加害者に対する啓発・指導とは何を意味するのか

鳥取県人権救済条例の特徴として、被害者の救済だけではなく、加害者に対して行われる措置というのがあります。条例の中で、そのことに関するのは以下の部分です。
第21条の2号

人権侵害を行い、若しくは行うおそれのある者又はこれを助長し、若しくは誘発する行為を行う者及びその関係者(以下「加害者等」という。)に対し、当該行為に関する説示、人権尊重の理念に関する啓発その他の指導をすること。

第24条の1項

委員会は、生命若しくは身体に危険を及ぼす行為、公然と繰り返される差別的言動、ひぼう若しくは中傷等の重大な人権侵害が現に行われ、又は行われたと認める場合において、当該人権侵害による被害を救済し、又は予防するため必要があると認めるときは、第21条に規定する措置を講ずるほか、次に掲げる措置を講ずるものとする。
(1) 加害者等に対し当該人権侵害をやめ、又はこれと同様の行為を将来行わないよう勧告すること。
(2) 加害者等に対し人権啓発に関する研修等への参加を勧奨すること。

この加害者等に対して行われる啓発、指導、研修は、「糾弾」ではないかということが条例が出来た当初から危惧されていました。それは、部落差別に関する問題に絡んで、啓発というよりは、単なる報復や吊るし上げに近い糾弾が行われてきたためです。一般のマスコミではほとんどタブーになっていますが、行過ぎた糾弾による自殺者も出ています過去の記事でも触れた通り、吊るし上げに近い糾弾は鳥取でも行われていました。糾弾を行っていたのは、部落解放同盟です。部落解放同盟は、鳥取県連を含め、この糾弾という行為を未だ否定していません。
鳥取で行われた糾弾に居合わせた複数の人物から話を聞いたところでは、共通して、ある人物の名前が挙がってきました。鳥取県人権尊重の社会づくり協議会委員の椋田昇一氏です。椋田氏は、2002年頃まで部落解放同盟鳥取県連の書記次長として、糾弾会では指導的立場であったと言います。
確かに、人権条例に啓発、指導といった内容を入れるように主張していたのは椋田氏です。例えば平成15年9月11日の人権救済制度についての会議録に、次の発言が書かれています。

(朴委員)被害者の救済ということばかりではなく、加害者への啓発、人権侵害が許されない罪悪であるかということを分からせることも大事なことであると思う。
(椋田委員)朴委員の意見に賛成である。人権侵害のものによってそれぞれ対応も異なるだろうが、単に物や形で解決したり、言葉で謝罪しただけでは駄目である。加害者に対する是正指導も権限を持ってやっていく必要があるのではないか。第二第三の侵害を起こさせないよう是正指導、啓発教育とそして救済という三位一体でやっていく必要がある。多くの人権侵害の場合、対処療法だけで終わっているがそれだけでは不十分な場合もある。
もう一点は、私間の人権侵害については、民間レベルの取り組みを最大限尊重するべきであるということ。こうゆう制度を作ることで民間レベルの取り組みを逆に押さえつけることになってはならない。加害者の駆け込み寺になるようなものにしてはならないということ。
もう一点は、公というか官というか、行政レベルの人権侵害については、知事が議会答弁で答えられていたようにオンブズパーソン的な制度がいいのではないか。官の中で起きた問題を官が設置する機関で本当に救済できるかということ。
どちらにしても、行政レベルでの取り組みと、民間レベルの取り組みと、そしてこことの連携、協働という視点もふまえて検討していく必要があると思う。

これは、「糾弾」という私的救済を念頭に入れた発言のように取れます。
なおウェブ上で収集済みの議事録の全文は以下をご覧下さい。
社会作り協議会議事録詰め合わせ.zip
実は、椋田氏には2回に渡って直接会う機会がありました。当然、人権条例や糾弾について率直な疑問をぶつけてみました。それについては、次回採り上げることとします。

コメント

コメント(1)

  1. なめ猫♪ on

    福岡県人権・同和対策局が部落解放同盟との交渉議事録を公開拒否

     8月22日付けで開示請求をしていた部落解放同盟福岡県連合会と福岡県当局の交渉のやりとりの記録について非開示の決定がありました。 5月にも請求したものの条例を盾に開示を拒否。大阪などの動きを見て再度開示を