バス会社に送られた差別手紙

2004年3月1日付とっとり市報より。

私たちが生きている現代社会には、部落差別をはじめとするさまざまな差別を生み出す仕組みが存在しています。
 
例えば、企業の採用時における身元調査、結婚時における釣書・聞き合わせ、学歴・能力至上主義による人を評価するシステム、さらに古くからのしきたり、迷信を基にした行為が差別をつくり出す要因となっています。
最近では、インターネットによる書き込みなど電子空間を悪用した悪質な差別事件も相次いでいます。
バス会社に届いた 
一通の差出人不明の手紙

数年前、鳥取市内のあるバス会社に差出人不明の一通の手紙が届きました。手紙に書かれていた内容は、バス停を知らせるアナウンスを流す時に、このバス会社が市民啓発の取り組みとして行っている「差別をなくしましょう」などの人権問題に関わるアナウンスを今すぐやめて欲しいというものでした。
その手紙に差別的な内容があるとして、バス会社から鳥取市と運動団体に報告がありました。
誰が書いたものかわかりませんが、「○○の住民より」と鳥取市内のある地名が書かれていたため、自治会長にも相談し、手紙についての同和問題学習会を開くことになりました。この時点では、手紙の差出人が特定されるとは誰も考えなかったのです。
孫娘の相手からの聞き合わせ
学習会が終わって数日後、「あの手紙を書いたのは私の母です」と母親と一緒に謝罪に来られた男性がありました。母親の話では、孫娘の結婚に際し、相手から聞き合わせが行われ、「部落」出身と間違われたことが手紙を書いた原因であることが明らかになりました。母親がそのような差別手紙を書くようになったいきさつは、次のようなものでした
私の孫娘に結婚話があったが、結局うまくいかなかった。原因を考えていると、近所の人から孫娘の「聞き合わせ」があったとのこと。そればかりか、その人は「何の問題はないが、ただ気にかかることがある。それは、アレ(部落)ではないか」といっていたとのこと。自分の家は「部落」ではないのに、なぜ間違われるのか不思議だった。よく考えてみると、私がバスで鳥取駅から家に帰る時、いつも私の家の近くになると「次は○○です」とバス停のアナウンスが流れ、私が降りようと立ち上がった時に「人の平等は…」というアナウンスが流れる。乗客の目には、「私が部落の人間」と間違われているのではないか。といつも憤慨しながらバスを降りていた。聞き合わせで部落と間違われたのはこのバスのアナウンスが原因ではないか。「何の恨うら
みがあって、若者の背に刻印を押すのですか。今すぐあのアナウンスを止めて欲しい」という思いで手紙を書きました。(要約)
差別のない社会へ
この男性が部落差別をした自分の母親を勇気を持って告白した理由には、一つには、一番身近にいて信頼していた母親が部落差別を行ったことに大きな衝撃を受けたことがあります。二つには、自分の子どもに「聞き合わせ」という身元調査が行われた今の社会システムが許せなかったことが考えられます。差別は決して他人事ではなく、自分自身の問題でもあったことに気付いたのです。
このように私たちの身の周りには、結婚時の釣書の交換や聞き合わせなど差別につながりかねない現実があります。まずは私たち自身が日常で行われている差別を見抜き、誤りを正すようになること。その積み重ねによって差別のない社会へと一歩でも近づけるよう一人一人が努力を続けることが大切なのです。


どこのバス会社なのかも、どの辺りのことなのかも、大体私には想像がつきます。鳥取市でバスに乗っていると決まった場所で「差別のない明るい社会を作りましょう」と社内アナウンスが流れることがありました。それが部落と関係あるかどうかなんて考えもしなかったですけどね。今年の夏、久しぶりにバスに乗ってみたのですが、毎回流れるはずのこのアナウンスが流れなかったです。この一件が影響しているのかは分かりませんが。
この母親は悪くないですよ。大体、聞き合わせというのはこの母親の勝手な想像ですし、結婚差別が現存すると、さんざん市民の不安を煽ってきたのは行政側ですからね。
ちなみに、聞き合わせなどしなくても、どこが部落なのかは分かります。少し前まで市が同和研修で「被差別部落訪問ツアー」をやって、どこが同和地区なのか市民に教えていましたし、鳥取市内の同和地区の地名が分かるような文書はインターネットで公開されてますからね。

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