鳥取市同和対策総合計画(1)

鳥取市においては、平成14年に同和行政の指針として第三次鳥取市同和対策総合計画が策定されており、鳥取市のホームページから見ることができる。前書き部分には当時の西尾迢富市長のメッセージが書かれているが、その内容は同和地区と地区外に格差が見られるということと、県民の差別意識は根深いといったお決まりのものである。
現在問題となっている人権救済条例の国版である人権擁護法については、次のように述べられている。

一方、国においては、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の施行及び「人権擁護法(案)」の検討が行われており、また地方公共団体では、部落差別の撤廃と人権尊重の社会づくりを目的とする条例がすでに施行されております。
鳥取市においては、これらの状況を十分に認識し、「市条例」及び人権に関する諸法をふまえ、部落差別が現存する限り同和行政を積極的に推進していきます。

しかし、以前にも指摘した通り、西尾前市長もこれらの動きを推し進めた張本人である。西尾前市長のもうひとつの肩書きは部落解放基本法制定要求国民運動鳥取県実行委員会会長であって、しかもそれは名目上のものではなく、実際に部落解放基本法制定要求国民運動の大会でスピーチするなど、積極的に活動している。
この文書の「同和問題の現状と課題」を見てゆくと、興味深い事実が分かってくる。
まず、「差別の実態」について次のように書かれた箇所がある。

教育については、「学力・生活実態調査」の結果をみると、5段階評定での二極分化の傾向や学力の低い層が地区外生徒に比べて多く見られるなど、学力の問題は依然として解決していません。また、高校進学率においては、長い期間で見れば地区と地区外の較差はほとんどなくなってきていますが、この2年間はひらく傾向にあります。そして、大学や短大などへの進学率においては、較差はだんだん縮小しているものの、まだ大きな較差があります。このことは、経済的諸問題のほか、学力の問題、子どもたちの進路について展望を持たせていないことなどに課題があると考えられます。

鳥取県、そして鳥取市は同和地区の児童生徒に対して多額の学費補助を行っている。そして、地区児童を抱える学校には同和加配教員を配置し、さらに「地区学習会」という同和地区の児童生徒向けに特別の学習の機会を設けているのである。にもかかわらず、学力の低い層が依然多く、しかも高校進学率の差が開いているということは何を意味しているのであろうか。それは、このような施策による効果は既に飽和状態だということである。つまり、これ以上施策を続行すことは無意味であり、根本的にやり方を変えるか、徐々に打ち切るべき時期に来ていることを意味する。
次に、「差別意識」について次のように書かれている。

県が平成12年(2000年)に実施した「同和地区生活実態調査(鳥取市分)」では、「同和地区の人である」ということで、約4割の人が人権侵害を受けているという調査結果が示されました。また、同時に実施した「同和問題についての県民意識調査」においても、部落差別についての正しい理解はある程度進んできましたが、同和対策事業など利害に関する部分や、同和地区出身者との結婚問題など、具体的な態度や行動を問われる問題に関しては、否定的もしくは消極的な回答がかなりの高率を占めており、これに関連して「ねたみ意識」や「寝た子を起こすな論」が地域、年齢、職業を問わず、かなりの高率を示しております。また、学校で同和教育を受けてきた若年層に、「同和問題・人権問題」の解決に向けての積極的な態度形成がなされていないものが少なからず見られ、これまでの同和教育の不十分さを示しています。また、「同和問題の解決のために何を行ったらよいか」との設問に対し、「自然になくなる」や「同和地区の人々が差別されないようにする」が、かなりの高率を示しており、近年の啓発事業が必ずしも、十分な効果をあげているとはいえない状況があります。

「ねたみ意識」というのは、いわば同和地区への過剰な利益誘導に対する批判のことで、「寝た子を起こすな論」は共産党の言う国民融合論のことである。どちらも全国的には普通に議論されているものである。特に同和地区への過剰な利益誘導に対する批判を押さえ込むことが腐敗を生んだ例は、大阪、京都、高知などで明らかになっている。それを挙げて「啓発事業が必ずしも、十分な効果をあげているとはいえない」としている辺りから、鳥取市で行われる啓発の内容と、その達成基準が非常に偏向していることが分かる。
そして、「同和地区の人である」という理由で約4割の人が受けていると言われる人権侵害の中で、最も深刻と思われる差別事象にについては次のように書かれている。

鳥取市においても近年、学校、企業、地域等で数多くの差別事象が発生しています。最近の特徴としては、学校現場での生徒間の差別発言、職場上のつきあいの中での差別発言、公衆の場での差別落書き等、特に、特定の同和地区と個人を名指しした、あからさまな差別事象が目立ちます。

しかし、私が何度も指摘している通り、どこが同和地区で、誰が同和地区関係者かを明らかにすることを行っているのは他でもない行政側である。現在でも「立場の自覚」という指導の下に同和地区児童生徒のカミングアウトが行われているという実態が鳥取市にはある。


ちなみに、私の計算が正しければ、平成14年当時の鳥取市の同和地区関係者人口比率は4.07%です。合併が行われた現在では、もうすこし高い値になっているかも知れません。
同和地区と地区外の格差を考えるとき、見逃してはいけないことがあります。それは、同和地区は均等に分布しているわけではなくて、市街地より郊外、さらには郡部に多いという傾向があることです。これは鳥取県の「今後の同和対策のあり方」という資料にも書かれています。
都市部と農村部では当然所得格差があり、それが他のデータにも影響してきます。それゆえに、同和地区内と地区外に平等な施策を行ったとしても、統計上の格差が全くなくなるということは絶対にあり得ません。格差があった場合、それが本当に部落差別によるものか見極める必要があります。鳥取では「部落民にとって不利益なことは全て差別」というような論理がまかり通るところがありますが、それは間違いです。

コメント

コメント(1)

  1. 涼風庵(女系天皇制の国会通過を阻止せよ!) on

    八鹿高校事件(最終回)‐事件が残したもの

    筆者の意見に加納も賛同します。同和教育は差別の再生産と利権化を促進するだけであり「百害あって一利なし」です。 人権擁護法案によりその利権を保持し、言論を弾圧しようとする悪辣な動きも、断固阻止するべきだと思います。