同和行政の恩恵を受ける県民(2)

なぜ、鳥取県はこれほどまで熱心に同和対策を行ってきたのか?その理由の1つとして、鳥取県が「貧乏県」であることが挙げられます。ご存知のとおり、鳥取県は日本で最も人口が少なく、県民所得も低い方で、県税のような自主財源は期待できません。そこで、地方交付税をはじめとする国からの歳入に頼ることになります。
2002年以前、同和対策や地域改善などの特措法があった時代には、国庫からの補助が受けられる同和対策事業は地方の役人にとって、非常に魅力的なものでした。1980年代、同和対策により同和地区の環境が改善され、一部では地区内と地区外の逆転現象が出るほどになると、「なぜ同和地区だけが…」という不公平感が広がり始めました。そういった声に対して、同和教育や研修などの「啓発」の場で主張されたのが、同和対策によって周辺地域にも恩恵があるということでした。
県内の役所・役場では「同和対策は国からの補助が出るので県民の懐は痛まない、どんどん同和対策を推進しよう。」といった趣旨の研修が行われたと言います。実際、同和地区指定されている地域での施設の建設、道路の整備などを同和対策という名目で行えば、自治体の負担は軽くて済みました。結果として、浮いた予算を周辺地域に回すことができました。「どちらにしても国民の税金じゃないか…」と陰口を叩かれつつも、やはり国から予算を取ってこれるという魅力に勝るものはありませんでした。
鳥取県では、特措法が切れた現在でも、環境改善補助事業といった名目で事実上の同和対策事業が行われています。
人権救済条例や国の人権擁護法案を推進してきた「部落解放・人権政策確立要求」運動に鳥取市をはじめとする自治体が肩入れするのも、そういった事情があるようです。このことについて、鳥取県東部の県境の町、智頭町人権同和政策室からお話を伺うことができました。
私: 役場の横に「部落解放基本法を制定しよう」といった横断幕が出てるんですけど、あれは町が出しているものなのでしょうか?
智頭町: あれは早くから、国の方や県レベルでも(部落解放基本法制定要求)国民運動がありまして、町として入っているものです。今は(部落解放・人権政策確立要求運動に)名前が変わっていますが、鳥取県の市町村はみんな入っていると思います。
私: 鳥取市では竹内市長が入っていますが、智頭町はどうですか?
智頭町: トップ(町長)と教育長が入ってます。
私: (部落解放・人権政策確立要求運動は)人権救済条例や人権擁護法を推進していますが、それは自治体として行っていることなのでしょうか。
智頭町: 差別解消に向けて、全国的な流れの中で人権擁護法案を推進したわけですが、鳥取県が条例を作ったもの国の法案が廃案になって、流れてしまったから全国ネットになってしまったんでしょうね。
私: (部落解放・人権政策確立要求運動は)実質解放同盟ですよね?
智頭町: いや、これは行政ですよ。国の法律があって、補助金など財政措置が欲しいですからね。県レベルでも、法律があって、財政措置は欲しいでしょ。そして、鳥取県だけではできないことですから、全国的な運動として取り組んでいるわけです。
私: 役人としては、予算が欲しいでしょうから、やめられないのでは。
智頭町: そうでもないですよ。今は予算措置もないですから。地元で差別があれば出来る限りのことはしたいし、高齢者や障害者の問題にしても要求があれば出来る限りのことをするのが行政でしょう。
次回に続く…

コメント

コメント(1)

  1. なめ猫♪ on

    行政・企業・自治体を巻き込む人権政策確立要求

      情報公開で明らかにされた人権擁護法案の制定運動に関わる運動体関係の資料をこれから明らかにしていきたいと思います。 とりあえず帰宅して詳細は載せますので、文書の紹介