滋賀県の準備書面と乙号証

地域総合センターの名称・位置、同和地区名等の公開を求め滋賀県を提訴した裁判で、2011年1月27日13:20開廷予定の第2回口頭弁論に向けた被告準備書面と証拠書類をアップロードしました。

こちらからご覧ください。

準備書面の内容をつぎの通り要約しました。口頭弁論の1週間くらい前までに、これに対する反論の準備書面を用意することになります。

第1 請求の原因などに対する認否等

3 同和地区の定義について、同和対策審議会答申(乙5)によれば「当該地方において一般に同和地区であると考えれているもの」である。
県は「同和対策事業の対象地域を含む被差別部落をいう」と定義する(甲3)。
しかし、定義により差別が起こるのではなく、同和地区と見なされた地区に関係を持つ人が同和地区出身者と認識されて差別され得る。

4 同和対策地域総合センター要覧は部外秘として番号管理のうえ配布し、不要になったら廃棄するように徹底されていた。

7 原告の以下の説明は認める。
・部落解放同盟滋賀県連の名簿が流出したが、大きな問題にはなっていないこと。
・単純に住所だけで同和地区出身者を識別できないこと。
・住宅地図だけで地域総合センターの周辺住民が特定できること。
・県に説明通りなら、地域総合センターの周辺に住むと就職や結婚で差別を受けること。

第2 被告の主張
1 同和問題
(1) 同和対策審議会答申の説明
(2) 同対法、地対法、地対財特法の説明
(3) 同和対策事業の終了と、地域改善対策協議会意見具申の説明

2 差別事業および意識調査結果等
(1) 昭和50年以降の部落地名総鑑事件の説明
(2) 滋賀県の意識調査で同和地区の家を買うことの是非について「いちがいにはいえない」という答えが多い。
奈良県の意識調査でも「問題があるとは一概にいえない」という答えが多い。
また結婚について考えないすように言うが11.7%あった。
兵庫県、岐阜県の意識調査でも結婚については奈良県とほぼ同様。

3 現在被告が実施している同和対策事業等
(1) 同和対策の一般対策への移行、人権教育のための国連10年、人権教育法の説明
(2) 滋賀県の今後の同和行政に関する基本方針、人権教育のための国連10年滋賀県行動計画、滋賀県人権尊重の社会づくり条例、滋賀県人権施策基本方針、人権意識高揚のための教育・啓発基本計画についての説明。

4 本件対処公文書および非公開部分について
(1) 請求対象文書
本件公文書1 同和対策事業の地図
本件公文書2 滋賀県同和対策新総合推進計画
本件公文書3 同和対策地域総合センター要覧

(2) 同和対策事業の地図は工事が集中している場所が同和地区だと分かるので、個人不利益情報、事務事業情報として非公開とした。
(3) 滋賀県同和対策新総合推進計画は同和地区名が一覧できるので、個人不利益情報、事務事業情報として非公開とした。
(4) 同和対策地域総合センター要覧は同和地区名が一覧できるのと、センターの位置から同和地区の場所が分かるので、個人不利益情報、事務事業情報として非公開とした。

5 非公開理由1(個人不利益情報関係)
(1) 条例第6条第1号の説明
(2) 個人不利益情報が広範に渡ること、法令等で公にされている情報は閲覧制限が設けられている情報ではなく、また時間の経過により非公開とされることもあることの説明。
(3) 本件情報の類型
類型ア 同和地区名
類型イ 同和対策事業に関する地図
類型ウ 地域総合センターの位置
類型エ その他同和地区名や所在地を推測させる情報

(類型ア)
同和地区名は通常は個人に関する情報ではない。
同和地区名は同和関係者に対する蔑称として使用されている。
差別が残っている現状では同和関係者には知られたくない情報である。
地区名が分かれば住宅地図や電話帳から同和関係者を確認できる。
結婚や就職で差別に利用される。
県内の同和地区名が網羅されたものは滋賀県版部落地名総鑑となり得る。
よって公にすることにより個人の権利利益が侵害される。

原告は同和地区名は滋賀の部落や設置管理条例から知ることができると主張する。
滋賀の部落は差別に使わない意図で出版されたものであり、滋賀県立図書館では閲覧制限され、国立国会図書館でも閲覧制限がされ得る。
設置管理条例は施設の名称や位置を定めているが、施設のある地域が同和地区であることを明らかにするものではない。
地域総合センターが同和対策事業として設置されたことを知るのは一部の人だけである。

(類型イ)
類型アの前半の説明と同様

(類型ウ)
地域総合センターは現在は地区住民の要望で名称変更や移転している例もある。
要覧の作成当時はセンターを同和地区内に置き、同和地区名を冠していることが大半だった。
昭和53年の部落地名総鑑は同和対策事業の資料(同和地区精密調査報告書のことと考えられる)をもとに作られた。
他は類型アの説明と同様。

(類型エ)
類型ウの説明と同様。

6 非公開理由2(事務事業情報)
(1) 条例第6条第6号の説明
(2) 当該条項が例示列挙であることの説明。
(3) 本件情報の公開は部落差別の解消を妨げる。
原告がブログに掲載した部落地名総鑑に対する法務省の削除要請を無視したり、部落解放同盟員の名簿を載せたことは差別を助長する悪質な行為である。

第3 結語
1 情報を非公開としたことは適法
2 原告の請求は棄却・却下されるべき

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