いかに生徒を説得するか

高校時代のメモとは別に、少し面白いエピソードを思い出したので、今回はちょっと雑談モードで書きます。
人間の心に入り込むのはそう簡単ではありません。高校になると、小学校や中学校のような同和教育は通用しなくなります。特に、私の通ってた高校は、やや不真面目な生徒が集まっているようなところで、私のクラスはさらにその掃き溜めだったため(同窓生の方には失礼…)なおさらです。わざと差別発言をして、全校集会だとクラスメートがはやしたてるので、授業は成り立たなくなります。
そこで、教師は工夫をこらします。例えば、ゲームをします。どんなゲームなのかメモを残していなかったので忘れてしまったのが残念ですが、ある島によいゴリラと悪いゴリラがいて、よいゴリラが悪いゴリラを巻き込んでいくというゲームだったと思います。それでも、やっぱり授業はめちゃくちゃでしたが。
高校の同和教育で配られたプリントに、阿部公房のこのような短編小説が載っていました。

昔は、ニワトリたちもまだ、自由だった。自由ではあったが、しかし原始的でもあった。たえずネコやイタチの危険におびえ、しばしばエサをさがしに遠征したりしなければならなかった。ある日そこに人間がやってきて、しっかりした金網つきの家をたててやろうと申し出た。むろんニワトリたちは本能的に警戒した。すると人間は笑って言った。見なさい、私にはネコのようなツメもなければ、イタチのようなキバもない。こんなに平和的な私を恐れるなど、まったく理屈にあわないことだ。そう言われてみると、たしかにそのとおりである。決心しかねて、迷っているあいだに、人間はどんどんニワトリ小屋をたててしまった。ドアにはカギがかかっていた。
いちいち人間の手をかりなくては、出入りも自由にはできないのだ。こんなところにはとても住めないとニワトリたちがいうのを聞いて、人間は笑って答えた。諸君が自由にあけられるようなドアなら、ネコにだって自由にあけられることだろう。なにも危険な外に、わざわざ出ていく必要もあるまい。エサのことなら私が毎日はこんできて、エサ箱をいつもいっぱいにしておいてあげることにしよう。
一羽のニワトリが首をかしげ、どうも話がうますぎる、人間はわれわれの卵を盗み、殺して肉屋に売るつもりではないだろうか? とんでもない、と人間は強い調子で答えた。私の誠意を信じてほしい。それよりも、そういう君こそ、ネコから金をもらったスパイではないのかね。
これはニワトリたちの頭には少々むずかしすぎる問題だった。スパイの疑いをうけたニワトリは、そうであることが立証できないように、そうでないこともまた立証できなかったので、とうとう仲間はずれにされてしまった。けっきょく、人間があれほどいうのだから、一応は受け入れてみよう、もし工合がわるければ話し合いで改めていけばよいという、良識派が勝ちをしめ、ニワトリたちは自らオリの中にはいっていったのである。
その後のことは、もうだれもが知っているとおりのことだ。

PTAで同和教育の世話役をやっていた、母親は、早速このプリントのネタをパクっていました。
おそらく、まわりに流されずに、同和教育で教えられたことを貫こうという意味でこの話をしたのだと思います。
そのすぐ後に、おそらく偶然だと思いますが、英語の授業の教材で出されたのが、なんとジョージ・オーウェルの「動物農場」です。ニワトリさんを一般庶民、ブタさんを解放同盟に置き換えると、笑いがこみ上げてきます。
他にも、23分間の奇跡のような、現代文学の世界をリアルで体験できるのが、鳥取の同和教育です。
2冊とも、昔受けた同和教育にしっくり行かなかった鳥取の方々にぜひともお勧めしたい名作です。

コメント

コメント(3)

  1. 戯言と音楽 on

    君が代を強制するな!人権侵害だ!

    とりあえずまあここ読んで。 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20051123&j=0022&k=200511235393北海道の定時制高校で卒業式で「信仰上の理由により君が代を歌えないので卒業式を欠席します」と自発的に申し出た生徒がいたそうな。学校側は予定通

  2. 県民A on

    にわとりの話は教科書に載ってたよ

  3. 鳥取ループ on

    そうなんですか!
    ちなみに、何の教科書なんでしょうか?