企業連合会が実施する建設業者のための研修(○○県土整備局長が指定するものに限る。)を受講した同会の会員のうち、当該年度において同種県工事の請負契約を未だ締結したことがない有資格者については、5点を加点する。

企業連が同和地区企業の団体であることを考慮すると、この規定の意味するところが明らかになります。「規定例1」は、同和地区を対象とした公共工事は企業連に優先して発注されるということです。「規定例2」は、さらにそういった工事が持ち回りに近い形で発注されるということです。
結果、同和地区の建設業者が同和対策の公共工事を受注するためには、企業連に入会せざるを得ない状態となっています。
なお、県からは「建設業新分野進出研究調査事業補助金」の実績が示されており、平成17年では県全体で15件、うち会員企業2件となっています。件の資料では土木工事の有資格業者は県全体で733、うち企業連会員は200なので、企業連会員に対する新分野進出事業はあまり進んでいないようです。
(次回に続きます…)

鳥取市と部落解放鳥取県企業連合会との交渉

今年の8月10日、鳥取市解放センターにおいて、鳥取市と企業連との協議会が行われました。市関係者によれば、企業連側からは松田秋夫企業連理事長(八頭町議会議長)が、市側からは綾木修都市整備部長が挨拶に立っています。
以下が情報公開条例に基づいて開示された資料です。
[2006]同和地区建設業者育成連絡協議会-参加要請
[2006]同和地区建設業者育成連絡協議会-回答書
[2006]同和地区建設業者育成連絡協議会-添付資料
なお、この協議会は毎年行われており、鳥取市からは過去5年間分の資料が開示されました。
今年の協議会では、企業連からは建設業者の倒産防止策、指名発注状況、同和研修の実施状況について質問が出され、さらに会員企業への積極的な指名発注が要請されています。それに対し、市側からは会員企業と会員外企業の指名発注状況を比較した資料と、同和研修の実績資料が出されています。
どのような仕組みになっているのか詳細は不明ですが、2005年度の公共工事は実際に企業連会員企業に優先して発注されています。別の市関係者によれば、2002年に同和対策の特措法が切れるまでは、特に同和対策の公共工事は企業連に対してほぼ独占的に発注され、「規模の小さな企業があぶれないように」持ち回りに近い形で発注が行われていたと言います。しかし、過去の指名発注状況資料によれば、少なくとも2004年度までは同和地区を対象とした公共工事の指名発注は、ほとんど企業連会員に対して行われていました。
協議資料の質問事項に「わけても企業連建設業者に倒産が相次ぎ深刻な状況となっている」とありますが、実際にそのような状況のようです。ある企業連会員企業によれば、公共工事は明らかにに激減しており、営業努力で民間の工事を受注してなんとか持っている状況ということでした。また、別の県内関係者によれば、企業連役員の関連企業でさえ特措法が切れたことの影響は深刻で、財務状況は2003年以降急激に悪化し、ピーク時の半分ないしは3分の1程度の売り上げしかない状況ということです。
県の実態調査によれば、県全体の事業所のうち建設業の占める割合は10.9%(平成16年)に対し、県下同和地区に限れば49.0%(平成17年)と異常な高率を示しており、同和地区の産業構造の再編が遅れた結果、国の緊縮財政が同和地区を直撃していると言えます。
なお、このような状況でも鳥取市では要請通りに全職員(1,769人)同和研修が行われています。
(次回に続きます…)

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鳥取県による「部落解放鳥取県企業連合会」に対する加点制度は事実上の同和対策

以前の記事でご紹介した、「部落解放鳥取県企業連合会(企業連)」に関連する件の入札制度が事実上の同和対策、同和地区企業優遇であることが明らかになりました。企業連については、企業連の主催する研修は企業連会員企業しか受講できないことが分かっていますが、それではなく企業連には同和地区企業しか入会できないということです。
県内関係者から企業連には同和地区企業しか入れないのではないかという声が聞かれたのと、企業連に電話で問い合わせたところ「住所を明かさないと入会方法などは答えられない」という対応をされたため、前々から疑惑はありましたが、鳥取市に対する情報開示請求の結果から明らかになりました。
企業連名簿-不開示決定通知書

鳥取市同和対策課によれば、企業連会員はすなわち同和地区企業である、ということです。(上記の文書には開札筆記を閲覧できるとありますが、個々の同和地区企業を特定して洗い出すわけにもいかないので、企業連に限っての受発注状況の詳細は不明です。概要については、追ってレポートします。)市関係者によれば、こういったことは県内の建設業者、公共事業に携わる役所関係者であればほとんど周知のことであろう、ということでした。
なお、鳥取県管理課によれば、そのような実態は把握していないということです。2004年7月13日の「県民の声」でも、県は以下の回答をしていました。

部落解放鳥取県企業連合会の配点についての御質問にお答えします。部落解放鳥取県企業連合会は、任意団体なので、その設立運営について公的な許認可や監督は受けず、加入条件等は専ら同団体自身が定めています。当該団体は、社会的に弱い立場に置かれがちな同和地区業者の経営の安定・強化を促進して同和問題の解決を図ることを目的として、様々な活動を行っています。建設業者を対象とした同和地区建設業者育成連絡協議会の開催も、そうした活動の一つですが、県の格付においては、当該協議会に出席した建設業者について、格付点数を加点しています。
これは、当該団体の会員に対する加点ではなく、あくまで当該協議会に出席し、同和問題や零細業者の育成等について理解を深めようとする建設業者に対する加点なので、会員であっても当該協議会に出席しない者は加点されません。同和問題の解決を図るためには、当該協議会を会員でない者の意識啓発の場にもすることの方が効果的と思われますので、会員ではない企業が当該協議会へ出席した場合にも、加点するかどうかについて関係者と相談してみたいと思います。いずれにしましても、地域改善対策に関する特別措置法は失効しましたが、同和問題が完全にはなくなっていない現状においては、その解消のため、ソフト面を中心とした特別な対策もある程度必要だと考えています。これについては、特別な立法措置がなくてもできることはあり、当該協議会の受講加点もそうした施策の一つと位置づけています。

しかし、実態は「会員でない者」どころか、同和地区企業しか加点研修に参加できない状態が続いています。
このことについて、企業連に電話取材を申し込みましたが、受付担当者によれば、「執行部とも協議したが一切コメントできない」と答えています。
(次回に続きます…)