部落地名総鑑のセールストークと八鹿高校事件

1970年代に企業に出回ったという、「部落地名総鑑」。今となっては現物が残っているかどうかも分からないので、どのような内容だったのか調べようがないのですが、その購入案内の一部が滋賀県の「採用にあたって」(74、75ページ)に、滋賀県・滋賀県教育委員会の見解の中で引用されています。

…同和行政については、各政党は重大な社会問題であるとして、激論をかわしているものの抜本的な解決策が何らなされていないのが現状である。…
…八鹿高校問題の様に暴力事件、リンチ事件が発生して社会的な問題となっている。
 これは一高校の問題であるとして見過ごすことはできない。この様な事は、企業においても起こりえないとは断言できない。これらの人々の採用が果たして妥当であるかということは、封建時代のイデオロギーとして残されたものであり問題ではないとすますことが出来るでしょうか。
 観念的、心情的に同情することも考えられるでしょう。八鹿事件に見る如く行動の多くに疑問が山積しているのではないでしょうか、問題は今、大きくクローズアップされている。企業において人事担当の各位にはこの点について如何様にお考えでしょうか。
 現在、我が国におきまして、昭和37年の総理府統計によると、4,160部落、111万人をこえる人口千人に対して11.8人という比率が出ている。実情は5,366部落を超えて現存している。私達は、この際、この様な事実関係を正確に認識して企業百年の将来のためにも誤りなきを期してゆかなければなりません。
 今般、企業の担当の各位に、その実態と実情を詳述した「部落地名総鑑」を提供して人事調査と人事考課に一助の資料としてお手許に届けたいと考えております。」

つまり、「部落民を会社に入れると、八鹿高校事件のような暴力行為を起こしかねないから、企業がリスクを回避するためのツールになる」というのが部落地名総鑑のセールストークだったわけですね。

当時、部落地名総鑑が出回ったのは、決して、「部落民が汚れているから」というような迷信に基づいたものではなくて、当時は(ある意味今でも)当たり前だった過激派や共産党排除のようなことの延長線上にあったわけです。

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