鳥取市同和対策総合計画(3)

鳥取市同和対策総合計画では、同和地区の子供の学習状況についいて、次のように書かれている。

平成12年( 2000 年)に実施した「学力・生活実態調査(小学校4年生・中学校3年生)によると、地区児童・生徒の学力( 国語・算数・数学)は、地区外と比べて、小学校4年生の正答率の平均においては差が見られませんが、5段階評定で見ると、二極分化の傾向が見られます。一方、中学校3年生の偏差値の平均においては差が見られ、5段階評定でも、学力の低い層が地区外生徒に比べて多く見られます。このように、学力の問題は依然と解決していません。また、生活面においても、家庭学習や読書の習慣が確立していない、テレビ視聴の時間が多いなどの児童・生徒が地区外より多くあり、部落差別の結果として生じてきた生活実態の改善や向上を図ります。

これは少し不可解なことである。鳥取市では同和地区を有する学校には同和加配教員が配置され、教育面では優遇されている。私が実際に見てきた例では、同和地区の子供は週一回、放課後の学習会に通っていた。実際に、次のような記述がされている。

また、学力向上推進事業として、夏期学習会と補助教員の配置・保護者学習講座等を開設してきましたが、今後とも地区進出学習等では、個別指導を徹底するとともに、児童・生徒が主体的に学習に取り組んでいけるよう自主性を育てること、自ら差別を解消しようとする学力や態度を育てること、将来への確かな目標を持ち、それを実現しようとする意欲を育てることを重点とした指導を行います。

こういった施策は何十年も前から行われているはずで、今さら「部落差別の結果として生じてきた」といった判断をするのは妙である。学習能力に格差があることに原因があるとするなら、「自ら差別を解消しようとする学力や態度を育てること」というのがイデオロギー的なもので、基礎的な学習能力につながってこなかったか、あるいはそもそも学力に問題があるという認識自体が間違っているかのどちらかである。
あまりに変な記述だったので前回は無視したが、「同和地区における差別実態の課題」として次のように書かれている。

保育所児童については、「保育所児童実態調査」の結果で、片付けや当番活動を最後までやりとげようとする姿や、自分の気持ちを表現しようとする姿などがうかがえますが、我慢することや絵本を楽しみ、話の内容を遊びにとりいれたり、イメ-ジ豊かに表現したりすることなどに課題がみられます。
また、前回平成7年(1995年)の調査では、地区外児童にくらべて数値の高かった異年齢児とかかわる姿も減少してきていると思われます。このことは、おとなのかかわりや語りかけのあり方、おとな同士の人間関係の希薄化などに要因があると考えられます。

幼児の行動まで「差別実態」に結びつけるのがそもそも間違いな気がするが、鳥取では実際に「同和保育」や「解放保育」といったことが行われている。
鳥取にはいわゆる「同和保育所」というものが存在する。行政的にそのような区分があるわけではないが、同和地区の子供のために建設された保育所のことを一般に同和保育所と呼ぶようである。とは言え、実際のところ現在では同和地区関係者以外の子供が80%以上を占めている。
かつて、このような保育所では、ひな祭りや節分といった行事をしない、運動会で順位をつけないといった偏向した保育が行われ問題となったが、現在ではそのような実態はないようである。一般の保育所との違いと言えば、保護者会で同和問題が話題に上るくらいである。
もちろん、一般の保育所でも職員が同和保育の研修に参加する、といったことは度々ある。時には、同和保育に非常に熱心な保母さんもいらっしゃるようである。


新たに鳥取市東部というカテゴリーを作成しました。過去の鳥取市同和対策総合計画にまつわる話題はこちらからどうぞ。
「同和保育」というのは、正直なところ私にも謎の多い言葉です。もう少し勉強してみます。

コメント

コメント(3)

  1. tp-bon on

    鳥取市に住むものですが、どうみても同和地区が同和地区として存在し続けること(行政の区分というか指定や、変な同和教育とかで)によってではないかとおもいます。
    言い訳がそろっていればアウトロー化も楽ですからね。

  2. 鳥取ループ on

    いろいろと複雑な要因がからんでいるようです。歴史的には、鳥取の同和地区は低所得者層が多いという状況がありました。所得と学力には相関性があるので、学力の問題と所得の問題を関連付けることはできます。
    現在、同和地区の住環境は改善され「同和御殿」と揶揄されますが、住宅建設費用の貸付や、所得税の軽減といった優遇措置で「下駄を履かせている」面があり、実質的な低所得状態というのは残っているようです。
    ただ、学力が低いのは低所得が原因である、低所得の原因は部落差別である、ゆえに学力が低い原因は部落差別であるという三段論法は現在では成り立たないと思っています。部落差別がなくなれば学力の問題は解消するのか、と言えばそうではないですから。
    同和教育というのは、本来は識字など学力を向上させて低所得状態を改善することを目的として始められたものです。そして、同和地区の子供たちに教育面での優遇政策が行われたわけですが、どうも現在では学力を向上させるという点で、ちゃんと機能していないようですね。
    高校進学率は一時期地区内が地区外を超えたそうですが、現在は逆に差が開く傾向にあります。大学進学率は横ばいです。
    これを差別の結果と見る人もいるようですが、私なんかは優遇政策が階層化を引き起こしている面が多分にあると思っています。例えば「同和枠」などで楽に就職できるなら、何も大学に行く必要はないですよね。

  3. 今日も机に・・・ on

    イギリスの先行研究などから、低学力は階層差から生じていることが明らかになっています。でもこれは貧乏だから低学力という単純な問題ではないようです。まさに鳥取ループさんがおっしゃっているように、複雑に絡み合っています。この複雑に絡み合った要因を一つずつひもときながら学力を保障していくということが大切なわけで、部落の子ども対象に行われてきた地区進出学習会から学ぶべきノウハウ地区を有しない学校の低学力児童に適用して行くのも大切ではないかと思います。一つだけ言えるのは、同和教育も同和保育も低学力で苦しんでいる子どもが楽しく参加できる授業改善と家庭の教育力向上に努めてきたということです。教員のより深い教材研究と家庭との連携なしに低学力克服はない、というのが同和教育の長年の取り組みから学ぶべき教訓だと思っています。