人権局は「県外条項」が無効であることを早くから認識していた

鳥取県人権局が早くから人権救済条例を県外の事案に適用することは不可能であることを認識していたことが分かりました。人権救済条例の県外適用に関する条文は以下の通りです。

第17条 何人も、本人が人権侵害の被害を受け、又は受けるおそれがあるときは、委員会に対し救済又は予防の申立てをすることができる。
…略…
3 第1項の申立て又は前項の通報(以下「申立て又は通報」という。)は、当該申立て又は通報に係る事案が次のいずれかに該当する場合は、行うことができない。
…略…
(5) 申立て又は通報の原因となる事実が本県以外で起こったものであること(人権侵害の被害を受け、又は受けるおそれのある者が県民である場合を除く。)。

この県外適用の規定が地方自治法上無効であることは、条例の成立後の批判を受けて片山県知事が認めています。しかし、県人権局と片山知事は平成15年から平成16年にかけて鳥取県人権尊重の社会づくり協議会の一部委員による「人権救済制度検討委員会」が行われていた段階で、既にこのことを認識していました。
県が公開した平成16年6月22日の第6回人権救済制度検討委員会議事録から、県外への適用は不可能であることを主張する人権局と、あくまで県外の事案への適用を主張する協議会委員とのやりとりを読み取ることができます。
なお、この検討会の委員は以下の通りです(肩書きは平成17年の「鳥取県人権尊重の社会づくり協議会名簿」によるものです)。

椋田昇一 (財)鳥取市人権情報センター
安田寿子 特定非営利活動法人女性と子どもの民間支援みもざの会
相見寿子 レディースあすか鳥取
光岡芳晶 特定非営利活動法人「すてっぷ」
松田章義 (財)とっとり政策総合研究センター
福間裕隆 鳥取県断酒連合会
國歳眞臣 鳥取大学名誉教授
藤村梨沙 (性同一性障害者の問題に関する取組)

県からは、当時の中島人権局長、堀部人権推進課長、西村人権推進課企画調整係長が参加していました。
会議では以前の検討会をもとに県側がまとめた資料が配布されますが、松田委員から異議が出されます。

松田委員 読ませていただいて、今までの委員会で協議していないことやこういう議論だったかなと思うところがある。たとえば、県外で発生した人権侵害で、県民が被害者・加害者の場合は対象外などいう(ママ)ようなことは話し合っていないと思う。事務局のほうでまとめられたと思うが、冷たいのではないか。さきほど、発生県での対応が原則であると説明されたが、県民が県外で差別被害を被った場合に、県外の役所に申し出ることはないと思う。県内に帰ってきてから、県や人権委員会などに申し出るのが普通ではないか。そのときに、県外の人権侵害は対象としないので、そこの役所に行ってくれというのは実際どうなのか。やっぱり、県民が県外で被害を受けた場合、人権委員会に申し出た場合は、それを受けて、県外の役所にこういう申し出があったが調べてくれないかというような、県外の役所との調整とか斡旋とかいうことを進めていかないと、被害者の救済などできないのではないか。特に、調査が困難だから適用外などというのは冷たい。こんな文言が出てきたらふくろ叩きにあるのでは。ほかにもたくさんある。こういうことを我々がいままでの議論の中で話したかなという疑問を持ちながら、もし我々が話しをしていたとするならば、えらい不見識なことをしたと思う。お尋ねと意見表明ということで、以上。

このことについて県側の西村係長は、県外の事案まで調査するのは手間も時間がかかるので対象外としたと説明しますが、中島局長がそれを遮り、改めて法律上の問題であることを説明します。

中島局長 今の説明は違う。県の条例というものは、基本的に鳥取県の中でしか効力が及ばない。だから、県外で発生したものは、基本的にこの条例の効力が及ばない。ただ、言われたように鳥取県が他県に対し、県民の人権侵害の相談を受けて必要な対応をとるように言うなどの事実上の行為は行うが、条例にしても、法律にしても、法律なら国の区域内、県の条例なら県の区域内、市町村の条例なら市町村の区域内にしか及ばない。だから限界がある。そういう意味で県外のものは対象としないとしたもの。

しかし、これがきっかけで、県側は他の委員からも集中攻撃を浴びることになります。
(次回に続く)

コメント

コメント(1)

  1. 井上 on

    脳に入る事件について聞いて。犯人精神病院入院させると賞金出る!