部落差別と民族差別

保護者向けの研修で配られた資料には、さらに続きがあり、「先住民族と差別」という文章が載っています。出展は、鳥取県部落解放研究所編「日本の聖と賎」となっています。
この文章は、部落の異民族紀元論から始まります。それに対する反論として「いや、部落の先祖も同じ日本人だ」と言うのでは弱く、日本人は複合民族ということを考慮しなければならない、ということから人種差別への問題と移ってゆきます。以下、一部を引用します。

昨年は、世界人権宣言四十五周年でしたが、この『世界人権宣言』のなかに「人間は皮膚の色によって差別されてはならない」ということが明記されていますが、これはなぜかと言いますと、皮膚の色というのは、紫外線が強いか弱いか、単にこれに関わるだけであります。紫外線が強いところでは皮膚の表皮にメラニン色素ができ、メラニン色素が多いほど色が黒いというだけのことです。人間の本体には何の変わりもありません。

確かに、同和地区の起源が異民族であるといいった説は誤りです。そして、皮膚の色の違いは人間を差別する理由にはなりません。実にまっとうな意見と言えます、しかし、段々とおかしくなってきます。

私は黒人の友人もいますが、同じ環境でスタートして同じ教育を受けたのならば、黒人の方がある意味では白人よりも優秀ではないかと思います。いずれにせよ、どの人種でも人間としての本質には根本的な違いはありません。

見ての通り、「黒人の方がある意味白人よりも優秀」と言ったすぐ後に「どの人種でも人間としての本質には根本的な違いはありません」と言っているので、支離滅裂です。
そして、さらにメラニン色素の話をした後、

皮膚の色の差というものはこういった原理に基づくものですが、そういうことすら科学的に知らない人は、黒人が劣っているなどとすぐ差別する。黒人が本来的に劣っているわけではありません。

と続きます。
はっきり言えば、これは誤りです。科学的に知っているかどうかと、黒人を劣っていると見ることは何の関係もありません。
鳥取のような片田舎では、黒人や白人を見かけること自体が珍しいです。たまに街角で黒人を見かけるとぎょっとしたり、学校でカナダ人の英語教師を指して「外人はあまり風呂はいらないから臭え」などと言ったりする輩がおりましたが、そういうのは黒人を見下すのとは全く別次元の問題です。よい意味でも、悪い意味でも、黒人と白人共に見慣れないよそ者として平等に見られるでしょう。
さらに、この文章ではエスキモー(イヌイット)、インディアン(ネイティブ・アメリカン)のような先住民族が被差別民族として挙げられています。そして、北海道の先住民族であるアイヌについても触れられています。
私は平成16年度鳥取県人権意識調査について、鳥取にアイヌに対する差別があると答えた人が11.7%もいると突っ込みました。
詳しくは、「人々の意識」にアイヌに対する差別や偏見があると答えたのが11.7%で、「社会のしくみ」にアイヌに対する差別や偏見があると答えたのが6.5%です。これは、自由記入ではなく、あらかじめ提示された項目に、複数○を付ける形式のものです(この項目に該当する人は被差別者、ということなので、そもそもこんな調査自体が差別的な気もしますが…)。
この調査をされた県庁の方には、研修会等への参加経験とクロス集計することを希望します。できれば、次回の調査では黒人やイヌイットやネイティブアメリカンも「被差別者」として項目に加えてください。どの民族は被差別者だと最初から決め付けたような研修がどのような結果を生むか、数字として現れてくると思います。


たぶん、これは桃山学院名誉教授の沖浦和光氏の講演録と思われます。
ネット上の話ですが、部落の起源が異民族だと思っている人は確かにちらほら見かけますね。どこからそういったことを聞くのか私には全く持って謎なのですが…。

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